壱 楠の葉末のささやきに 南の國は秋たけぬ
ふるき おぼしま
古城につどう若人の 夕べ寂しき欄干に
しじまあやしき池水の 深き憂をかこつかな
弐 涙にくるる宵々を 若き心はいためじと
なべて濁れる人の世に わびしく立ちし旅衣
わかれわかれておのがじし 遠き闇路をふみ迷ふ
は え たか あんじ
参 旅のおはりに光栄ありと 尊き暗示のほしくづは
塵の此の世を嘲りつ 行手をたどる若人は
友の情の湧くといふ 泉汲むまでは何かせむ
四 運命を荷ふ子羊も さめては如何に迷ふらん
まどい たかづ
いざくつろぎの團欒して 若き生命を高調せよ
君が情に比ぶれば 煙も薄し桜島
五 そは永からぬ三年かし さはれ床しき若人が
たま たま とことは
霊と霊との結びては 何時かは解けむ永久に
君な忘れそ楠蔭の 南の国の起き臥しを
第七高等学校造士館
大正五年 第十五周年記念全寮歌
楠の葉末
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