東市来蓬莱 

                        
 田崎酒造(株)  日置郡市来町大里696
Tel  0996−36−3000
      ゲットした日 : 平成16年5月16日
                     

東市来蓬莱  久しぶりに訪れた東市来町の焼酎屋田渕酒店は、相変わらず道中不安になりそうな山里深くにあり、林間道路が急激に開け山奥に似つかわしくない瀟洒な店が現れた時の安堵感は砂漠の中のオアシスにたどり着いたキャラバン隊に共通する物なのかも知れない。(^_^;)
  あいにくとたぶっちゃんは不在であったが、見目麗しき奥方と顔を赤らめながらの小一時間の会話に心の浄化を実感しつつ選んだ焼酎がこの「東市来蓬莱」である。

  銘柄名の蓬莱とは中国の神仙思想で説かれる想像上の仙境で、東方海上にあって、仙人が住み不老不死の地と信じられたものである。東市来町江口浜付近にはシラスのがけが海からの風雨で長い年月をかけて浸食され、複雑に入り組んだ江口蓬莱と呼ばれる奇観が連なり、新鹿児島百景に選ばれている。 

  ラベルには神仙幽玄の蓬莱島が水墨画風に描かれている。 またこの焼酎は東市来町の唐芋を使い、清酒と同じ黄麹で仕込み、東市来町酒販同好会がプロデュースし町内限定販売となっている。 アルコール度数は25度。一升瓶の他に4合瓶もある。

  生で飲んでみた。静かで穏やかな芳香である。口に含んでも生の荒々しさは感じられない。柔らかで絹のような滑らかさが重層しつつ味わいが深くなり、何のストレスもなくこのままゴイゴイ行きそうな危険酒である。 口当たりがまことにソフトで、今迄飲んだ芋焼酎の範疇を逸脱したような優しい味わいなのである。
  ロックにして冷やすと甘味がぐんと引き立ち、違った表情を垣間見せる。
  あらかじめ5:5程度に割り水したものを燗付けすると、淡泊なのに濃い、控えめなのに存在感があり、口当たりがよいのに深いと相反するような混沌とした味わいに卒倒しそうな程の至福を感じさせる。 

  「千夜の夢」に代表されるように田崎酒造の特徴である古酒のような凛とした上品さではなく、黄麹を使うことにより、我々が慣れ親しんでいる現在の芋焼酎を超越し、日本の酒の源流を彷彿させるかのようなに酒質そのものが柔らかく穏やかな上質さなのである。 さらに東市来の風土と人々の情熱が斯くも優しく秀逸な酒を生み出したと勝手に納得しているのである。
  たぶっちゃんご指導の如くお勧めの飲み方はやはりロック系統だろうが、研ぎ澄まされた上質の清酒を彷彿させるお湯割り系統の奥深い味わいも一飲の価値有り。

                   平成16年6月24日記載