蕃薯考(ばんしょこう) 

                        
 薩摩酒造(株)      枕崎市立神本町26
    Tel    0993−72−1231
      ゲットした日 : 平成15年6月8日
                     

蕃薯考  枕崎で水産仲買を生業としている同級生N原君は、目下家族を県都に移入させ単身居残り状態である。 さらにのべつ幕無く入港する漁船から荷降ろされる魚のセリに忙殺され年中無休状態なのである。 唯一漁が休みになる満月の夜だけが解放されて巷?に出没可能となるため、彼は自分のことを「おおかみ男」と揶揄する。
  このため前日指宿で行われた同窓会には出席できなかった彼を慰撫するため、有志7名程が帰路極遠回りをして枕崎漁港を訪れた。
  彼はエネルギッシュに勤労している最中だったが、迷惑な顔一つせず旧交を温め、さらにセリの現場も見学させて頂いた。 我々素人には何がどうなったのかさっぱり解らないうちにセリは終了していた。(・_・)
その後、我々は、彼がセリ落としたばかりのゴマ鯖の入った発泡スチロール製トロ箱を一人1パイずつ強奪するという暴挙に及んだのである。(^^ゞ N原君本当にありがとう!

  薩摩酒造の総本山枕崎市にどっぷり浸かっているN原君の一押し焼酎がこの「蕃薯考」であり、彼に勧められるがまま、枕崎の地場差産業センターで速攻でゲットした。

  銘柄名の蕃薯(ばんしょ)とは外国の芋すなわち唐芋のことである。 裏ラベルには「江戸期(文政六年)に書かれた古文書の造り方にならい、古来の麹菌と甘薯などをいちどきに甕に入れて造る『どんぶり仕込み』を忠実に復元したものです。濃醇でふくよかな味わいがあり当時は、先取りで華やかな味を特徴とする上品(じょうぼん)とやや個性を濃く残す下品(げぼん)に分けられれていました。『蕃薯考』はこの上品だけを撰び『江戸上品造り』として仕上げています。どうぞ醇美な恵みをじっくりとお楽しみ下さい。」と記載されている。 170年程前の古文書に記述された焼酎製造法を忠実に再現した極めて史料的価値の高い焼酎で、二次仕込み法が確立された現在では唯一のどんぶり仕込みの製品である。
  アルコール度数25度。 美装箱入り四合留め金式瓶だけの発売である。

  生で飲んでみた。なんとも名状し難い独特の芳香が立ち昇る。 口腔内を流動する液体は甘く爽快なのだが、薬草というかハーブのようなスパイシーな後味が残像としてずっと響き合っている。 今迄味わったことがないような極めて個性的な味わいなのである。
  ロックにすると生の個性は若干は残るが、飲み易く清冽さは増すようである。
  あらかじめ5:5程度に割り水したものを燗付けすると、華やいだまろやかな口当たりとやや辛口後味のバランスが絶妙となる。

  薩摩ではお湯割りは比較的最近の飲み方だと愚考しているが、江戸時代も果たして現代のように水で割ったものを燗付けしていたのだろうか? それとも他地域同様生のまま燗付けして飲んでいたのでは・・・。(-_-?) 飲酎に対する探求心は学生時代の学問に対するものを遙かに凌駕するのである。(^^ゞ
  生のまま黒ヂョカで燗付けしてみた。 芳醇な薫りが猪口からモウモウと溢れ出し、甘さとスパイシーテーストが渾然一体となった豊饒な濃醇に、上品を通り越して官能を覚えると表現したら言い過ぎだろうか。 お湯割り等で感じた薬草じみた味わいが全く気にならないのも不思議。

  今迄頑なに確信していた水で割って薄めると言う作業が、実は焼酎本来の醇美をスポイルし、安直に健康に留意しただけの如何にも貧弱な行為に思える程、深く含蓄のある味わいなのである。 江戸時代には現代にも増して豊かな飲酎生活があったことに思いを馳せ、益々焼酎の深淵なるを実感した次第である。 時には明日を忘れ焼酎に浸り、陶酔の極め漂流願望を烈しくかき立てる危険な逸品と言えよう。(^^ゞ

  
                   平成15年9月30日記載