2002年1月分

音楽雑記帳

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1月29日(火) 無心で聴くのは難しい

以前に知人からブラジル人のギター・デュオ、アサド兄弟(Sergio & Odair Assad)のことを教えてもらいました。

地元のCD屋さんには彼らの作品がないことが分かってからはなおさら気になっていました。

先日なんとはなしにクラシックの試聴コーナーに立ち寄ってみたらそのアサド兄弟がヴァイオリニストの古沢巌と共演したアルバム「ブラジルの風」があったのです。

もちろん即聴きました。

全曲の頭の1分弱くらいを次々と聴いてみたところどの曲も素晴らしく感じたので買ってしまいました。

ところが家へ帰って再びじっくり聴きなおしてみると残念なことに第一印象ほどの衝撃はありませんでした。

CD屋さんで試聴した時には、やっと彼らの演奏を聴くことができたという喜びの心が実際以上に感動を呼び起こしていたと思われます。

もちろん駄作というわけではありません。が、3人の才能を発揮しつくした結晶という段階まではいたっていないと思います。

時間と金の制約があったことがジャケットやライナーデザインの素人っぽさだけではなく音楽の面にも表れてしまったのか。

思い切ってライブ盤にした方が情熱が音に反映されたのでは、と勝手に考えてしまいました。

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1月23日(水) 時を忘れて

かつてこの国には、後にプログレと呼ばれるようになった範疇のバンドを一つ挙げなさい、と問われたら誰もが迷わずPINK FLOYDと答える時代がありました。

私が彼らの音楽に接したのは中学生の頃で、当時高校生だった姉が友達から借りてきたアルバム「原子心母」を聴かせてもらったのが最初でした。

初めて体験した独特な世界が新鮮でした。

鍵盤初心者だった私でも弾けそうに思えたオルガンのパートをピアノで耳コピーした記憶があります。

彼らは演奏の技量を威圧的に用いていませんでした。

プログレも好きな私なのに今まで彼らのアルバムはアナログ盤もCDも一度も買ったことはありません。

それでも友人の家でほとんどの作品は聴かせてもらっていたので親近感はあります。

例外として、その昔NHKの「ヤング・ミュージック・ショー」で放映されたマルチ・スクリーンの技法が当時としては画期的だったポンペイでのライブ映像にアルバム「狂気」の録音風景が追加されたLD、それと映画「ウォール」のビデオは今でも家にあります。

そんな私に打って付けのアルバム「ECHOES THE BEST OF PINK FLOYD」を手に入れました。

ベストと銘打つだけあってシド・バレット在籍時の曲からロジャー・ウォーターズ脱退後の曲まで収められたCD2枚組で、それぞれ年代順ではなく全体の構成を考慮した曲順でノンストップ・リミックスされています。

私は彼らの正確な歴史にうといお陰で全編自然体で聴くことができました。

彼らの作る音世界に浸りきれない人達にとっては、もったいぶりに聞こえてしまうのであろう大作も収録されています。

もっとも私のように彼らの曲を聴いた途端に集中し、聴くことに没頭してしまう人間にとっては、時間が経つのをしばし忘れさせてくれるという楽しみがあります。

サイケデリックの時代から活動していた彼らのことです。聴く者の時間認識を上手にあやつる方法論を確立した背景にはドラッグ体験も大いに影響を与えていたと思われます。

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1月15日(火) リマスター、ボーナス・トラック、紙ジャケット仕様

熱心なファンに同じ音楽CDを何度も買い替えさせる目的で用いられるいやらしい小出し商法を見出しにしました。

このうちボーナス・トラックに関しては、ボーナス・トラックと正確に表現して欲しいですね。

そんな商法に反感をおぼえながらもgodley & cremeの紙ジャケCD「L」を買ってしまいました。

彼らが10ccから分離独立してから2作目にあたるこのアルバムは約四半世紀前の1978年に発表されました。

1作目の「CONSEQUENCES」はアナログ盤3枚組という容量の大きさ及びそれに伴う高価格、さらにはその実験的内容のために当時は買う気になりませんでした。

それに対してこの「L」は発売直後に友達の家で聞かせてもらった時即座に買おうと決心したほど気に入りました。

そのアナログ盤は手元にあるもののレコードプレーヤーが使いづらい位置にあるためにCDも買ってしまったわけで、けっして紙ジャケに踊らされたわけではありません。(本当)

処分しないで残しておいたアナログ盤を収納している棚を調べてみたところ「L」の他に4作目以降の「ISMISM」、「BIRDS OF PREY」、それに「HISTORY MIX VOLUME 1」がありました。

3作目の「FREEZE FRAME」は早い段階でCD化されたものを手に入れたのでアナログ盤は処分してしまったようです。

私がアナログ盤ではもっていなかった1作目も今回「L」同様紙ジャケ仕様で発売されていました。
既にドイツ盤CDのLimited Edition(ちなみに2241/3000)でその作品を買っていた私としては複雑な心境です。

また彼らの映像作品「ワン・ワールド・ワン・ヴォイス」、「モンド・ビデオ」のLDと、分離前後の10ccのビデオ・クリップとともに彼らのそれも収録されている輸入ビデオもありましたっけ。

結局彼らの全作品をもっていることになるのかなぁ!?

どちらにしろ「ISMISM」と「BIRDS OF PREY」に関しては記憶があまり残っていません。

それら2枚を聴き直すためにもオーディオ・システムを刷新する際にはアナログ盤も常時聴けるセッティングにするぞ、と年頭にあたって意気込む私です。

「実験的」や「前衛」という言葉が似合うのに、「難解」にはならないところが音楽にしろ映像にしろ彼らの作品の際立った特徴です。

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1月8日(火) 生ギターでスイング

かなり以前のこのコーナーで紹介した映画「ギター弾きの恋」をレンタル・ビデオでやっと見ました。

例によって虚実を交錯させるウディ・アレンの演出により、作品を鑑賞した後にCD屋さんでエメット・レイのコーナーを探す人もいるのでは、という導入部です。

主演のショーン・ペンはかなりギターを練習したと思わせるものの時々演奏の音と手の動きがずれるご愛嬌もあります。

天才音楽家の伝記風の手法で恋物語が進展していくなかで演奏される楽曲も秀逸、そして素敵です。

歴史に残るジャズ・ミュージシャンの意外な奇行に関する逸話をご存知の方々にとっては笑える場面も多々あります。

やたらに大袈裟でマンネリ化陳腐化が著しいハリウッド映画から距離をおいているウディ・アレンの映画人としての良心が感じられました。

ハリウッド映画のようにあらかじめ鑑賞者を「馬鹿」と想定していないという点がです。

この作品の時代設定である1930年代におけるカー・チェイスも登場します。

その直後のアレンのナビゲーターとしてのコメントはハリウッド映画界に対する痛烈な皮肉ともとれると私は考えました。

音楽が好きで楽器を演奏してなおかつ恋心も失っていない、という三拍子そろった人には格別な作品となるでしょう。

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