1 はじめに
県立笠沙高等学校 数学科 堂薗 幸夫 今年度8月に長崎で行われた,日数教大会(兼九州大会)に参加してきました。鹿児島県からも発表者が8名必要との事で,その一人に私も選ばれてしまい,6月の県数教(枕崎大会)に引き続き,内容を吟味し,さらにパワーアップさせ(うそ)乗り込んで参りました。詳しい内容は,九州数学教育会情報第138号でありましたので,この報告は,大会記録と言うよりも,参加顛末記として読んでいただければ,更に3倍楽しめるように書きました。(格調ある部会報にこの文章が乗っていればの話ですが。)*12 ことの始まり
今から2年前,それは1本の電話から始まりました。電話の主は,当時県数教事務局を務められていた,私の高校時代の担任でもあるM先生からでした。「来年度は川辺地区で県数教大会だよね。」「はい。お久しぶりです」「発表しっくれんね。」「はあ。」「ほんならよろしく。頑張ってね。」「へ?」「あ,そうそう日数教は九州大会と兼ねて長崎だから,たぶんそっちにも出らんといかんくなると思うよ。」「・・・。」という会話でありました。(ように記憶している。)これが全ての始まりで,大変や役を引き受けてしまったと感づいたのは,もっと後の事でした。かくして私は,研究発表者とあいなってしまったのである。3 準備
新課程において,数学Bに複素数平面*2が数十年の沈黙を破って,華々しく再登場した。もちろん私は,それまで教えたことはない分野である。まして,高校時代習ってもいない。それゆえ,この分野に関しては,発展させた教材研究をしなければと考えていた(ということにしておこう)。「どげんすっかいねえ」*3と考えていたが,現在種子島高校の森永先生が研究されていた,フラクタル,特にマンデルブロー集合・ジュリア集合に関して以前から興味を持ち,それらに関することをちらっと見ていた私は,新課程で区切りもいいし,コンピュータプログラムを資料につけて(資料作成が楽になるから),自分の興味あるところをまとめる意味でも,このへんでやってみようと,ごく安易に決めてしまった。(こんなところが,いいかげんと呼ばれる。)4 県数教(枕崎)大会にて
まず,県数教大会を迎えるが,私のようにあまちゃんでない鋭い先生方は,「実践をともなっていない。どうせ(日数教で)やるなら生徒にフラクタル図形を見せて,その反応もまとめたら。」と,ごくあっさり欠陥発表の一番のキモの部分をを指摘して下さった。その後,授業でやたら複素数の回転・縮小・平行移動の計算をさせ,点をプロットさせたり,コンピュータを持ち込んで,図形を見せたりと,だいぶ改善したつもりでした。御指摘ありがとうございました。5 日数教(長崎)大会へ
(1)長崎への道のり
まず皆さん,長崎へは飛行機が一番いいですよ(と思う)。いや,私はJRで行ったのですが,鳥栖まで行ってぐるーっと回ってやっと長崎って感じでした。7時間以上乗っていました。後で聞いたのですが,飛行機はわずか30分の飛行時間。車で来てらっしゃった先生は,時間的には似たようなものでも,安い。まして,荷物も3泊分のおっきなバッグに,発表に使うノートパソコン,行き着くまでに疲れてしまいました。おまけにその日(三日間通してでしたが)は,女子高生言葉で言えば,「チョー暑い。」*4不幸中の幸いで,そういったことで,発表前の緊張を全く感じさせない移動でした。
(2)全体会
長崎総合体育館で行われた開会式です。どこまで乗っても100円という,お得な気分にさせる市電は,乗っている乗客の5分の4は数学教師(その上,体育館前でごっそり降りる)と言う,変な朝のラッシュをのりこえ,たどり着きました。鹿児島で言うアリーナ*5のようなところです。しかし,さすが全国区の大会です。受付はどこ?(入口のそこらへんは全部受付!)とうろちょろしていると,同期採用で(大学の同級生でもある)現在S高校のF先生とばったり。私は,「これで寂しくなくて済む。」と正直ほっとしました。その後,やはり同期採用のO高校のK先生とも会い,一緒に行動できました。会は,開会式,記念講演(長崎の国際化を育てたサン・パウロ学院:日本二十六聖人記念館館長結城了悟氏),アトラクション(諌早高校のクラシックギター・マンドリンクラブ*6の演奏と長崎くんち:長崎北高校生のコッコデショ(1tの御輿かつぎ)と龍踊り(じゃおどり))と順調に進み,午前中は終了しました。
(3)高校部会
長崎西高校が高校部会開場です。総合体育館から前もってホテル予約と同時にチケットを買っておいた有料送迎バスに揺られ(これもまたラッシュ),午後の部会の始まりです。全体会の受付でもらっておいた紙バッジをつけて(入場券になる),分科会の資料をめくってみると,すべては別ページにあると思いますので書きませんが,1.5日間の,全部でトータル18会場,発表本数は153本という,「体18個ないと見れへんやんか。」*7と思わず,大阪のつっこみを入れたくなるような規模です。F先生とK先生とは自分の興味あるところを見ると言うことにし,私は発表者控え室へと向かいました。ところが,そこは図書室であり,冷房完備のお茶サービス付きという,非常に興味をそそる環境で,しばしくつろがさせていただきました。
(4)私の研究発表私は第16分科会の基礎・自由研究のAにて発表をさせていただきました。20から25分間で発表,残り15から20分で質疑・助言というタイムテーブルです。4月末時点で大会要項用と総会特集号のための原稿を,ワープロで文字数,行数,余白のmmまで,厳格に指定されたものを送りましたが,それ以外に必要な資料を冊子にして,(私の場合はB4×13枚を200部)当日準備しました。200部の冊子に多くの参加者を予感し,さすがに緊張しましたが,実際の参加者は1教室に半分ぐらい,20数人だったでしょうか?ほっとしました。不思議と今度は欲が出て,「もっと来てよ」とデカイ態度になってしまいました。余った資料は持って帰らねばならないのか?と不安がよぎりましたが,通りすがりの(?)方が資料だけ取っていかれたようで,余りは出なかったようでした。発表の方は,時間だけがあっという間に過ぎ,何を喋ったのか,きっとわけの分からない発表だったことでしょう。アドバイスの中で,複素関数の微分の注意と,連続ながら微分不可能な関数を紹介していただき,参考になりました。
(5)宴会
接待に関して報道の多い中,あらかじめ断わっておきますが,もちろん自費で宴会です。S高校のF先生と指導助言者としていらしていた,鹿大の稲田先生と長崎名物中華街にて豪華な食事とちょっぴり(?)のお酒でした。お互いの高校の事や大学の状況など研究発表夜の部といった感じで,楽しい時間を過ごすことが出来ました。みなさん有難うございました。そして,ご迷惑をおかけいたしました。*8(?)
(6)興味ある研究部会
分科会での研究発表はもちろん参考になったのですが,なにせ153本は紹介しきれませんので他の資料に譲って,その他の研究部会を紹介します。まずは,「折り紙コーナー」と題した教室です。昨年の東京大会でオリガミクスと紹介され話題を呼んだものですが,その教室では幼稚園児・保護者・保母さん(?)と多くの人が,折り紙を楽しんでいました。たかが折り紙ではなく,いったいどうやって折ったのだろうというような,立体的な形ばかりでした。子供にはその中に含まれる,数理現象を理解はすることはできなくても,記憶の奥底に,遊びながら得られる楽しさ・面白さから立体図形の認識*9といったものを与えられるのではないだろうか,と感心して見ることが出来ました。次に,「数学のひろば」と題した教室です。教室と言っても,体育館の地下にある広い武道場のような場所が会場でした。ここは,高校の枠を超えた数学高校生クラブと言うべき展示会場です。各高校独自に研究発表をテーブルごとに行い,お互いに刺激し合うといった趣旨のようです。その内容は,黄金分割・記号の成立ち・モアレ模様・ロジックパズル・石鹸膜・知恵の輪・折り紙・コンピュータ・多面体模型など多岐にわたる,文化祭の研究発表のようなユニークなものでした。疑問を持った対象に高校の教材の範囲を超えようが,主体的に研究を進める,と言ったまさに「学ぶ」とはこういったことだ,と感じました。鹿児島でもできれば,こう言った環境を創ってみたいと,真剣に考えてしまいました。
6 まとめ
県数教・日数教と非常に面白い研究会に(偶然ながら)参加できたことは,私にとってためになることばかりでした。確かに準備のために,改めてレポートを合計30数枚書いたり,資料となる本を10数冊購入したり,旅費でも赤が出たり,「辛い仕打ち。。」と思うことがありましたが,今考えてみると,飽きっぽくてめんどくさがりの私にとって,一つの研究のきっかけを作ることが出来たように思います。またそれ以上に,全国の数学の先生方との交流や,興味ある研究を見ることは,授業や校務に忙しいと理由をつけて,自分自身怠けることになってしまわないようにするに十分でした。なんらかの機会に,生かせてゆけたらと思います。振り返ってみると,更なる努力をしてゆかねばと考えさせられる大会でした。
都合により,結局部会報に掲載される事は無く,(こんないいかげんな文章を書いて渡した,ワタシの責任だったんだろうか?)闇に葬られた形のレポートとなっていた。このWeb上にて,世界に先駆け,初公開される。
複素数平面については,なんと驚く事に,次回の教育課程の変更に伴い,無くなるそうな・・・なんだったんでしょう???
大学入試問題(ここ)などを参考にされたし。
What can I do? の意。鹿児島語である。
作者の認識のズレが如実に現れている表現である。イマドキこんな事を言う生徒はいない。
N渕やM任谷などが,好んで使う会場。鹿児島刑務所の跡地であり,会場前には大きな門だけが残されている。取り壊しの最後の日に山下洋輔がピアノ生演奏をした。 なんでも親戚が刑務所を設計したとか・・・・
高校でクラシックギタークラブを持ち,活動を続けているとは,なんともうらやましい限りである。こんな子らが,鹿児島大学へ進学し,(ここ)へ来て欲しいものである。一般的に,長崎県は天才,山下和仁を生んだ,ギター文化への理解のある土地である。
作者には,どこからとも無くどうやら関西系の血が流れているようである。関西に長年住み,関西人と化してしまった叔父を見ると,うらやましく思える。つい「ええなぁおっちゃん」と思ってしまう。 探偵ナイトスクープは必見である。
作者は,酒はニガテである。一人で晩酌など決してしない。しかし,大勢と飲む機会にはそれなりに飲んでしまう。
これに関しては逸話があるが,ここでは省略させていただく。(^_^;)
この時にはなかったが,キュービックスと言う立方体パズルがある。立体の認識は具体的な手に触れるものからやらねばならないと思い,わが子に自作してあげたが,結構面白がっていた。クラーセンというスイスの数学者が考案したものらしい。ネフ社から発売されている。