クローン病の治療方法

2.薬物療法
メソラジン(5−ASA)=ペンタサ錠(PENTASA)
クローン病の治療薬としては、世界中で最も汎用されている薬。
メソラジンの直径1mmほどの顆粒をエチルセルロースで皮膜した薬。
クローン病の基準薬。クローン病の緩解維持での治療には欠かせない薬である。小腸、大腸両方の病変に治療効果がある。潰瘍性大腸炎にも使われる。
経腸栄養剤との組み合わせで用いられる事が多い。
サラゾピリンと比較して、スルファピリジンを含まない分、副作用が少なく、女性の患者の妊娠時にも他の薬剤よりも安心。
※有効成分=メソラジンに含まれている5−アミノサリチル酸(5−ASA)
※腸管内に5−ASAが存在することで効果発現。
※副作用
皮膚症状(発疹やかゆみなど)
消化器症状(食欲不振、むかつき、吐き気、嘔吐など)
発熱 ・頭痛 ・腹痛 ・下痢  ほか

サラゾスルファピリジン=サラゾピリン錠(SALAZOPYRIN)
クローン病のほかに潰瘍性大腸炎の治療にも使用される薬剤。
メソラジンを大腸まで運ぶ、キャリアとしての役割をスルファピリジンに持たせて、メソラジンとスルファピリジンを結合させた化合物。
※主に大腸に病変がある時に使用される。
 大腸で腸内細菌により、メソラジンとスルファピリジンに分解される。
 有効成分はメソラジンでスルファピリジンは副作用を出現させる。
副作用=発疹、消化器症状、頭痛、溶血、無顆粒球細胞症、肝機能障害、男性の場合は、精子数減少及び精子運動低下他
サラゾスルファピリジンは元々染色物質のため、高い頻度で尿、精液がオレンジ色に着色します。
詳細については潰瘍性大腸炎の治療方法を参照。
副腎皮質ステロイド=プルドニゾロン(プレドニン)、ベタメタゾン(リンデロン)
強力な抗炎症効果あり。栄養療法と併用したり、腸管の炎症が強い場合に使用する。長期間使用には注意が必要。
※副作用=体重の増加、顔のむくみ、不眠、糖尿病の悪化、骨がもろくなる(骨粗鬆症)、感染症にかかりやすくなる他。・・・これらの副作用は長期間にわたる大量の服用によって起こる。
プレドニゾロン
・副腎皮質ホルモンの一種。
・体の炎症反応を抑えるために使用。
・即効的症状改善作用。
・炎症性腸疾患に対して使用される基本薬剤。
・再燃期から緩解状態に入ると減量を始め、徐々に減らしていき、最終的には中止する。のべ1000mg投与が限度。
免疫抑制剤(調整剤)=アザチオプリン(イムラン)、6−MP(ロイケリン)
急性期で炎症が重篤な場合で、
(1)ステロイドを使用して副作用が出る、またはプレドニゾロンや他の薬剤が無効なとき。(難治例)
(2)プレドニゾロンの減量や離脱が必要なとき。
(3)ろう孔が形成されたとき。
 ※副作用=骨髄抑制、骨髄抑制による顆粒球の減少他
抗生物質=メトロニダゾール(フラジール)、シプロキサン
メトロニダゾールは肛門部病変がある患者に使用。
鎮痛剤や整腸剤、止痢剤=ビオフェルミン、ロスポリア他
腹痛や頻回の下痢がある場合。
  ビオフェルミン=乳酸菌を配合してある整腸剤・下痢止めです。
  ロスポリア=腸の動きを抑え分泌物を減らす事で下痢をおさえる
     ※他にも粉薬など、様々な薬がある。
抗TNF-α抗体(レミケード)
(抗ヒトTNF(腫瘍壊死因子)−αモノクローナル抗体(インフリキシマブ))
炎症の中心物質であるTNF-αと結合して、その働きを抑えてしまうタンパク質(抗体)を注入して炎症をおさえる治療法です。

用法・用量

  1. 中程度から重度の活動期になる患者
     体重1kgあたり5mgを1回点滴静注する。(1回投与まで可能)
  2. 外ろうを有する患者(腸管や皮膚などにろう孔ができている患者)
     体重1kgあたり5mgを3回(初回、2週間後、6週間後)点滴静注する。
     ※投与時には1.2ミクロン以下のメンブランフィルターを用いたインラインフィルターを通して投与する。(3回投与まで可能)
※通常、投与すると速やかに症状が消失し、さらにその効果は約8週間前後持続します。
効果がない患者がいます。
※時間の経過と共に薬の有効性も低下してきます。
副作用としては
※強力に免疫機能も抑制してしまうので、通常は問題のない細菌などによる感染症が発生する可能性があります。
※再投与後に発疹、発熱、関節痛などの過敏症が起きる場合があります。


抗IL-6レセプター抗体「MRA」(インターロイキン6受容体拮抗剤)(開発中)
TNF−αと同様に炎症の中心物質であるIL-6の働きを抑制する薬です。
※その他、さまざまな新薬が研究中です。
他に漢方薬など補助的に使うこともあります。
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