佐多宗二商店は国道225号線頴娃町別府より少々知覧方面に入った高台に位置している。 マルダイ酒店さんの高級乗用車は所々道を間違えながら1時過ぎに辿り着いた。 芋剥きに飽いた?営業部長の矢部雷太さんが工場の前で一服していたが、なかなか堂に入った蔵子ぶりである。
最初に事務所に入ってアメリカのレストランに出したいという初溜取りの原酒2種を試飲させて頂きながら、シンガポールにおける街頭販売の苦労話などを聞く。
←工場全景。手前で一次仕込み及び蒸留、奥で芋処理及び二次仕込みが行われている。
工場の中でまず自動洗米蒸し器及び三角製麹棚を案内された。 米はタイ米の破砕米を使用している。今後契約国産米の使用も検討中とのことであった。米の仕込量なども教えて頂いたのだが、何しろ一塊のノンベーにとっては天文学的数字故と、初めて見た器械の感動で全て失念してしまった。(^_^;)
製麹棚には麹米は置かれていなかったが、明日からまた製麹に入るらしい。 製麹中は温度センサーにより適宜送風され適温を維持するらしいが、温度異常上昇の時は隣接している杜氏室にアラームが設置され、スクランブル発進するという。 ちなみに矢部さんも隣りに住み込んでいるらしいが、発進するかどうか定かでない。(^_^;)
↑自動洗米蒸し機。奥に製麹棚がある。
←一次仕込み。製麹棚の隣には一時仕込み用の甕とタンクが設置されており、米麹が盛んに発酵していた。
↑一次醪。ホースには冷却用に水が通っている。
次に芋剥きの現場を案内されたが、膨大な量の唐芋を杜氏さんとベテランのおばちゃん二人でてきぱきと裁いていた。 芋剥きはアクの多いヘタと痛んだ箇所及び窪んで砂が落ちていない所などを除去し、大きすぎる芋は半分に切る作業であるが、矢部さんの話では単純にもかかわらず非常に神経をすり減らす作業らしい。 二人は包丁を食い込ませて唐芋を拾い、両端を切り、コンテナに入れる・・・と実にリズミカルに作業していた。
しかしこの莫大な量の唐芋が(もう既に処理済みの唐芋が10ケース程蒸し器前に並んでいた)1回の仕込みで消えていくとは・・・
↑唐芋剥き。
←芋蒸し機
処理された唐芋は巨大な芋蒸し機に運ばれ、芋蒸し、冷却の後細かく破砕されて二次仕込みタンクに移される。
このプラントは巨大すぎカメラに入りきれなかった。
破砕された蒸し芋は一次醪と合わされて二次仕込み室にあるタンクに移される。
ここには巨大なタンクが3列計12個有ったが目下右2列のみ使っているとのことだった。
↓二次仕込み室
←発酵の盛んな醪。
ブツブツと音が聞こえ、近くに手をかざすとかなりの反応熱を感じる。
←発酵の収まった醪。
少しはブツブツと言ってはいるが、反応熱もあまりない。翌日に蒸留すると聞いた。
蒸留機→
蒸留機は2機有り、同時に蒸留すると聞いた。
蒸留最初の極少量の原酒は回路の清掃の役目も果たし、もう一度醪に返される。
う〜む、蒸留して原酒が垂れて来る所を見たかった。(^_^;)
←原酒貯蔵室
蒸留した原酒は巨大な貯蔵槽に蓄えられフーゼル油などを取り除いた後、タンクに移され貯蔵されることになる。
まあ、言ってみれば此処は焼酎のゆりかごみたいな場所でしょうね。 このホーロータンクは深さ2mmで25Lだそうだが、満タンになると幾らか聞いたが、またしても失念してしまった。 まあ人一人一生かかっても飲めない量でしょうね。(^_^;)
そして、待望の試飲が始まった。\(^o^)/
矢部さんがどれを飲みますか?と言いながら、
「晴耕雨読」、
「不二才」の原酒を汲み出してコップに注いでくれる。
どれもこれも市販品と異なるような味わいで、深くまろやかで極上に旨い!
貯蔵された原酒はブレンド及び和水され、ビン詰め行程に進む。此処では瓶詰め、ラベル貼り及び打栓が殆ど人力で行われるらしい。
大手メーカーの完全自動化したビン詰めラインを想像していたため、焼酎製造の最後の詰めは人手により愛情を込められ我々の元に送り出されるのだな・・・なんていたく感動した。
写真上部が和水タンク。中央部がビン詰め機。→
↓甕貯蔵蔵
最後に甕が地中に埋められている蔵を案内された。
左写真は暗くて恐縮だが、なかなか壮観であった。
その中の一つを試飲させて貰った。これは初溜を取った後の中垂れを貯蔵した物らしいが、何とも言えず美味なのである。確かに初溜の華やかさは少ないが、まろやかな味わいには思わず唸ってしまった。
もう製造中止になり此処でしか購入出来ない
「角玉」を2本買ったが、4〜5年程前に貯蔵したものらしく矢部さんもエイジングの長さは解らないらしい。一升瓶50本ぐらいが残っていたが、まだタンクには残っているらしくしばらくは幻の焼酎を楽しめそうである。
「角玉梅酒」をお土産に頂き、さらに杜氏さんから
「不二才」も頂き、満ち足りた晴れやかな気分で帰途についた。
志の高き旨き焼酎は志の高き人達によって丹誠に愛情込めて育まれ、世に送り出される。 実際に造りの現場を目の当たりにして、鹿児島芋焼酎に対する愛着をより一層深くしたと共に、真摯な作り手と我々ノンベーを結ぶ絆を強く実感した1日であった。 またこのような方々が焼酎造りに関わっていく限りは鹿児島焼酎の未来は明るいと痛感した。
表紙 焼酎の部屋 薩摩焼酎巡礼 宇都酒造