第2章.大正時代のさつまいもを求めて

大正時代の造りを再現した芋焼酎「大正の一滴」。ところが、芋焼酎造りで一番大事なものが、大正時代のものではないということに気付きました。それは、使っているさつまいもです。「大正の一滴」に使われているさつまいもは、芋焼酎造りで一番ポピュラーに使われている「コガネセンガン」なのですが、この芋は、主にでんぷん原料用として農業試験場で育成され、昭和41年に登録された芋です。

これに気付いた時から、「さつまいもまで、大正時代にこだわりたい」という思いが起こってきました。ところが、現在一般に存在するさつまいもというのは、ほとんどが昭和、平成に育成された品種の芋で、明治、大正のさつまいもは、今では栽培実績がほとんどないということが分かりました。どうすれば良いか分からない期間がしばらく続きました。

そんな中で、とある情報を仕入れました。鹿児島県の農業試験場では、昔からの品種の芋も、毎年、種芋用に栽培し、さつまいもの品種を絶やさないようにしているとのことです。それで、平成15年の夏、杜氏(安田)と私(笹山)とで、鹿児島県の農業試験場に足を伸ばしました。折しも、平成15年から平成16年というのは、“本格焼酎ブーム”のピーク時と言われた時期で、鹿児島・宮崎の芋焼酎がどんどん売上を伸ばしていた時期です。このような時期に、大正時代のさつまいもを求めるため、すぐに芽のでないような面倒なことに取り組んでいたなと思いますが、今になってみれば、本当に良かったと思います。

農業試験場では、とても親切に対応してくれました。いろいろと事情を話すと、「農林2号」「蔓無源氏」の2つの苗を10本ぐらいずつ頂きました。

少し余談になりますが、これは後から気付いたことなのですが、「農林2号」というのは、以前は九州を中心に、焼酎用やでんぷん用などで盛んに作られた芋だったのですが、この芋は昭和17年に命名されたもので、大正時代の芋ではなかったのです。結果的に、農林2号はうまく栽培できなかったため、国分酒造からは商品化されなかったのですが...

とにもかくにも、農業試験場で頂いた苗を持って、早速、霧島市福山町の農家・谷山秀時さんのところに足を運びました。谷山さんには以前から話しをしていましたので、この苗を早速、畑の隅っこに植えてもらいました。喜びと不安が入り交じる中での、「蔓無源氏」の植え付けがスタートしました。

 

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谷山さん()と杜氏・安田

 

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