炎症性腸疾患の診断と検査


患者が炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎あるいはクローン病)であると診断されるためにはいくつかの検査を乗り越えていかなくてはなりません、そして、病変の状態を的確に把握し、適切な治療方法を決定しておくためにも必要です。
※病状に変化がなくてもある程度定期的な内視鏡検査は必要です。
問診と触診
●医師は患者の病歴、症状が現れる前の様子、過去の健康状態、病気や手術の経験、いつごろどんな症状が現れてきたのか、症状がどのように変化してきたのかなどの問診を行い、大体の状態を把握します。
●次に触診を行ない、身体所見に関する情報を得ます。

血液検査((詳しい表へ)
1. 全身の炎症の程度をみるもの
(CRP、白血球数、血沈)
2. 全身の栄養状態をみるもの
(血清総タンパク質、血清アルブミン、総コレステロール、コリンエステラーゼ)
3. 貧血の程度をみるもの
(赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット、血清鉄)

糞便検査
1.便潜血検査
  (小腸や大腸病変からの目に見えない程度の出血を発見する検査。)
  (ヘモグロビンを免疫学的に検知。食べ物の影響は受けません。)
2.便の細菌培養検査
  (サルモネラ菌や病原性大腸炎などの細菌性腸炎との区別をします)

腹部単純X線撮影
 いわゆる腹部のレントゲン検査です。
 腸管のガスを観たり、お腹全体の中がどうなっているかをつかんでから、今後の検査や治療方針を決定することに役立ちます。

腹部超音波検査(エコー)
 苦痛がなくX線を使わないため、簡便で安全な検査です。
 まず、お腹に超音波がよく通るためにゼリーを塗り、そこに超音波を出す機械をあてて行います。15分ほどで終了します。
※わかる事(肝臓、胆嚢、腎臓、膀胱の状態、炎症が強い場合の腸管、胆石症

CT検査
 X線を使用して体の輪切り撮影を行う検査です。
 炎症性腸疾患の場合は、膿瘍やろう孔を合併した場合や、腸管穿孔が疑われる場合に行います。単純CT検査と、造影剤を注入して行う造影CT検査があります。

大腸X線検査(注腸造影)(バリウム注腸検査)
・肛門からカテーテルを使用し、造影剤(バリウムやガスクロフィン)を空気とともに大腸に注入し腸管をふくらませ、体位を変えて大腸の隅々まで造影剤を行き渡らせてから、X線で撮影。腸の形の影を見て、病変部の一夜範囲を把握します。
検査時間は15〜20分ほどで終了します。
※わかる事(粘膜の状態、潰瘍、狭窄ろう孔の有無、病変の範囲
※心身への直接的負担がやや高い検査です。

小腸X線検査(小腸造影)(バリウム注腸検査)
バリウムを口から飲むか、十二指腸までチューブを挿入して、バリウムを小腸に送りレントゲン写真を撮影
※わかること(小腸の粘膜の状態、潰瘍、狭窄ろう孔の有無、病変の範囲
※心身への直接的負担がやや高い検査です。

大腸内視鏡検査(ファイバースコープ)

肛門より大腸内視鏡を挿入し、観察しやすいように大腸内部に空気を送って大腸を膨らませながら、画面上で大腸の内側の粘膜を観察・撮影します。
※心身への直接的負担がやや高い検査です。
  

直腸から盲腸あるいは回腸の末端部まで観察できます。
大腸の粘膜の様子を細かく観察でき、炎症や潰瘍、びらん出血などの状態を高精度で知るここができます。
内視鏡の先端から鉗子を出し、病変粘膜の一部を切り取り生検(病理検査)を行います。=病理検査
(粘膜の微小片を採取し顕微鏡で観察)
検査時間は約30分。
確実な診断を下すことや活動期と緩解期の見定め、ガンのチェックにも役立ちます。
最近は早期の軽い狭窄のあるクローン病の患者に対して内視鏡的バルーン拡張治療が行われるようになってきました。穿孔が起こるなどの危険性は高いのですが、うまく拡張できると50%の患者で手術を避けることができるようです。

その他の新しい検査
上に示したほかにも、新しい小腸内視鏡検査が一部で開始されています。

ダブルバルーン内視鏡検査
 ふたつの風船をつけた内視鏡を使用し、風船を伸び縮みさせながら、尺取虫のように内視鏡を進ませていく検査です。小腸の奥までみえますが、患者にとっての負担やリスクが大きい検査です。最新の治療方法である、バルーン拡張治療(内視鏡的狭窄拡張術)も可能です。

カプセル内視鏡検査
 内視鏡が入った、小さなカプセルを飲み込んで行う検査です。
 患者にとっての負担は非常に軽い検査です。
 クローン病の患者で狭窄があったり、その危険があったりする人にはひっかかり、排出できなくなる可能性があるので行うことができません。そのため、造影検査をきちんと行ってから飲む必要があります。

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