クローン病とは?


 クローン病(Crohn's Disease)は1932年にニューヨークのマウントサイナイ病院のブリル・ビー・クローン医師(内科医)によって発見されました。

  おもに若い成人(十代、二十代に発症多し)に見られ、口の中から、肛門までの消化器官のいかなる場所にも炎症や潰瘍ができ(※1)、それに伴い、腹痛や下痢、血便が生じる病気です。

 地域的には先進国に多く、環境因子・・・特に食生活が大きく影響し、動物性タンパク室や脂肪を多く摂取できるような生活水準が高い地域の人ほど、クローン病にかかりやすいと考えられています。

 現在、はっきりした原因が解明されていないため、完全に治す方法がありません。

 下痢・腹痛・発熱等の症状が表れる急性期(=再燃・再発)と症状が落ち着いている緩解期を繰り返す慢性の進行性の病気で、一度発病すると、その後、病気とつき合い続けなければなりません。ただ、栄養療法と薬物治療(内科的治療)を組み合わせることで症状が落ち着いた状態にコントロールできる病気です。(手術しても数年後に再発するケースが多いため、手術は必要最小限しか行いません)

(※1)特に回腸下部から上行結腸までが最もたくさん症状が出る場所です。(小腸の下の部分から大腸に入ったところ)
 まず、小腸型、大腸型、小腸大腸型など大きく三つに分けられます。
(※まれに食道クローン病、胃クローン病、十二指腸クローン病、皮膚病変が生じます)
 クローン病に特徴的な症状としてあげられるのは、腹痛(80%)と下痢(60%)です。

更に発熱(50%)、下血(50%)、腹部腫瘤、吸収障害に伴う体重減少(45%)、全身のだるさ(60%)、貧血(40%)などがあります。
 その他に様々な合併症があります。
 それらの症状がよくなったり(緩解)、悪くなったりを繰り返すのも特徴です(再燃)。(まだ根治療法は開発されていません。)

※合併症=ろう孔狭窄膿瘍癒着穿孔、関節炎、その他に皮膚や瞳の異常、肛門部病変(痔ろう=高頻度に合併)、その他の腸管外合併症など
※括弧内%はおおよその数字


 さらに病変的な特徴としては

縦走潰瘍
 腸管の縦軸に沿ってみられる4〜5cm以上の長い潰瘍

敷石像
 潰瘍と潰瘍の間の粘膜が半球状に隆起し、まるで丸い石を敷き詰めたようにレントゲンで写る状態

狭窄
 腸管の内側が狭くなる状態

ろう孔
 腸管に孔が開き、他臓器へ孔や管でつながる状態。

腸管−腸管ろう
 腸管と腸管が孔でつながった状態

腸管−皮膚ろう
 腸管と皮膚が孔でつながった状態



IOIBDスコアとは
クローン病の活動度を評価するために使用される計算方法です。
次の各項目のスコアを1点とし、緩解期はこの点数のトータルが1または0点となります。
腹痛
1日6回以上の下痢または粘血便
肛門部病変
ろう孔
その他の合併症
腹部腫瘤
体重減少
38℃以上の発熱
腹部圧痛
10 血色素10g/dL以下
小腸型

小腸・大腸型

大腸型


クローン病の症状(詳細)
 実は今のところ、はっきりした原因がわかっていないのが現状です。
諸説はあります。
1.遺伝的な原因説(過程内発症の報告あり)
※最近の研究により、数個の遺伝子異常が報告され、遺伝子異常と環境要因が複雑にからみあって、発病するという説が考えられている。(欧米)
2.細菌およびウイルス感染発症説
3.食事でのアレルギー説(食事の何らかの成分が腸管に異常な反応を起こしているという説)
4.腸管の微小な血流障害説
5.免疫異常説(自己免疫疾患、食事に対する異常な抗原抗体反応説)
※腸内細菌が間接敵に病因に起因している可能性あり
確認された免疫異常
マクロファージの機能異常で、マクロファージの出す、サイトカインTNF-αが血液中や便中、腸液中で異常増加していることが分かっている。
日本では約23,000人(2004年)
欧米はその5倍
患者数急激に増加中!
発症年齢は男性20〜24才がピーク、女性は15〜19歳がピーク。
2:1で男性に多い。
現在のところ、日本では特定疾患(原因が不明な治療困難な病気{=つまり難病}で国が研究費を負担する病気)として治療費補助しています。
※他にも都会居住者にやや多い。
一般人と差はない。(クローン病診断後の死亡率は一般人と差はない。
大腸ガンの発症率は一般人よりわずかに高い。
クローン病によって死亡する可能性は低い。

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