クローン病の諸症状
(詳細)


クローン病の発症特徴(確定診断が遅れる理由)
@ 劇的で突然の発症の形をとらない。
いつの間にか発症する。
A 症状は緩やかに進む。
B 他の病気でも見られるような症状が発現他の病気と紛らわしい
C 原因が不明である。
クローン病は初発時、腹痛、下痢、体重減少、倦怠感、腹部腫瘤、下血、発熱、嘔気といった症状が現れる。
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クローン病の主症状
クローン病の症状は大きく分けて、腸病変によるものと、合併症に分けられる。
・腸病変によるもの
  腹痛、下痢、発熱、体重減少、貧血、腸閉塞症状、腹部腫瘤、ろう孔、腸管狭窄
・合併症
  痔ろう等肛門部病変、関節痛、尿路感染症、肝機能障害、結節症紅斑、アフタ性口内炎、発育障害、尿路結石ほか
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@ 腹痛
クローン病発症直後は一過性の腹痛がある。
病気進行後は腸管狭窄による腹痛がでる。
胆石による腹痛
 (胆汁の腸肝循環がうまくいかずに胆石ができやすい。)
尿路、腎臓結石による腹痛
 (脂肪の吸収低下から蓚酸の吸収量が増加し、下痢による体水分量減少(尿量低下)するために結石ができやすい。)
※胆石や尿路・腎臓結石は超音波検査(エコー)で確認する。
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A 下痢(一日の排便量が200g以上のもの)
形状=泥状〜水様性
大腸病変=下痢の回数が増加。
小腸病変=軟便程度のこともある。
クローン病進行時、夜間系経腸栄養時、抗生物質使用時=夜間に下痢
左側大腸に狭窄がある時=ゆるい便が頻繁に出る。
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B 体重減少
クローン病の発症による栄養障害により、体重減少が起こる。
消化吸収の低下
下痢、出血、たんぱく質漏出による栄養素の損失。
代謝の亢進、潰瘍なとの組織の修復のための消費エネルギーの増大。
サイトカイン、インターロイキン-6によりたんぱく質アルブミンの産生低下。
恐食症による節食障害
(腹痛や下痢を恐れて食べない状態。)
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C 発熱(微熱が出ることはよくある)
穿孔性病変
腸管に孔があいてしまう病変
(腸壁に孔が開いてしまう病変,腸管壁内膿瘍、腹腔内膿瘍)
肛門周囲膿瘍、胆石に伴う胆のう炎、尿路感染症により発熱
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D 肛門部病変(患者の20〜80%)
スキンタッグ(イボ痔)、裂肛(切れ痔)、痔ろう(肛門周囲膿瘍)
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E 腸管狭窄・腸閉塞症状
腸管病変の進行により腸管の内腔が狭くなり、腸管内容物が通りにくくなり、更に症状が進むと腸管の内腔がなくなり、腸の内容物が通らなくなって(腸閉塞)しまう。
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F 腹部腫溜
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G ろう孔
症状の進行にともない、腸管やその周辺部位の内臓や皮膚に導管ができたもの。
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H 腸管外合併症
胆道系合併症
頻度 多い 脂肪肝、胆石
少ない 原発性硬化性胆管炎、胆管周囲炎
肝アミロイドーシス、肉芽腫性肝炎、肝膿瘍
膵合併症
 膵炎、高アミラーゼ血症
筋骨格系合併症
 腸性関節炎(末梢関節炎)、強直性脊椎炎、仙腸関節炎
皮膚合併症
 結節性紅斑、壊疽性膿皮症、乾癬、棍棒状の爪、口腔内のアフタ口内炎、亜鉛欠乏性皮膚炎
眼合併症
 結膜炎、ブドウ膜炎、虹彩毛様体炎、ステロイドの副作用による眼真菌性眼内炎
泌尿器系合併症
合併頻度 腎結石、腎アミロイドーシス 栄養代謝の異常により発生
水腎症、膀胱炎 尿管周囲繊維化を伴う
腸管尿路ろう孔(腸管膀胱ろう) 腸管炎症に伴うもの
血液合併症
頻度 鉄欠乏製貧血 消化管から鉄が吸収されないことや、炎症による体内での鉄代謝の低下が原因
巨赤芽球性貧血 回腸からのビタミンB12の吸収不良。まれにサラゾピリンによる葉酸欠乏により発生
溶血性貧血、自己免疫溶血性貧血(サラゾピリンの副作用)
循環器合併症
低カリウム血症、低マグネシウム血症 @ ステロイド治療によるもの
A 経口摂取の低下、腸管からの吸収不良、腸管からの喪失の増加
不整脈の原因となり、注意が必要
微量元素や必須脂肪酸の欠乏
セレン欠乏症 セレン欠乏性心筋障害 深刻な事態
呼吸器合併症
 慢性気管支炎、気管支拡張症、細気管支炎、気管閉塞
 酸球浸潤性肺疾患(PIE)←サラゾピリンの副作用
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I 骨粗鬆症(合併度30%)
クローン病と潰瘍性大腸炎の患者は同年代の健常者と比較して、骨ミネラルや体カルシウムの量が少ない。
特に若年層重い病態が続く患者、腸管切除やステロイドの大量投与をした患者は骨ミネラルが特に低い
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ビタミンD欠乏、ステロイド投与、カルシウム吸収低下、低栄養状態、喫煙、大量飲酒
骨粗鬆症の危険因子
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J 成長障害
カロリー、たんぱく質、ビタミン、ミネラルの欠乏
成長障害および性成熟障害(生殖にかかわる臓器と機能の成長障害)
小児若年患者の割合・・・ クローン病(15〜40%)
潰瘍性大腸炎(5〜20%)
※成長ホルモン、甲状腺ホルモン、副腎皮質ホルモンの血中値は正常範囲
※小児・若年の患者に対する、定期的な身長・体重の計測ステロイド投与する場合の隔日投与などの工夫が必要。

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