新南島通信は、奄美に関する様々な書籍・文献等から印象的文章をピックアップして紹介します。
●bP 不思議な魅力を持つ島の風土記 椋鳩十 奄美風土記の前文より
●bQ リュウキュウイノシシに出会いました
●bR 島口(奄美の方言)入門その1−あなたもシマンチュに−
●bS 島口(奄美の方言)入門その2−トン普通語について−

bT 島口(奄美の方言)入門その3−【…ち】(トン普通語)
 
●【…ち】(トン普通語)
 トン普通語の代表的な言葉の一つ。話し言葉の最後に付けて、強調や確認、念押し、完了、断定、軽い感動などを表す。共通語の終助詞・間投助詞・助動詞の「・・ね」「・・さ」「・・だ」「・・よ」などに当たる。多くの言葉とくっついて無限の変化形がある。

 「彼らは学校へ行ったよ」と軽く言う場合は「あれなんか学校行ったち」「学校行ったちよ」となる。さらに学校へ行ったことを強調する場合は「学校行ったちば」と語尾に「・・ちば」が付く。

 また「彼らは」の主語部分を強調するときは「あれなんかちば、学校行ったちー」と主語部分に「・・ちば」が付く。

 相手の言葉に対して同意を表す「そうだ」のときは「ちゃー」と言う。「そうだそうだ」は「ちゃーちゃー」となる。「そうなんだ」「そうか、なるほど」と同意の度合いが強くなると「ちゃんがー」となる。

 さらに「そうなんだってよ」というように感動を相手に伝える気持ちが強くなると「ちゃっちばー」「ちゃっちよー」などとなる。

 疑問文でも「学校行ったのか?」と聞く場合は「学校行ったち?」と使うほか、「だれち」「どこち?」「いつち?」「だから、何ち?」と使う。

 「急に」「すぐさま」と言うときには「ちゃっかま」「あっただま」などと言う。すぐに逃げることは「ちゃ、びんぎー」と言う。

 先に言った言葉を打ち消す「なーんちゃって」を意味する「ちーんきゃ言って」などと使う人もいる。

 どんな文章でも最後に「…ちば」を付けると奄美トン普通語風になる。そして最後に「・・ち?」と語尾を上げるとトン普通語風疑問文になる。

「これはペンです」→「これはペンちば」。
「学校へ行ったんですか?」→「学校行ったち?」。

 何とも多機能の言葉である。 

ある日のシマンチュ同士の会話

シマ子:ゆうべ、どこ行っとったち?

シマ男:そんな昔のことば 覚えとるかっちょ!

シマ子:今晩はどうするっち?

シマ男:そんな先のことは 分からんちば!!

シマ子:何、カッコつけとるわけ?

シマ男:イャー(君)の瞳に乾杯!ちーんきゃ言って!

シマ子:だから何ち?ボットじゃない!!

(スナック カサブランカにて)

南海日日新聞社:奄美ゆむぐち辞典 出典
トン普通語処方箋−シマの標準語をすっきりさせる法−倉井 則雄著 参照

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