今月の一押し
['98.04]

「マブリの島」

出水沢 藍子 著
発行所 高城書房
1998年4月23日 初版第1刷発行
定価(本体1,800円+税)・四六版・252頁
マブリの島・表紙
[目次]
マブリの島
(1998新日本文学賞受賞作)
御月待ち
口結び
あやはぶら
グンセイフの夜
(1997南日本文学賞受賞作)

出水沢藍子の著書
「何もいらない(ヌシュマイラン)」歩き続けた画家 保忠蔵の足跡
高城書房 1996/5/18 四六版 264頁 価格(本体1,553円+税)
『小説春秋』同人
 「なるほど、ざ、小説、いやあ、物語ってほんとにいいもんですねえ、と久しぶりにつぶやいた。藍子さんおめでとう!今度出る本も楽しみにしています。」

 こぞ(去年)の「四月の一押し」は、竜郷町出身の出水沢藍子さんの南日本文学賞(1997年)『グンセイフの夜』(『小説春秋 1996・4号』)だった。
 約束どおりに今度(一冊めは『何もいらない−歩き続けた画家 保忠蔵の足跡』・高城書房刊・1996年)出たアイコさんの『マブリの島』は、意表をついての「新日本文学賞」(1998年)、全国版での登場となりょうたっとぉ。
 「もしかしたら今世紀中に鹿児島県では初の、沖縄県では四人目の芥川賞を、奄美出身者が受賞!なんてニュ−スが流れないとも限らない。」と去年書いたけれども、鹿児島ラガ、ヨゥリヨゥリックヮキョゥタットォ・・ユエヌシタクバ…・・・。

 表題の「マブリの島」は、骨と波、父の改葬をめぐるものがたり。

 「御月(うづき)待ち」は、水と月、少年と女教師のロマン。

 「口結び」は、川から海へ、少年と叔母の自立への旅たち。

 「あやはぶら」は、指はノノ(世界)、紬の織姫と織元の長男のアヤ、そしてオカミサンの確執。

 「グンセイフの夜」は、ポニ−ティ−ルと少女と夫、アメリカ兵をオッカケていった叔母の旅の真実。

 五題とも、奄美が舞台。テ−マもアマミ。でも著者は、奄美という小宇宙の極みを執拗に深く掘り続けることで、大宇宙の普遍的なイズミのサワにたどりついてしまったのかもしれない。えもいわれぬ至福の真水のアジを・・。
 だからこそ、どの作品にも、シマの潮騒と風と杜に抱かれてふわふわとまどろむアイコさんの影(主体)が、マブリの島に色濃く漂っているのだ。

 珠玉の短編集、ありがっさぁまりょうたぁ!
 シマのありようにもとぉとぉがなし!!
 MUST READ EVRY ONE!!!

(本処あまみ庵代表:森本眞一郎)

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