第6章.理想的な電子カルテの条件とは

私たちは理想的な電子カルテの条件は,以下のようなものではないかと考えています.

1)患者さんと医師が互いの権利を認め,情報を共有できる.
 ・つまり患者さんも自分情報を閲覧できる.

2)データに対する適切なアクセス権の管理手段がある.
 ・複数の医療機関でも安全にデータを共有できる
 ・患者さんが受診した場合,医療従事者は臨機応変にアクセス権を獲得できる.
 ・患者さんが,医用データ単位にプライバシーの保護を実現できる.
 ・急患にも適切に対応できる.

3)患者さんの希望に応じて,一患者一カルテを実現できる.
 ・もちろん,希望するならカルテを分けることもできる.

4)患者さんの希望に応じて,生涯データを破棄せずに保管できる.

5)電子カルテの利用に際して,医療機関のシステム経費が圧縮できる.
 ・医療機関と患者さんの間で,受ける利益に応じてコストを分担する手段がある.

6)医学や医療の進歩に寄与できる.
 ・患者は医学の進歩に寄与するために自己の医用データを提供することに同意できる.


 上記のような機能を実現するために私たちが考えた方法の基本となるアイデアの一部を説明します.

 この方法では,現在利用されている”ネットワークで連携される環境で,利用者が,IDとログイン用認証手段を用いてログインし本人であることを確認するネットワークログインシステム”を利用し.この環境に構築される電子カルテを次のように設計します.
  1. まず電子カルテを構成する医療情報を管理したい大きさのデータの塊に分割し,これら一つ一つに患者さんと例えば医師のアクセス権を別々に記録できるようにします.
  2. 患者さんには更に自分で変更できる診察キーを発行し,患者さんは診察を受ける時,医師にこれを提示します.
  3. 例えば医師Aがこの診察キーを利用して閲覧,記載したデータにはアクセス権が記録されるようにしておけば,診察時にその医師Aが新たに記載,閲覧したデータには,その医師Aのアクセス権が付きます.この結果,患者さんが医療施設を離れても医師Aは診察に使用したカルテ内容を閲覧することが可能になります.
  4. 一方患者さんに対しては,その患者さんのデータにのみ,その患者さんのアクセス権が付くようにしておけば,患者さんはネットワークで自分のカルテ内容を確認できるようになります.
  5. また,患者さんは,適宜診察キーを変更できますから,患者さんが診察キーを変更して新たな医師Bを受診すれば,新たな医師Bはそれまで蓄積されたデータを含めて診察時に必要なデータにアクセス権を獲得し,閲覧できます
  6. この時,前医師Aは患者さんが診察キーを変更した後に発生したデータにはアクセス権を獲得できません.しかし,患者さんが医師Aを受診した時にアクセス権を付けておいたカルテの内容にアクセスできることは言うまでもありません.
  7. この後,改めて患者さんが医師Aを受診した場合,医師Aは変更後の診察キーを提示されますから,医師Bが作成したデータにもアクセス権を獲得できるようになります.
 以上はシステムの基本骨格の概略です.

 実際に前述1)から6)までの機能を全て満足するためには,もう少し複雑になります.

 さらに詳細を知りたい方は,特許庁の特許電子図書館から【公開番号】特許公開2004−102863,または,【発明の名称】医用データ管理システム,で検索できます.
 2007年10月12日に特許登録されました。(日本国特許 第4024116号)

 公開されている手段を全て用いると,次のようなことが可能になります.
  1. あなた自身が病院を受診した後,あなたがいつでもパソコンでカルテ及び検査結果を閲覧でき,自分でもコメントを記入できる.

  2. もし持病があり,転勤して新しい病院にかかることになっても,この電子カルテには,以前の病院での情報が蓄積されており,次の医師に提供できる.

  3. 脳ドックを受け,そのときの写真を電子カルテに記録しておけば,数年後に他の病院で検査した時,医師に昔の写真と比べてもらうことができる.(小さな変化を確認できる可能性が高まる.)

  4. 個人が生涯カルテとしてデータを保持できるので,例えば事故の後遺症等で裁判になった時,この電子カルテでは事故当時からの記録が残されることになり,重要な証拠となる.(従来のカルテは,一定期間が過ぎれば破棄される恐れもあった.)

  5. あなたの家族(高齢の親,単身赴任の配偶者,大学生の一人暮らし等)が離れた所に住んでいても,その家族が病院を受診した際のカルテ内容や,医師の説明を,あなたがインターネットを利用して確認できる.また,家族が次回受診する時のために,あなたが医師に伝えたいコメントを書き込める.

  6. あなたの家族に持病や薬のアレルギーがあっても,詳細な情報が電子カルテに保管されているので,万一旅先で体調を崩しても,当地の医療機関で詳しい記録を医師に見て貰うことができる.

  7. ある病院で手術を勧められた場合,紹介状無しで別な病院を受診しても,電子カルテに保存していた前医での検査結果を見てもらうことができるので,診断や治療方針についてのセカンドオピニオン(他医の考えや助言)を求めることができる.


 このような電子カルテシステムの実現に興味がある、もしくは協力して下さる個人・団体・企業の方の連絡をお待ちしています。
また、トップページのアンケートに答えていただけると助かります。

 私たちへメールするには,ここをクリック。


Home←前へ次へ→
 
2003 Hirofumi Hirano, Fuminori Muranaga All rights reserved.