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KCBM in SPA直入 '04

※文中の()内の数字は、昭文社刊ツーリングマップル(2000-2001年度版)のページ/エリア番号です。

2004年4月18日

今回はクルマで

ホンダフィット

「じゃ、気を付けてね〜。」

時刻は朝の6時。鹿児島県北部の海岸線ぞいを走るR3から少し東に入った出水市の市街地でFitを路肩に寄せ、家族と友人たちを降ろした。いつもは混み合う狭いアーケード街だが、さすがに日曜のこの時間では閑散としている。小雨のそぼ降るなか、窓越しに幾つか言葉をかわし、再び国道へ向かってFitを走らせる。急にがらんとなった車内が、いつもより妙に広く感じられた。

(九州:P63/A-4)

今日は2輪メーカーのカワサキが開催するユーザー参加イベント「KCBM」が大分県にあるSPA直入サーキットで行われるのだ。いつもは少々無理をしてでもバイクで出かけて行くのだが(バイクのイベントに4輪で乗りつけるなんて、海パンをはいて温泉に入るようなものだ!)、同じ日曜日に家族と友人を隣町まで送らなければならない用事があったので、仕方なくクルマ(ホンダFit)を使っての遠出となった。さいわい家族らの目的地も家からの方向は同じだったし、時間だけこちらの都合で早朝に合わせて貰った。ついでに普段のバイクではまず持たない弁当やお茶まで用意してある。

これからイベント開催地の「SPA直入」までは片道で約250キロほど。普段使っているBandit250ならこの程度は日帰りコースの部類−−−距離感に馴れてしまえば数字で見るほど大変ではない−−−だが、いつも市街地でしか乗らないクルマでの長距離運転はあまり好きじゃない。と言って逆方向に片道60キロはある自宅までふたたび戻り、Bandit250に乗り換えるのも何だか時間がもったいない。というわけで今回はFitによる日帰りツーリングである。

R3を北上

今日もいつもと同じ下道コース。R3を熊本県の八代市まで北上し、少し先の宮原からR443で東陽村・泉村方向に転進するパターン。阿蘇行きの際にいつも使う通勤路と言ってもいい道で、休憩場所もだいたい決めてあるので気楽に走れそうだ。その前にまずガソリン給油。県道374号を少し西方向に戻り、R3に出た所にある日石でレギュラーを満タンに。ここは北薩でほぼ唯一の24時間営業をやっているGSで、燃費のよくないBandit250で夜遅くに帰ってくる日など、ここのGSの灯りがとても頼もしく思えるのだ。

(九州:P62/F-4、R3の駒井交差点あたり)

日曜とはいえ、そろそろレジャーに出かけるクルマが出始める頃。いつも混み合うのは決まって水俣の市街地と湯乃浦温泉あたり。これとてクルマの台数が増えると言うより単に信号機の数が多いだけのような気がする。本格的に詰まり出すのは大都市・八代市の手前からだが、これも午前7時半頃までにクリアしておけば大過ないレベル。あとは混雑するR3を避け、宮原から山間部を走るR443へバトンタッチ。


R3からR443への交差点

(九州:P52/A-2)

R443への交差点は交通量が多い割には狭くて右折しにくく、たぶん接触事故も多いのだろう、クルマの運転席からでは気付きにくいが、バイクの視点から見ると路肩にはいつも粉状のガラスやウインカー破片が吹き溜まっているのだ。しかしようやく拡幅工事が始まったらしく、道路沿いの店舗が奥に引っ込んだり、部分的に歩道が柵木で囲われている。そういえばこの春に九州新幹線が開通して、駅のある地元では観光客を意識してか、大した見どころとも思えないような名所にやたらと看板が立ったりパンフレットを置いたりしていたが、この拡幅工事もあるいは新八代駅とのカラミで、周辺の交通の便をよくする一環なのだろうか。まぁ通りやすい道になるのは結構な事だが、出来ればもっと早く手を付けて欲しかったものだ。

運転中の作者

さて、あとは山間ののんびりとした道をひたすら走り、阿蘇方面へ向かう。順調にいけば午前9時には熊本空港のアンダーパストンネルをくぐる事が出来るだろう。東陽村にあるいつもの角店「セブン」で缶コーヒー休憩し、ぐっと腰を伸ばした。

(九州:P52/B-2、種山小学校手前)

ところで作者は一昨年の暮れに普通2種免許を取得した。といっても別にタクシーの運転手になろうと思ったわけではなく、知り合いの勤めている教習所で2種免許の認定を取るのに一定数の合格者を出す必要があり、時間があるならやってみないかと誘われたのだ。費用負担は5万で合格出来たら半分は返金される。認定校取得のための条件は10人連続で試験場での実技試験を合格出来る事(つまり大型2輪免許の解禁時と同じ)で、途中1人でも不合格者が出ればまた最初からやり直しという厳しいものだ。

実は少子化の影響で、自動車学校の間では高校新卒予定者の獲得競争が日を追って激化している。みなさんの所でも、かなり遠方にある筈の自動車学校の送迎バスが町中を走り回っているのを目にされた事があるだろう。今後さらに少子化が進めば入校者が激減するのは目に見えており、より実務的な普通2種や人気の高い大型2輪の認定取得には学校の生き残りがかかっているとさえ言える。だから教習所側も必死で受験者を鍛え、送り込むのだ。

ちなみに作者は通算8人目の受験だったが、「もし仮に落ちても、気にしないでくださいね・・」と優しい教官や校長さんの声に励まされ、プレッシャーはあったもののどうにか合格。その後試験場からの帰路、担当教官にそうっと聞いてみた。

「もし今日私が落ちていたら、どうだったでしょうね?」

「まあ、タダじゃ済まなかったろうね。学校にとっては8人分の時間と費用で大損害だもの、2人とも校長にブン殴られたかもな。」

その後の9人目、10人目も無事合格したらしく(10人目のプレッシャーたるや想像もつかない!)、今では認定校として無事看板を上げている。かくして作者はさして使い道もない2種免許を手にしたわけだが、この過程においては公道でクルマを動かす事について学ぶ事もすごく多く、それなりに有意義だったと思う。何しろ基本の法規運転から何から、右折左折の確認も癖がつくまでミッチリやらされたので1年以上たった今でも抜けない。むしろ周囲のドライバーの動きを見るにつけ、だらしない運転をしている様が目につくようになった。少なくとも教習所に通った事のある免許所持者なら同じような法規運転を教え込まれてきた筈なのだが、教官いわく「公道の垢」に染まってしまい、かつては出来ていた筈の簡単な安全確認作業をサボったがために、事故の原因を作ってしまう事も多いという。

ここを読んでいるドライバーの人も、たまには教習所時代の事を思い出し、教則本を引っぱり出して眺めてみてほしい(ここ何年かで法規がコロコロ変わっているのには要注意)。初めて路上教習に出た日の事を思い出してみるのもいい。作者など緊張のあまり国道の制限速度50キロが怖くてどうしても出せず、助手席の教官にガンガン怒鳴られたものだ・・。

とはいえ法規運転を厳密にやるには想像以上の集中力を必要とするので、作者でも正直10キロくらいが限度。まあ退屈しのぎや眠気覚ましには丁度いい。センターや路肩のラインを踏まずに走るだけでも相当気を遣うはずだ。路側帯とは歩行者のためのスペース、つまり歩道だから、試験中ちょっとでも踏めば脱輪扱いで20点減点。普通2種では通常100点満点で80点以上が合格ラインだから、一回やらかせばもう後がない大失態なんである・・。


阿蘇到着

運転中の作者

対向車もほとんどない山間のR443をひた走り、午前9時半頃に熊本空港のトンネルに到達出来た。時刻は午前9時すぎ、ようやく阿蘇の入り口に到着。

(九州:P39/E-6)

ここから熊本を横断しているR57を東に進み、阿蘇の向こう側に出る。さすがにこの時間帯のR57は混み合っており、なかなか距離が伸びない。出発当初は時間に余裕があるつもりだったが、KCBMの開場は午前10時、一応の待ち合わせ場所としてある道の駅竹田(大分県竹田市)まで行っていたのでは少々時間が足りなくなってきた。そこで県道11号の通称やまなみハイウェイから久住方面に向かい、直接会場に入る事にする。山上側に濃霧でも出ていない限り、こちらを通った方が多少は早く着けるのだ。

やまなみハイウェイに入ってからも空はどんよりと鉛色で、間近に見えだした久住連山も重く地面にへばりついている。今日はクルマだからどれだけの大雨でも濡れる心配がないとは言え、やはり気持ちのいいものではない。後方からFitを大きく右にまたいで追い越していくビッグバイクの列に、やはりバイクで来るべきだったかなぁと今さらながらに思ってしまった。