第23話の5 どうして「社会科」を学ぶのか 1
〜 ワタシハダレ? ココハドコ? 〜



「どうして社会科を学ぶのか」



そんな疑問の前に,3問のナゾナゾをプレゼントする。

「アナタはいったい誰なのか」
「アナタはいったいドコからやってきたのか」
「アナタはこれからドコへいくのか」




実は3問のナゾナゾの方が難しい問題なのである。

「何言ってんだい。オイラは車寅二郎で東京は浅草の生まれよ。」
「これから旅に出るところさ。止めてくれるなカワイイ妹よ。」


この答は正しい。

人には名前があるから,他人と区別ができる。

では,もしも名前が無かったら・・・
世界は「ワタシ」と「それ以外の人」となってしまう。

そこで再び,「アナタは誰」と聞かれたら・・・
「ワタシは私」と答えるしかない。

隣の人も「ワタシは私」と答え
そのまた隣の人も同じ答え方をするのである。

「えっ,お前もワタシか?」
「すると,ワタシはいったい誰なんだ!」
ということにもなりかねないのである。

ワケが分からない世界である。

哲学の世界である。



また
「アナタはいったいドコからやってきたのか」
と聞かれたら・・・

「お母さんのお腹の中から」
と答えるかもしれない。

「でも,その前は?」と聞かれたら・・・


御存知のように,人間の生命は母親の卵子と父親の精子によって発生する。

受精前の卵子と精子が「ワタシ」ならば,
ワタシが母の体内と父の体内に同時に2人いることになる。


それから更に20年ほど時間をさかのぼれば,
つまり,あなたの父と母が生まれる前には
ワタシは母の母親と父親,父の母親と父親の
同時に4人の体内に存在することになる。


まったくワケが分からなくなる。



さらに「アナタはこれからドコへいくのか」

この質問も大変である。

わかりやすく言えば
死んだらドコへ行くのか・・・ということである。

「あの世」という答えもアリだろう。
「天国・地獄」というのもある。

正解かどうかは別として

もしそれが正解だったとすれば
「あの世」や「天国・地獄」の人口は無限に増え続けることになる。

生き物は人間だけではないのだから
牛や馬や魚や鳥や昆虫,その他諸々の命が死んだら
「あの世」に送り込まれる。

地球誕生から46億年,その間,地球上で生活し死んだ命が
全て「あの世」に送り込まれているとしたら
それは,もう天文学的な数字である。

さぞ,人口密度・・いや生命密度が高く,窮屈な世界であろう。

ひょっとして,「あの世」は絶滅の危機に瀕しているかもしれない。
あの世が絶滅したら,いったいその先,どうなるんだろう。

ああ,ホントにワケが分からない・・・
と,なるのである。



さて,ここまでが前フリである。

本題に入ろう。

「どうして社会科を学ぶのか」である。



御存知のとおり,中学の社会科は「地理」と「歴史」と「公民」に別れる。

正確に言うと「別れる」は間違いである。

「地理と歴史と公民が合体して社会科をつくっている」のである。


その目的は何か・・・

「アナタの世界」の今の状況を知るためである。
「アナタの世界」の未来をより良くするためである。



何? ワケがワカラナイ・・・?

では,もう少し,説明しよう。

いつものことで突然だが

今,アナタはこの世に生まれ,気がついたら砂漠に立っていた・・・
ということにしよう。

さて,まず,何を考えるか・・・

そう,「ワタシはダレ? ここはドコ?」
である。

「ドウシテ ワタシハ ココニイルノ??」
でもある。

自分の世界は,どんなところで・・・(地理的考え方)
どうして私はここにいるの? いったい何があったの・・・(歴史的考え方)
この世界の仕組みは,どうなっているの・・・(公民的考え方)

これらが,だいたい分かると
「どうすれば生きていけるのか」
「自分は何をしたらよいのか」


少しずつ見えてくるのである。

世の中の様子や歴史や仕組みを知らずに

人間は生きていくことはできないのである。

(人間以外の植物や動物ならばできるのである)
(本能に任せ,行動することで,死ぬまで生き続けることができる)





ずいぶん気の遠くなるような話で申し訳ないが

アナタ達の世代が世の中のリーダーとなる時代
を想像して欲しい。


具体的には40年後〜60年後くらいである。

そのころ世の中を動かしているのはアナタ達である。

アナタたちの先輩は,すでに「あの世」の人である。

もちろん「まくべん」も「あの世」の人になっているハズ。


アナタ達の後輩は,アナタ達が育てた宇宙船地球号の乗組員である。
そのころの宇宙船地球号の操縦はアナタ達がしなければならないのである。

正しい操縦ができるのか・・・間違った判断をしないのか。
パニックになったり逃げ出したりしないのか・・・

責任は重大である。

「操縦は誰かがやってくれるだろう」・・・そうは問屋が卸さない。

操縦は,その時代を生きるアナタ達全員でやるのだ。

でなければ有能な独裁者に操縦をまかせ
アナタ達は無条件で独裁者に従う・・・という選択が待っている。
しかし,「歴史」を見る限り
独裁者により支配は,あまり長続きしないし
とても「住みよい」世の中でなかったことが分かる。


誰かをアテにしてはイケナイのである。

なにしろ,現在のリーダーたちは
みんな「あの世」の人たちなのである。



なんだか,大げさな話になってきたが
別に地球規模で考えなくてもよいのである。

家庭や地域,会社といった小さな集団の中でも
十分に責任を負わねばならなくなってくるのだ。

アナタが,もしも「ロクデナシ」だったら,正しい操縦はできない。

アナタの後輩や子供達は
「ロクデナシ」の先輩や親に育てられたのだから
多分・・・
「スーパーロクデナシ」である。


そんな世代がリーダーとなったら
家庭や地域,会社,自治体,国家
そして地球は自然と崩壊してしまうのである。

怖ろしいことである。

そうならないために
「アナタの世界」の今の状況を知ること
「アナタの世界」の未来をより良くする方法

を学ばなければならないのである。



では,次話で
「アナタの世界」の今の状況を知ること
「アナタの世界」の未来をより良くする方法
について詳しく説明していくのである。