第74手 「呟く2」 
〜 ある公認会計士の仕事ぶりから
 〜



突然のお話で申し訳ないが
(いつものことである。御容赦,御容赦。)
ある
公認会計士さんとお仕事をしたことがある。

公認会計士というのは
企業などの会計に関する書類の
監査や証明をする職業である。

帳簿の神様と言っても良いくらい
数字や計算に精通している職業である。



ある日
その公認会計士の所に
計算が合わない会計簿が持ち込まれた。

今まで何人もの担当者が
なんとか数字を合わせようと
格闘してきた会計簿であった。

しかし
なかなか
「間違い」の原因がわからない。

数字の山に埋もれている「間違い」を
突き止めなければならないのだ。



公認会計士はおもむろに電卓を取り出すと
目にもとまらぬ速さ
会計簿を見ながら
数字を打ち込み始めたのである。

アタタタタタタタタタ・・・
(どっかで聞いたような掛け声である)

だが…
正直な話
公認会計士の電卓操作の速さには
まくべんは別段驚かなかった。

当たり前である。

相手はプロの公認会計士なのだ。
「まくべん」はあくまでプロの職人技として
うっとりと会計士の電卓操作をながめていた。

しかぁ〜し
しかぁ〜しである。


「まくべん」は公認会計士の
トンデモナイ行為に驚いたのである。


「え〜っと,最初に126374円が現金でありましたっと。」
「はいはい,126374円が…あったわけねぇ」
パチパチ(電卓の音)

「それを銀行に持って行って預けましたっと。」
パチパチパチパチ

「翌日,商品が届いたので
銀行に5680円を引き出しに行きましたっと。」
パチパチパチパチ

「間違って150円多く引き出したのには気づかずに支払いを済ませて」
パチパチパチパチ

「翌日間違いに築いて別の口座から150円を引き出して」
パチパチパチパチ

「最初の口座に戻しました・・・なるほどね」

「そこで・・・っと」


「はぁ〜…なんだか,ここいら辺りが怪しいですな〜ほっほっほ」




実際には
もっと複雑な専門用語が飛び交っていたのだが
省略すればそんな内容である。


「まくべん」が何に驚いたか分かるだろうか。

それは
公認会計士が計算をするときに
「お話」を作りながら作業を進めたことである。

そして
「呟き」である。

あれだけ素早く電卓を打てるのなら
数字だけをガンガンと打ち込んで
さっさと合計を求めればよいのであって
「お話」なんか作る必要はないのである。

「かえって作業の邪魔になるのではないか」
「まくべん」はそう思ったのだ。



仕事を終えた公認会計士に
そのことを質問してみる。

すると彼は言ったのだ。

会計簿(帳簿)は数字だけの世界です。

私は数字だけ見て計算すると
訳が分からなくなるんですよ。

いろいろな数字がドンドン出てきて
あっちへ行って大きくなったり
こっちに来て合体したり
終いには,どの数字が何だったのか
あの数字はドコへ行ったのかが
分からなくなるんです。

だから,自分でストーリーを作って
それぞれの数字に
「意味」や「役割」を持たせて・・・
そうですね・・・それぞれの数字を
ドラマの登場人物にしちゃって
そして計算していくんです。

頭で考えるだけでは
スグに忘れてしまうので
考えたことを
口に出しながら進めると
キチンと自分の耳で確認できるでしょ。

それでも忘れそうなコトは
紙にチョコチョコとメモしておくんです。

すると,どこに間違いがあるのか
どこまでが正しくて
どこからがおかしくなっているのか
わかるんですよ。


会計士なんだから
本当は数字に強くなきゃいけないんですがね。
ほっほっほ・・・

ポリポリポリ…
(頭,カキカキのオマケ付き)



恐るべし・・・公認会計士である。

そして驚くのは
「呟き」のパワーである。

自分の勉強に活用しない手はないのだ。

さあ,全国の中学生諸君!!

呟きながら勉強しようではないか。

そうすれば
複雑な計算や退屈な授業が
キチンと整理しながら頭の中に入ってくるのだ。



ん?・・・なんだ?
そこでブツブツ言っている中学生は?

「なんで勉強なんかしなくちゃいけないんだ」
「数学なんて大嫌いだ・・・」

おやおや・・・
そんなことを呟いたって仕方がない。

それは,ただの
「ぼやき」である。

ちなみに「ぼやき」の場合は
百害あって一利もないのである。

ほっほっほ



  

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