frower2006年  7月のフィールドノートから

*7月15日(土) 大和村フォレストポリス
 
きょうは名瀬の小学校4年生から6年生の20名ほどを引き連れて水辺の生き物の観察会。当初予定していた大川ダム下の
ビオトープの管理がずさんで水がかれてしまったため、急遽大和村役場の大町さんに連絡して、利用を許可してもらった。結果
的には、子どもたちにとってもこちらのほうがよかったかもしれない。広々とした敷地で、のびのびと生き物とたわむれることが
できたのだから。
 子どもたちに順番に網を渡して、水の中の生き物を捕まえてみるようにうながすと、いろいろな獲物が見つかった。ドジョウや
ヨシノボリ、ヤゴの仲間やヒメフチトリゲンゴロウやトビイロゲンゴロウなど。それぞれの生き物の特徴を説明し、よく観察させて
から池に戻してやる。一番たくさん捕れたのはトカラコミズム。小さくてぱっとしない昆虫だが本日の観察会の主役はこいつだ。
先日ぼんやりとテレビの『探偵ナイトスクープ』を観ていると、ミズムシを使った面白い実験をやっていたのだ。水の中に紙を沈
めておいてミズムシを放せば、虫たちが紙を水面まで持ち上げて離す、という実験。そういえば自分が子どものころの図鑑にも
そんな記事が載っていたことを思い出したが、実際にやってみたことはなかった。きょうはそれをやってみようというわけ。
 たくさんつかまったトカラコミズムシをガラス容器に入れ、そこに色とりどりの紙切れを投入する。しばらくして紙切れが容器の
底に沈むと、あら不思議、コミズムシたちが紙切れを水面まで運び出す。水面で離された紙片はすぐに底に沈み、すると今度は
別の個体がそれを上まで運んでいくという具合。永遠に続くシジフォスの苦役を思い出させるなんとも奇妙な現象が繰り広げら
れるのだ。手品を見た子どもたちの目が一斉に輝きはじめる。あとはコミズムシたちがどうしてこんな変わった働きをするのか
考えてもらって、きょうの観察会は無事終了。


▲容器の底に沈んだ紙片を持ち上げようとするコミズムシたち。


*7月18日(火) 奄美市川内川
 上手氏が4年半ぶりにふたたび来島。こんどもまたゲンゴロウをすくいまくるのかと思っていると、彼の現在の興味の中心は
ヒメドロムシだとか。地味だよなあ。「よさそうな」渓流に入っては、石をひっくり返して金魚網ですくう。なにしろ大きいやつでも
体長4ミリくらいというのだから、老眼の目にはつらい。同行したものの、途中で飽きて川の生き物観察に趣旨変更。この辺に
はヘビトンボやヒゲナガカワトビケラの幼虫が多い。エグリタマミズムシやフタキボシケシゲンゴロウもいるので、水質はきれい
なのだろう。石にへばりつくようにして、オオハシリグモが第一脚の先端を水に浸している。ああやって水中の気配を探り、オタ
マジャクシなどが近づくと水中にもぐって捕食するのだという。一度でいいからその水中捕獲の様子を観てみたい。5分ほど待っ
たがまるで動かず、こちらが焦れて動いたのを気取られたようで、岩の隙間に逃げ込んでしまった。
 観察には辛抱が必要。


▲脚先を水に浸してじっと獲物を待つオオハシリグモ。


*7月27日(木) 奄美市大瀬海岸
 大瀬海岸にペリカンが飛来したのが一週間前で、奄美野鳥の会会長の高さん他数名だけがその姿を目撃するという幸運に
恵まれた。その際に撮影された写真からハイイロかモモイロかはたまたコシベニかといろんな意見が出たが、なにしろ3回観に
いって振られ続けた自分にはなかなか確定的なことがいえない。そんななか、ペリカンはまだいるらしいという情報が飛び込ん
できた。昼間はどこか人目につかぬところにいるようなのだが、朝夕は大瀬海岸近くで目撃されることが多いようで、なにしろ
でっかくて目立つ鳥だから、地元ではすでに有名になっている。再び高さんと貞光さんによりいろんな角度から写真が撮られ、
次列風切の翼下面が黒っぽいこと、虹彩が暗色であること、目の周りの裸出部がピンクで広めなこと、足の色が薄いピンク色
であることから、モモイロペリカンの幼鳥だという統一見解が出た。ハイイロペリカンならば観たことがあるが、モモイロは観たこ
とがない。さっそく4度目のチャレンジ。
 日の出前から大瀬海岸で待つ。するとモクマオウ林から悠然と飛び立つ巨大な影が。まるで重爆撃機のようなこの姿には見
覚えがある。フロリダのマイアミキーズで次々と頭上を通り過ぎていったカッショクペリカンと同じ姿! 間違いなくペリカンだ。4
度目の正直で目撃することができたモモイロペリカンの勇姿は朝の光を浴びて輝いていた。


▲朝日を浴びるモモイロペリカンの幼鳥。


フィールドノート トップへ