2005の阪神


井川どうにか(阪神9-3広島) 5月4日

井川が8回までなげたが、いきなりラロッカに2ランを浴び、藤川に救援を仰いだ。井川は、
チームが勝ってよかったです…」  完投も視野に入れ始めた八回途中での無念の降板。言葉は少なかったが、4月21日の巨人戦(東京D)以来となる、今季2勝目。本拠地では待望の今季初白星だった。  これまでとは明らかに別人だ。最速は142キロといつもよりスピードガンの表示は控えめながら、キレのある真っすぐと宝刀チェンジアップで鯉打線をねじ伏せた。二回に1点を失った後は、六回まで走者すら許さない。八回の代打・ラロッカの2ランも、浜風にあおられて左翼ポール際へ。5安打3失点。無四球は先発6試合目で初めてだった。  「力を抜いて、コントロールを意識して投げている」と、7、8分の力で投げる新たな投球スタイルを模索している。今季は6回で100球を越えるペースだったが、この日は8回途中までで92球。しかも4勝目となるデーゲームは防御率7.68と苦手にしていたが、克服の兆しをみせた。  「本当は九回までいかすつもりやった」と、岡田監督が誤算を口にしたのも復調ぶりを感じ取ったからにほかならない。「バランスがいいから、全力じゃなくてもストレートにキレがある。いいころは投げとったよ。今日は一番は勝ち星やろう」。エース左腕との信頼関係が蘇ったのも収穫だ。  「5月なんで、4月よりいい内容にしていきたい」。屈辱にまみれた4月は1勝に終わったが、エースとして復活の兆しをつかんだ井川。復権へ、いよいよ5月反攻に出る。
 
流れが悪い(阪神2-6ヤクルト) 4月30日

3安打を集中して2点を先制した直後の5回だった。1死から代打・ユウイチの遊ゴロを鳥谷が一塁へ悪送球。今季2個目の失策から悲劇のドラマが始まった。2死後、青木に左前へ運ばれ、一発狙いの3番打者に失投を打ち砕かれた。  7点差をひっくり返された28日の中日戦(甲子園)に始まり、前夜のヤクルト戦(神宮)と、3試合連続で本塁打による逆転負け。「ちょっと不用意やったな。内容的には悪くなかったのに…」と岡田監督はため息をつくしかない。指揮官自ら「4月のMVPや」と絶賛した藤川を6回、1点をリードされた場面で投入したが、土橋に左翼線へ適時二塁打。決定的な1点を奪われる有り様だった。  肝心の攻撃陣も序盤から拙攻の連続で、奪ったのは結局5回の2点だけ。投打の歯車が思うようにかみ合わず、2度目の3連敗。最大「5」まで蓄積した貯金は「1」まで目減りして、4月の戦いを終えた。  「流れが悪いから打線が爆発して断ち切らないと。何かきっかけになる一撃がほしいな」23日の横浜戦(横浜)でシーツ、金本がアベックアーチを記録して以来、6試合連続で本塁打が出ないクリーンアップに指揮官は奮起を促した。  だが、開幕3連勝を飾りながらも、4月を勝率5割で終えた昨年からひとつ多い貯金が成長の証しだ。「ここが踏ん張りどころ。明日から月が変わるから、流れを変えないとな」焦りも不安もない。選手を信じ、岡田監督が5月反攻を誓った。

井川 初白星(阪神11-2巨人) 4月21日

井川が待望の初白星を挙げた。開幕から勝ち星がなかったエース左腕は直球で押す本来の投球を取り戻し、6回2/3を2失点。開幕4試合目の登板で今季初勝利を手にした。8点リードの7回2死満塁のピンチで清原を迎えたところで降板。それでも「一生懸命やればいつか勝てると思っていた。内容はまだまだですが、チームが勝てて良かった」とヒーローインタビューで白い歯がこぼれた。  先制した直後の1回裏、先頭の仁志、二岡に連続安打を簡単に浴びた。が、ここから本来の姿を取り戻した。高橋由を右飛、清原を内角へのスライダーで見逃し三振。ローズも空振り三振に斬って取った。「初回の2点でリズム良く投げられた。(清原へは)丁寧に投げました」。  ポスティングシステム(入札制度)でのメジャー移籍を要求して自費キャンプに突入するなど、慌しい中、開幕を迎えた。4年連続の開幕投手で黒星スタートすると、そこからの3試合で0勝2敗。井川の先発した3ゲームは全敗していた。さらに、開幕後に左アキレス腱を痛め、中7日での先発となったが、それでも勝つのがエースだ。岡田監督は「球が甘くなっても力があった。ローテで一番投げてもらわなあかんピッチャーやからな」と胸を撫で下ろしていた。

下柳好投(阪神8-5巨人) 4月19日

下柳が好投し、打線も久しぶりにつながり、巨人に快勝した。
1点リードの七回。この日も好投したGキラー・下柳の労をねぎらうかのように、打線が一気に爆発した。突破口を開いたのは金本。「何とか塁に出ることを考えとった」というアニキが一塁線を破る二塁打を放ち、今岡が四球で出て、一死後の一、二塁のチャンス。矢野は巨人先発・高橋尚の140キロ、内角高めの直球をジャストミートした。東北福祉大で同じ釜の飯を食い、勝負どころを知り尽くしたベテラン2人が、“あ・うん”の呼吸でもぎとった貴重な追加点。  「吹っ切れたというかなあ。1−0は重いし、矢野の3ランが、みんなの打席の中を楽にした。あれでリズムがついた」。岡田監督も絶賛した本塁打が、打者一巡の猛攻へとつながった。  鳥谷、代打・浅井、赤星が初球打ちの3連打で高橋尚をノックアウト。続く藤本は2番手・岡島の初球を中前に運ぶ2点タイムリー。さらにこの回2度目の打席に入った金本が右前適時打で追いうちをかけるなど、結局7安打で7点を奪う、まさにラッキー7となった。  下位打線の奮起が上位打線へと連鎖する、星野前監督(現オーナー付きシニアディレクター)のもと優勝した2003年を思わせるような爆発力。矢野自身もそれを感じていた。「優勝したときも僕(7番)と藤本(8番)でよく点を取っていたし、下位(打線)で取られるというのは嫌なもの。こういう機会を逃したくはないですね」。  八回に中継ぎの乱調で5点を奪われたが、矢野が必死のリードで食い止めた。そして九回裏には代打・斉藤の左翼への大飛球を金本がフェンス際でジャンプしてキャッチ。守備でも2人のベテランが要所を締めた。  甲子園(12−14日)での3連戦は初戦を取りながら2連敗して負け越した。その借りは敵地・東京ドームでの3タテでお返しする。20日は福原が先発する。V奪回へ。負けない猛虎が甦った。

太陽どうした(阪神5-6中日) 4月15日

巨人に連敗してのぞんだ中日戦だったが、太陽がいとも簡単に打ち崩された。
一回、いきなり4連打を浴びて2失点。開幕から適時打のなかった立浪、ウッズといった“寝た子”も揺り起こしてしまった。  二回も無死から谷繁に2ランを浴び、序盤で4点を謙譲。甘く入った球を弾かれ、毎回走者を背負う苦しい展開。4回7安打4失点での復帰後初めて喫した黒星に、ギュッと唇をかんだ。  因縁のマウンドだった。03年5月8日の中日戦の後、右ひじに違和感を訴えて出場選手登録を抹消された。手術前に最後に投げた場所。6日の広島戦(広島)では728日ぶりに勝利を挙げ、完全復活を果たすには最高の舞台が整っていたが…。  岡田監督は「腕が全然振れてない。ブルペンでよくても、試合であれじゃ、どうしようもない」とバッサリ。久保投手コーチも「変化球で腕の振りが緩む。あまりに振れてないんで、(故障あけで)怖いのかな」と首をかしげた。  次回登板について指揮官は「ちょっとわからん」と、ローテ落ちも示唆。二軍で先発調整している杉山、ブラウンのローテ入りの可能性も出てきた。「次までに死に物狂いでやる」と誓った太陽だが、自らの『鬼門』の前に完全復活も遠のいた。
 
井川で勝てない(阪神2-4巨人) 4月13日

今年の阪神は貯金を増やしつつあるのだが、井川の登板のときは不思議に負けている。
突然の乱調だった。5回まで無失点ピッチングを続けていた猛虎のエースが、先頭の仁志から3連打。あっさりと1点を失うと、もう歯止めが利かない。小久保に同点の右犠飛に続き、不振のキャプラーに痛恨の勝ち越し打。真っ向勝負を挑んだが、高めに浮いた速球を打ち砕かれた。  「チームが勝てなかったのは残念ですが、まだシーズンの序盤ですから…」淡々とした口調で左腕は振り返ったが、6回を8安打で3失点とひと息。チームの全3敗は、いずれも井川が先発した試合だ。4年連続の開幕投手を務めるなど名実とも虎投の主軸が、勝ち星なしの2敗。防御率が5・85と目を覆いたくなるばかりの不振だ。  6回6失点で降板した7日の広島戦(広島)後、投球フォームの修正を指示した岡田監督も、さすがに歯切れが悪い。「3戦のなかでは一番よかったが、失点は小久保の犠牲フライまでやな。あそこ(キャプラー)で切らんとイカンよ」5三振を奪い、失点を許さなかった5回までの投球に復調気配を感じつつも、コントロールミスで失った決勝点に顔を曇らせた。  宿敵・巨人に痛恨の逆転負けを喫し、連勝も3で止まった。「打線が序盤に1、2点でも取っていれば変わっていたかもしれないけど…。どっちみち、来週(の巨人戦)は折り返しになるわけやからな」指揮官は、勝ち星がない井川を中5日で19日の巨人戦(東京ドーム)に先発させることを示唆。通算59勝のサウスポーが初勝利を挙げない限り、猛虎に真の“開幕”は来ない。  

悪い予感(阪神9-10広島)4月7日

スピードは150kmは出ていたが投球が単調で打ち込まれそうな予感はあった。
センターに抜けていく打球を、阪神・久保田はただぼう然と見つめた。「情けない。ボールが高かったです…」マウンドを降りた守護神は、真っ青な顔つきでベンチ裏へ消えた。  無情な幕切れだった。シーツの勝ち越し2ランが飛び出し、誰もが勝利を確信した9回裏。岡田監督が満を持して投入した快速右腕があっけなく撃沈した。「久保田は予定通りだったけど、ちょっと力んどったな。やっと登板が来たのに…」3日のヤクルト戦(大阪ドーム)以来の登板だった3年目右腕を懸命にかばった指揮官。不満のほこ先は、今季2試合目で初めての中5日で起用したエース井川に向けられた。  「1点ずつで粘っていたけど、あの3点までやな。せっかく逆転したのに」序盤に2点のリードをもらいながら、6回を9安打6失点。「自分の調子も成績もよくない。まだ140試合あるので粘り強く頑張りたい」と前向きな言葉を並べたが、顔色はなかった。  連勝が4でストップ。単独首位のチャンスも目前で逃した。「明日から甲子園だから切り替えれるはず」指揮官は最後まで語気を荒らげることなく、プラス思考を強調していた。
 
今岡の一発で決まる(阪神9-4広島) 4月6日

久しぶりの太陽の先発に華を添えたのが今岡の3ランだった。今岡の一発で太陽は生き返った。「いいところで打てて本当にうれしいです。太陽ががんばっていたので、何とか点を取れてよかった」  『5番』の輝きだ。2−2で迎えた五回二死一、二塁。先発・佐々岡の外角カーブを捕らえた。打球はゆるい放物線を描いて、左翼席最前列へ。今季20打席目で飛び出した待望の1号は決勝3ランとなった。  1日の開幕戦の朝。自宅で長男・稜君(6)と、野球を楽しんでリラックスして大阪ドームに向かった。だが、いざ打席に入ると、不慣れな打順に雑念もよぎる。「緊張していた」。毎試合ヒットは重ねても、不安を拭えないでいた。  しかし心労を解きほぐしてくれたのも『打順』だった。「前に金本さんがいて、後ろも打っている。何も余計なことを考えずに、自分の打撃に集中できる」。頼れる兄貴が目の前にいて、振り返るとスペンサーが頼もしくみえ、鳥谷も大きく成長した。だから、打席では無心になれる。来た球を打ち返すだけいい。開幕5試合連続安打で2試合連続打点。目標の打点王と30発へ、“第1歩”を記すことができた。

シーツ広島で一発(4月5日)

シーツが一撃で、赤ヘル軍団を黙らせた。一回二死。長谷川の投じた真ん中高めのカーブをしばきあげる。怒りのマグマがつまった白球が、虎党の待つ左翼席に突き刺さった。2試合連発となる先制2号ソロ。巨人に3連勝して勢いに乗るコイを蹴散らした。  「広島に帰ってきてエキサイトした。なんて言ったらいいか分からないけど、いい日だった。いいプレーをしようと思っていた」  古巣との初対決。この日が、2年間在籍した広島市民球場での凱旋試合となるはずだったが…。肌に感じた風は冷たかった。“事件”が起こったのは3月27日のオープン戦(大阪D)。永川から左腰に死球を受けた。激高するシーツ。両軍ベンチからナインが飛び出し、にらみ合う乱闘騒ぎが勃発していた。公式戦初対決で高まる緊張感。嫌がおうにもシーツvs広島投手陣の激突が注目されていた。  「前回の死球? わざとじゃない。過去のことはともかく、ヒットを打とうと思っていた」とシーツ。心はホットに頭はクールに。冷静沈着な助っ人砲が、第1打席でいきなり結果を出した。遺恨バトルを完全征圧した。  シーツの一発を号砲にし、二回には3四球を絡め一挙5得点で試合を決めた。シーツのひと振りが、ベンチから強気の投球を命じられていた長谷川を震えあがらせた。トドメは八回二死二、三塁。因縁の永川から左前2点適時打。今季初の猛打賞で4打点。打率.500、8打点の2冠王が猛虎打線の中心に居座る。  圧倒的な攻撃力で3連勝。広島、中日と並んで、早くも首位タイだ。昨年5月27日以来、313日ぶりの頂点だ。  「最初が大きいよね。シーツも余計に燃えとったんちゃうか。初回に3者凡退で終わるのと全然違う」と、岡田監督もエンジン全開のシーツを頼もしく見つめた。昨季は開幕カードで巨人に3連勝しながら、次カードの横浜戦で3連敗を喫した。そんなひ弱な姿はどこにもない。開幕ダッシュの予感が漂ってきた。「首位? シーズンは長いから、最後に一番になればいい。集中力を切らさずにいきたい」とシーツ。なかなか頼もしい助っ人ではある。アリアスの抜けた穴はうまりそうだ。
 
開幕だ(3月31日)

今年の開幕戦はヤクルトと大阪ドームで対戦する。地元での開幕戦ということで、期待は高まる。井川の先発は誰もが納得するところであるが、鳥谷のショートは一抹の不安がのこる。実績を残して定着すれば、雑音はきえる。V奪回へ、勝負の2年目が始まる。結果が問われる年。それも十分承知している。もう、やるしかない!!  「やって結果がついてくるわけやからな。でも“一番最後まで野球をやる”という気持ちは変わりない」。今年、最後までプレーしているチームを目指す−。V奪回へ正念場の決意を見せた。  手塚オーナーからも開幕ダッシュの厳命が飛んでいる。「もちろん、みんないいスタートを切りたい」と白星発進を熱望した指揮官は、V奪回への助走プランとして自らにノルマを課した。開幕30番勝負だ。  「今年は交流戦があるからね。そこまでの30試合やね。貯金がほしい? 交流戦はどうなるか、全然わからんからな」。5月6日の交流戦スタートまで、セ5球団とホーム&ビジターで当たる30試合。交流戦は先が読めないだけに、それまでに貯金を貯めておきたい。昨季は最多で貯金4だったが、この30番勝負でその壁を越えることが最大目標なのだ。

黒星スタート(4月1日)

エースとはとてもいえないような井川の投球だった。このところ簡単にホームランを打たれる。
球威が落ちている。また、打線の方も、散発的にヒットを打つが、得点に結びつかない。昔の弱い阪神に
戻ってしまった。「負けてしまって残念です。まだ始まったばかりなので、上を目指して頑張ります。調子? まずまずでした」  淡々と振り返ったが、チームにとっては痛恨の黒星スタートとなった。ネット裏には手塚新オーナーが観戦。就任後、初の“御前試合”で勝利をプレゼントすることができなかった。83年のヤクルト戦(甲子園)以来、本拠地開幕戦で4連敗。すべては猛虎のエースのつまずきだった。  八回だった。二死一、二塁で、ラミレスにダメ押しの3ランを浴びた。これで5点差。打たれたのは初球の125キロのチェンジアップ。昨年、何度も痛打を許したウイニングショット。VTRを見ているようだった。  「一番投げてはいけないところ。外国人の初球。あそこが最後の踏ん張りだったけど。ラミレスの場面で交代? それは結果論」と久保投手コーチ。OP戦では最長で5回。スタミナ不足も露呈し、8回8安打6失点の大炎上。背番号29に輝きはなかった。

福原好投(4月2日)

きょうは、大当たりが続いたので実況放送は見られなかった。(笑)前半で勝負はついたようだ。
V奪回のカギを握る2005年版の猛虎打線。先制パンチを見舞ったのは今岡だ。初回2死一、二塁から、坂元の初球を左翼フェンス最上段に当てる2点二塁打を放った。「少し泳がされたけど、うまくミートできた」打点王を目指す新5番打者は、4回1死二、三塁の中犠飛で3打点目をゲットした。  昨年の打点王・金本は勝負を避けられるケースが多いため、後を打つバッターの役割が重要となる。その4番から、3月30日に神戸市内で行われた決起集会の席で、エールを送られた。「歩かされたときは頼むぞ!」その言葉を、今岡は早くも実行した。  岡田監督も太鼓判を押す。「勝負強いね。そのためにあそこ(5番)に置いてる。相当打点は増えるよな」5、6番が、計5打点の荒稼ぎ。今季初勝利を飾った指揮官は、改心の笑みを浮かべた。05年型猛虎打線は、とてつもない破壊力を秘めている。問題のスペンサーも打ち始めたようだ。檜山どうする。