6月の阪神


先発陣も崩れ、打線も昔のつながらない阪神にもどった。
4連敗を阻止すべくエースの井川が立ち上がった。
上昇のきっかけをつかめるか。


勝率5割
(阪神3-12広島 )7/8

福原が打たれ、井川で勝てず前半戦を終了した。今年の阪神はピリッとしない試合が多かった。
プロ入り6年目で初めて踏む故郷・広島での先発マウンドで、福原があっけなく沈没した。今季初登板の広島戦。球威、制球力とも精彩を欠いた。「疲労感? うーん、分からない」今季最短となる2回8失点KOに、開幕からチームを引っ張ってきたエースもさすがに言葉が続かない。これで赤ヘル軍団相手には、2001年から4年越しの6連敗だ。  中継ぎ陣も大炎上し、12失点と大敗した岡田阪神。再び貯金1へ逆戻りした。「見ての通りよ。想像できんことが起こるんやから。どうしようもないやろ」怒りを通り越し、岡田監督はあきれ返った口調で突き放した。プロ2度目の完封勝利を挙げた1日の巨人戦(甲子園)では152キロを記録した直球が、この日は140キロ台前半止まり。「ここはスピードガンが出やすいのに、全然走ってなかったやろ」期待が大きかっただっけに落差も大きく、指揮官の嘆きは終わらなかった。


勝つには勝ったが
(阪神8-3巨人) 6/29

投手陣がお疲れのようで四死球を連発すればなかなかかてない。きょうも先制されて苦しい展開になった。
5回一死、カウント1−0から桑田の内角に入ってきた直球を、今岡はためらいなく振り抜いた。「打った瞬間入ったと思った」(今岡)という打球は左翼席へと突き刺さる勝ち越しの本塁打。さらに、金本の鋭い当たりがペタジーニの失策を誘って1点を追加し、流れを一気に呼び込んだ。  首位中日に連敗した嫌な雰囲気は、地元甲子園球場には持ち込まない。2回までに7四死球で3失点と乱調だった杉山を、湿っていた打線が補った。1回に金本が逆転アーチをかけ、そして5回の今岡。岡田監督は「甲子園に帰って来ると、いいところで本塁打が出る。他の球場とは違う」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。  多くの故障者を抱えながら4、5月はともに五分の星。この試合を落とせば6月の負け越しが確定するところだったが、紙一重で踏ん張り、甲子園では5連勝とした。  ここにきて外国人2投手を緊急補強するなど、苦しい台所事情は続くが、「自分もチームもこれから右肩上がりでいかないと」と今岡。波に乗り切れない昨年の覇者にとって、どんな形であろうと白星は何よりの良薬となる。

 

昔の阪神
(阪神0-1巨人) 6/20

このところの阪神の試合振りは、弱かったころの阪神にそっくりのパターンになってきた。とくに、残塁の多さは・・・。
虎がキバを失った。猛虎打線が成す術(すべ)もなく、凡打の山を築いていく。11回もあった攻撃で、一度たりともホームベースを踏めず、今季9度目の零封負け。もはや、岡田阪神のおなじみの負けパターンだ。  「点が入らんかったら、勝てん。1・2番がバントミスをしてたらアカン」。怒りを通り越し、あきれ顔の岡田監督は吐き捨てた。  指揮官が嘆いたシーンは延長十一回、先頭・沖原が四球で出塁したあとの場面。赤星がバントを失敗し、捕邪飛。藤本は2球目をバント失敗し、カウント2−0と追い込まれた。仕方なく切り替えた強攻策も、一走・沖原の守備妨害という最悪の結果を招いた。すべては合計10打数ノーヒットに終わった赤星、藤本の1・2番コンビの大ブレーキにあった。  得点能力を失ってしまっている。2夜連続の完封負けで、23イニング無得点。さらに37イニングもタイムリーが出ていない。この日も、わずか5安打で、打線は瀕死の状態に陥っている。2試合連続の0−1のスコアでの敗戦は、打高投低のいまの野球では異例だ。史上最強打線に立ち向かい、好投を続ける福原ら投手陣とはあまりに対照的。それだけに、攻撃陣の覇気のなさだけが目立った。  「上原は低めにきていたし、あれだけ投げ分けられるとうまくいかない。また明日頑張ります」と、金森打撃コーチもお手上げ。気持ちを切り替えるのが精一杯だった。岡田監督は「見ての通りや」と強い口調で言い放ち、帰りのバスに乗り込んだ。虎党にはイライラだけが残った。

 
まるで歯がたたん
(阪神2-7横浜) 6/13

コーナーぎりぎりを突く直球と、手元で鋭く変化するカットボールが、この日も面白いように決まった。  7回を被安打6、2失点。中4日でマウンドに上がり、阪神の聖地・甲子園で白星を簡単にもぎ取った三浦は、「相性? こればっかりは自分でも分からないね。調子はいつも同じなんだけど」と涼しい顔で振り返った。  阪神相手になるとめっぽう強い。今季5勝中、4勝は虎から挙げたもの。通算でも28勝7敗。勝率8割は対阪神20勝以上の投手では最高の数字だ。2001年9月25日以来の阪神戦連勝記録も7に伸ばし、自己最多の10連勝も見えてきた。「まだまだですよ。シーズン通して返してもらわないと」勝っても勝っても、三浦が口にするのは同じ言葉だ。昨年、チームは阪神に6勝22敗。その屈辱は忘れようにも忘れられない。「中4日? もともと暑いのは好きだしね。連敗中の流れも止めて、ちょっとはチームに貢献できたかな」  絶対的な虎キラーに、ナインも負ける気がしない。2―1と競り合っていた5回に値千金の3ランを放った種田は「(三浦が投げる阪神戦は)リラックスしてゲームに臨める。心強いですよ」と話した。  チームの連敗を3で止め、最下位も1日で脱出。山下監督は、「日程の問題もあるけど、これだけ内容が良ければ、また阪神に当てたくなるね。ますます“キラー”になってほしい」とニンマリ。「9番、ピッチャー三浦」―。試合開始前から虎党を絶望のどん底に突き落とすコールは、まだ続きそうだ。


藪が完封
(阪神8-0広島)6/8

野球の神様からの贈り物だった。607日ぶりの感慨が詰まったウイニングボールが、グラブ目がけて飛び込んできた。9回2死二塁。木村拓の鋭い当たりの投ゴロをがっちりと受け止めると、背中に羽が生えたような軽快なステップを踏んで一塁を守る関本にトスした。「何年ぶり?」スコアボードに9つのゼロを並べた3勝目。2002年10月10日の中日戦(甲子園)以来の完封勝利に、藪が声を弾ませた。  逆境にはもう慣れっこになった。朝から雨が降り続けた福井。雨天中止か、強行か。アップ中にも強く降り注いだ雨は集中力をかき乱す“難敵”だったが、まるで動じなかった。  抜群の制球力と切れのあるカーブ、フォークを武器に序盤の3回まではパーフェクト。大量8点のリードをもらっても「点を取られたら代えるぞ、と言われていたんで」と、自らを追い込んだ。完封にこだわったのも、ここまでの受難の日々があるからこそだ。  手に入れた白星は5月1日のヤクルト戦(甲子園)以来。今季はここまで先発した8試合のチーム最多得点がわずかに「2」と、好投しながら打線の援護に恵まれないゲームが続いた。それでも、決して腐らなかった。今季から、自身の公式ページ上に登板後の反省をつづることを日課にしている。8回3失点と好投しながら貧打で黒星を背負った5月14日の広島戦後にも「一つの敗戦を自分自身もっと考えねば現状を打破できない」と書き込んだ。  「自分のことを振り返るのは難しいものだね」と照れ笑いを作る背番号4。だが、パソコンに向かって行う復習の積み重ねが快投となってしっかりと実を結んでくれた。  リーグトップの防御率2・27を誇る右腕に、初めて打線の猛烈な援護射撃が加わった。「いつも援護がなかったからな」と、岡田監督も労をねぎらった白星。泥沼の連敗を3で止めたベテランが、虎を再び上昇気流に乗せる。


井川連敗阻止
(阪神6-0ヤクルト) 6/3

井川が踏ん張り連敗を4で止めた。金本がこのところ三振が多いのが気になる。アリアスは好調のようだ。
【1回】中5日で登板の阪神先発井川に対し、ヤクルトは先頭の志田が左前打した。井川の制球が定まらず、1死後岩村は四球を選び一、二塁となった。ただ、ラミレス、鈴木の中軸2人は倒れ無得点だった。ヤクルトの先発も左腕で藤井。阪神は先頭の藤本がストレートの四球で出塁した。赤星も四球を選んだ。今岡のヒット性の当たりは右飛となったが、藤本が三進。金本の打席で赤星が二盗を決めて二、三塁に。金本は内角いっぱいのボールを見逃し三振。アリアスは四球で2死満塁と変わった。ここで今季初スタメンの早川が三遊間深い打球で内野安打として、まず1点。さらに関本が中前へたたいて2者を迎え入れた。なおも一、二塁から矢野が左前打して1点。3連続タイムリーで4点を奪った。  【2回】阪神は藤本が左前へ落とし先頭出塁。しかし、赤星の三塁ゴロで走者が入れ替わり、赤星は二盗に失敗して2死。この後、今岡が左前へクリーンヒットを放ち、金本は二塁の左を抜く安打で一、三塁としたが、アリアスは三振に終わった。初回とは対照的に、3安打しながら得点なし。  【3回】ヤクルトは2回に続いて2死から四球で走者を出したがそこまで。阪神は2死後に矢野が右前打したが、井川は遊撃ゴロで終了。  【4回】先頭の鈴木が左前打を放ち出塁した後、井川の暴投があって鈴木が二進した。しかし、ヤクルトはこの反撃機に古田、稲葉、土橋が凡退した。阪神は1死から赤星が内野安打で出たが、後続が倒れた。  【5回】両軍1死後に四球で走者を出した。阪神は2死後に矢野がこの日3本目の安打を左前に放って一、二塁とし、井川は四球で満塁と攻め立てた。しかし、藤本は左飛で3者残塁となった。  【6回】ヤクルト2番手の佐藤賢が登板し、阪神は1死後に今岡が遊撃内野安打で出塁した。金本三振の後、3番手の河端がマウンドに上がってアリアスが左翼へ二塁打し、2死ながら二、三塁。阪神ベンチは早川に代えて桧山を打席に送り、最後は敬遠ぎみの四球。5回に続いて満塁となったが、関本は二塁ゴロに倒れた。  【7回】阪神は先頭の矢野が4打席連続安打。井川のバントで二進したが、藤本、赤星が凡退しここでも追加点が挙げられない。  【8回】井川が相手2、3、4番を連続三振に仕留めた。阪神はようやく打線が呼応。この回から登板したヤクルト花田から、一塁に四球の今岡を置いて、アリアスが左翼席へ高々と打ち上げる2ラン。  【9回】古田に四球を与えたものの、井川は結局5回以降ヤクルトに安打は許さず、2安打完封勝利を挙げた