岡田阪神のスタートは、ライバル巨人との戦いで始まった。
先発は予想通り阪神・井川、巨人・上原、エースのプライドをかけて
て息づまる投手戦というか緊張感ただよう試合になった。8回上原が降板
したとたんに阪神打線が爆発、打者一巡の猛攻で6点をもぎ取り、安藤・ウイリ
アムの継投で巨人を撃破した。今年も期待できそうな予感・・・・。



鳥谷第1号
(阪神12-5横浜)

開幕から7連敗していた横浜に初めて勝った。とにかく横浜には簡単に打ち込まれていた。打線も沈黙・・・・・。
 初めて見る景色が目の前に広がっていた。一段高いお立ち台から、虎党の熱いコールを浴びた。鳥谷が45打席目でプロ第1号。横浜戦の連敗を「7」で止め、首位を奪回した値千金アーチだ。  「人が打ったホームランで生還したような感じでした。こういう場面でホームランを打てたので自信にしていきたい」  記念すべき一発は先頭打者で迎えた八回。東のカウント2−1からの142キロ直球を振り抜いた。低い弾道はグングン伸び、バックスクリーン右に着弾した。  藤本との遊撃バトルに敗れ、開幕6戦目からベンチ暮らし。12日には本職でない三塁の練習を命じられた。友人の携帯電話に「便利屋にはなりたくない」とメールを送るなど悔しさに泣いたが、そんなとき、心の支えになった言葉がある。  「『浪花節』ってなんですか」。東京育ちの鳥谷にとって、最初は関西地区に根付く『浪花節』の意味が理解できなかった。「その気持ちが分からないといけない」。そう感じながら暮らしていくうちに「逆境にこそ真価が問われる。苦しいときこそ人は見ている」。だんだん、その精神がわかるようになった。  一回り大きくなったルーキーの一発が猛虎打線を完全に乗せた。八回に一挙5点。これまでの7試合の合計で11点だったのに、1試合で12点を奪った。岡田監督が「やっつけた感じになった」と喜んだのもわかる。  それでも黄金ルーキーは満足しない。最後にお立ち台で叫んだ。「自分の持っている力を相手に全力でぶつけたい」。真の猛虎戦士になった背番号1が、真の力を発揮するのはこれからだ。


赤星さよならタイムリー
(阪神5-4) 7/23

夜空に向かって、絶叫した。気がつけば、三塁ベースを回っていた。歓喜の輪の中で小さな体がもみくちゃにされ、興奮のあまり、座り込んだまま動けなかった。ドラマチックな夜にピリオドを打ったのは、また赤星だ。「サヨナラ男もいいですけど、もっと個人的に頑張ります」15日の広島戦(甲子園)に続き、サヨナラ安打を放ったヒーローが、再び劇的な一打を放った。  猛虎の恐るべき執念だ。1点を勝ち越された10回、最後のドラマが待っていた。先頭・関本が四球を選び、久慈が手堅くバントで送った2死後、平下の遊撃内野安打で一、三塁となって、この男に打席が回ってきた。ワンボールからの2球目。内寄りの直球を振り抜くと、打球はダイビングキャッチを試みた中堅・鈴木のグラブをかすめ、左中間に転がった。関本に続き、一塁走者・平下がサヨナラのホームを駆け抜け、4時間11分の死闘の幕が下りた。  「ふがいなかったんで、チームに貢献したかった」2試合続けて、背番号53は無安打に終わっていた。それを救ってくれたのが、岡田監督だった。試合前の早出特打で「変化球に、泳ぐぐらいの気持ちで打たないと。ポイントが近い。変化球を引きつけすぎや」と、アドバイスされた。効果はてきめんで、初回の左前安打で、早くも目が覚めた。「これまでになく、いい感じで打てた」と、不振脱出へ手応えをつかみ、今季2度目のお祭り騒ぎにつなげた。  赤星だけではない。前の2試合で8打数1安打の今岡も、土壇場で意地を見せた。小久保の2ランで逆転された9回。左太ももの負傷で欠場していたアリアスが、代打で右前安打で後続にバトンを渡した2死二塁。それまで無安打の選手会長が、シコースキーから右越えへ、適時二塁打をお見舞いした。「すごく感動しました。赤星がやってくれた」と、3番打者は自分の殊勲打には触れず、ヒーローを持ち上げた。  「皆の力で、全員で逆転できた。4カード連続で勝ち越し? あっ、そうなの? それより、頭を切り替えて次のカードにいかないと」と、勝利の興奮を必死で抑えた岡田監督。赤星も「この勝ちはかなり大きい」と全選手の気持ちを代弁した。一枚岩となった岡田阪神が、今年も巨人をけ散らし、V2へ突き進む。   ◆鳥谷2度目タイムリー  不思議なほど落ち着いていた。鳥谷は深呼吸で息を整えると、マウンド上の久保を見つめた。「フォークが来るのかと思ったけど、久保さんが3回、首を振ったので、これはストレートだと思った」4回2死三塁。144キロの直球を振り抜くと、鋭い打球が一、二塁間を割った。  4月28日の横浜戦(甲子園)以来、プロ2度目のタイムリー。「うまく体の回転で打てた。きょうはチームが勝ってよかったです」伝統の一戦で初めて打点を稼ぎ、笑みがこぼれた。  25日の横浜戦(甲子園)からはアリアスの復帰が濃厚。3試合連続のスタメンは微妙だが、右方向に初めて飛んだ適時打。ゴールデンルーキーが、確実に大きな一歩を踏みしめた。

 

藤本が満塁弾
(阪神14-1広島) 5/4

打って、打って、打ちのめした!! 今季最多の14得点。同最多タイの18安打&4アーチ。甲子園で3連敗した怨敵を袋叩きだ。新2番・藤本が火付け役。猛虎の小兵が自身のパワーに驚いた。  「打った瞬間いったと思いました。後ろが今岡さんだったのが大きいです。『後は頼みます』と言って打席に入りましたよ」  2点をリードした四回表、無死満塁。「外野フライでいい」と思って振り抜いて、打球は右翼席に着弾だ。年間2本目がプロ初なら、グランドスラムは「野球を始めてから初めて」。後を託された今岡には、一人の走者も残らなかった…。  2日のヤクルト戦(甲子園)でもアリアスが放っており、これで2試合連続の満塁弾。チーム史上、なんと23年ぶりの快挙だ。前回昭和56年は3試合連続で、6月19日の大洋戦(現横浜)の藤田平、23日の広島戦の山本和に続き、3発目は6月24日の広島戦(甲子園)。池谷(現巨人投手コーチ)から打ったのはプロ2年目、若かりし日の岡田彰布だった。  「そんなん全然覚えてない」。本人でさえ忘れていた。古い記録に光を当てたのが藤本であったことが二重の驚きだ。  ドジャース・野茂英雄投手(35)が出資した話題のクラブチーム、「NOMOベースボールクラブ」の存在が励みだ。主将の天満(てんま)克之さん(26)は社会人・デュプロ時代の同僚で、現在も連絡を取り合う仲。  2人でプロを目指していた。藤本が阪神入りしてからは不況が深刻化。社業との両立を余儀なくされ、親友は結局、退社の道を選んだ。現在はバイト生活を続けながら、まだ夢をあきらめていないという。  「社会人では同い年で野球を辞めている人もいっぱいる。僕も、毎年最後だというつもりでやらんとダメなんです」  社会の不況を肌で知る男が満塁弾&今季2度目の猛打賞。しかし虎の将は、それとは正反対の景気のよさにホクホクだ。九回にもトドメの3発が飛び出し、独走ロードが見えた。これで本拠地3連敗(4月13−15日)の借りは返した。  「いや、まだまだ。1勝は1勝やから。あしたもう1つ、あるしな。打つ方も、投げる方も、いい形になってきた」  今季初の4連勝。敵地開幕で巨人に3連勝して以来、貯金は「3」まで増えた。どん欲にコイをもうひと叩きして、さあイッキに首位を固める。


アリアス・満塁ホームラン
(阪神9-3ヤクルト) 5/2

胸のすくグランドスラムで3タテ完成だ。敵地で巨人に開幕3連勝して以来。暦が変わって、上昇気流は疑いない。力ずくでツバメを一気飲みしたのは、6番・アリアスの腕っぷしだった。  「打てる球を待ち続ける。その辛抱だよ。あとは自分がやってやろうと思いすぎないこと。あの場面は投手にプレッシャーがかかっている。ストライクを待っていた」  最初の一撃で相手をビビらせ、結局これが決勝点になる痛快さ。一回の二死満塁。フルカウントから、ヤクルト先発・鎌田の高めスライダーだった。風にも乗った打球が、左中間の最深部へ吸い込まれていく。一死満塁から5番・桧山が一邪飛に倒れた直後。中軸より頼もしい助っ人が、空気を一変させた。  「桧山が打ち損じた分、アリアスが取り返してくれた。初回の4点が大きかった」。指揮官の理想の6番像を、この日のA砲は演じた。4月3日の巨人戦以来の満塁弾。七回にもダメ押しの12号ソロを放ち、今季2度目の1試合2発。5番が日替わりの現状だけに、直前で好機がしぼむことも…。それを再点火させるのが打順の狙いであり、ジョージの役目なのだ。  38本塁打をマークした昨季の12号到達は6月1日の巨人戦(東京D)で、開幕53試合目だった。まだ5月のカレンダーも始まったばかり。しかも26試合しか消化していない。140試合換算で64.6発ペース。量産態勢を崩さず、キング独走の巨人・阿部に忍び寄る。  オフには自宅のあるアリゾナ州で元阪神の2人と食事会を開いた。昨年の僚友・ポート(現アスレチックス3A)と、一昨年まで3年間在籍したハンセル(同メキシカンリーグ)。タテジマの縁が結んだ友人から近況を聞いた。兄弟のように仲がよかったホワイト(02年在籍)も、メキシコで奮闘中だと知った。  日本で夢破れた男たちとの交流は続く。彼らの苦闘を知ることで、3年目に入った甲子園ライフは余計に貴重な日々に思える。お立ち台を待つ5万3000観衆からは、「ジョージ!」とご指名の大合唱。誰の目にもヒーローは歴然だった。  「前回広島にはやられたので、明日からその仕返しをして、首位に立ちたいと思います!!」  4月10日以来の貯金2で、首位・中日にゲーム差なしの2位浮上。3日からは、敵地で鯉料理の3連戦に挑む。岡田監督も「前の(3連敗の)ぶんを取り返したい」と息巻いた。黄金週間はここからが見せ場。“指定席”はもう目の前だ。


代打・関本

(阪神5-4巨人) 4/25
巨人に先制点を奪われやばいかなと思われた6回に代打に出た関本がやって.くれました。
 「打った瞬間は頭が真っ白になりました。うれしかったです」  2点を追う六回一死二、三塁。これ以上ないチャンスで下柳の代打に送られた。「ゴロを打てば1点入る」と強くたたいた打球は三塁・小久保のグラブをかすめ、左翼線を突破。無我夢中で二塁にスライディングし、ガッツポーズが自然に出た。  普段は、どっしりとベンチに腰を据える岡田監督も、思わず立ちあがって大きな拍手。「きょうはどうあれ、あそこは関本でいくつもりやった」。二軍監督時代に手塩にかけて育てた背番号44が、期待に応えてくれた。  二回、自らを最高に刺激する一発が飛び出した。同じ高卒で97年に同期入団した浜中の今季1号。「ハマにも負けられないと思った」と試合後、興奮気味に話した。入団1、2年目は起きている時間のほとんどを野球に費やした。「ハマ」「セキ」と呼び合う2人は「なんでこんなに野球せなあかんのやろなあ」とお互い愚痴をこぼしながらバットを振りつづけた。  タテジマをまとってから7年、25歳の2人が、打線の核へと成長を続ける。岡田世代ともいえる生えぬきの若虎がG倒の主役に躍り出た。


四番・金本
(阪神6-3巨人) 4/24

Gキラーが止めた。先制パンチに、中押し、ダメ押し。3種のパンチを打ち分けて、甲子園では2週間ぶりの勝ち名乗りだ。本拠地連敗を「5」でストップ。4番・金本が、大好物のYGマークにかみついた。  「甲子園の巨人戦になると3倍くらい燃えるので、あした絶対に、勝ち越しを狙いたいと思います!!」。8戦連続で超満員5万3000人が埋めたスタンドが、お立ち台の声に沸き上がった。  一回、無死満塁の第1打席はフルカウントからバットではなく、右手にボールを当てた。三回無死一、二塁では右前に運ぶ。2点を返された直後の六回には一死一、三塁から飛距離十分の犠飛を中堅左へ。試合を決める3打点を挙げた。  甲子園でのG戦にはめっぽう強い。今季は2試合で5打数3安打、2本塁打、6打点。2年間通算では50打数22安打、5本塁打、20打点の打率.440。昨季、死のロードから帰った8月27日に、逆転3ランでチームを蘇らせたのも同じ舞台、同じ相手だった。つまり−。虎党にはたまらない公式。『巨人戦×甲子園=金本』だ。  「久しぶりの甲子園での勝ち。まだすっきりしないゲームが多いけど、ここで勝つと弾みがつくし、あしたにつながる」。初の本拠地G倒は岡田監督にも格別の味だった。ここ7試合は○●○●○●○とオセロゲームを繰り返し、5割ラインを行ったりきたりだが…。4番が与えた浮上の芽。だお3戦は下柳先発か・・・・。頼むぞ。


復活・福原
(阪神6-2ヤクルト) 4/17

神宮球場のカクテル光線に照らされ、福原の白い歯がキラキラ輝いた。「ボールを低めに集めることを意識して投げられました」7回を5安打無失点で、無傷の3連勝。普段はクールな男が、帽子を取って、猛虎ファンの声援に応えた。00年4月18日の巨人戦(東京ドーム)以来の完封勝利はお預けになったものの、MAX150キロの直球でヤクルト打線を封じ込めた。  最大の試練は3回だった。2死二塁から、宮本、岩村に連続四球。満塁で大砲・ラミレスを迎えた。「自分の出したランナーだったので、何とか抑えたかった」直球、カーブを外角に集め、カウント2―2と追い込んだ後、外のスライダーで遊ゴロに打ち取った。6回には、宮本の痛烈な当たりを左ひざに受けた。「ちょっと痛かったけど、大丈夫です」と、ピンチを気合で乗り越えた。  優勝した昨年も3勝8敗1引き分けと負け越した神宮での2連勝は、2002年7月2、3日以来、実に2年ぶり。鬼門を打破する連勝劇で勝率5割に復帰、3位にも浮上。岡田監督の口調も滑らかになってきた。「井川と並んでいいピッチングをしてくれた。5割? まだ始まったばっかりやし、一試合一試合、戦っていくだけ」と、前向きな言葉が飛び出した。  今季7勝のうち6勝を井川と福原の左右両輪が稼ぎ出した。「右のエース? まだまだこれからです」と6年目右腕。防御率はついに0・86。抜群の安定感を身につけて、今季の目標に掲げたローテーションの座は、もはや不動だ。問題はこの二人に続く先発がピリッとしないことだ。


乱調・伊良部
(阪神6-9広島)

昨年の日本シリーズの伊良部を見るようにいとも簡単に打たれすぎる。球に切れがない。体が重たい。
締まって行こうよ…。いや、伊良部の体型のことを言ってるんじゃない。それは誤解のなきように。それにしても、たるんでいませんか?気持ちが緩んでいませんか?お得意さまの横浜に3連敗しただけでなく、広島までコテンパンにやられてしまうんだから…。  幸先はよかった。今岡が今季早くも2本目の先頭打者本塁打で先制。二回に逆転されても、その裏、即座に矢野&伊良部の連続タイムリーで同点に。三回にはアリアスがバックスクリーンへ一発を放り込み、勝ち越しに成功した。  ところが、だ。伊良部は相変わらずピリッとしなかった。四回、先頭の新井に四球を許すと、続く野村の投ゴロまがいの打球をご丁寧に逃げて差し上げた。何とか二死まで漕ぎ着けたが、また四球を許して満塁に。続く嶋の左前打で同点にされ、まだプレーが継続しているにもかかわらず、本塁カバーがお留守に。そのスキをついて、三塁に到達した野村が即座に生還。そうなると、もうボロボロになる一方だった。  ラロッカの一塁内野安打を、アリアスが一塁へ悪送球。これで伊良部がKOされた。  さらに2番手・牧野も制球が定まらない。四球を許してまた満塁とした後、前田が中越えの走者一掃二塁打。結局この回、打者10人の攻撃で計6点を失った。  伊良部は二回、前田の打球を左スネに当てた。その影響があったのかもしれない。いや、他の投手なら投ゴロに仕留めていたはずだ。そのプレーから、チームが緩んだ。そこからピンチを広げた。ボークも冒した。悪循環、悪いムード。4試合連続大入り満員のスタンドが、いやな空気に包まれていた。  意気消沈した阪神打線は九回、アリアスの4号2ランで追い上げたが力及ばず。大事な3連戦の初戦で黒星を喫し、貯金はまた「0」なった。次回は伊良部は使わないだろう。使えない。

 
あわや完全試合
(4/8 阪神6-0中日)

井川が八回、先頭の福留に中前打を打たれるまで完全試合ペース。3安打完封で今季2勝目を挙げた。打線も四回、金本の適時打などで2点。六回は2四球を挟む3連打で4点を加えた。中日はバルガスが四回途中に危険球で退場し、中継ぎが打ち込まれた。  阪神・岡田監督 甲子園でまた開幕のつもりで、と選手には言っていた。井川に尽きる。あそこまでいったら(完全試合を)やらせたかった。  中日・落合監督 完全試合? どちらにしても1敗。10敗するわけじゃない。最後まで気持ちを引きずってたら、福留の1本で終わっていたよ。  ★中日・バルガスが危険球で退場 中日のマーチン・バルガス投手(27)は9日の阪神戦(甲子園)の四回、マイク・キンケード外野手(30)の頭部に死球を与え、危険球で退場となった。退場は今季リーグ2人目。危険球での退場は両リーグ通じて今季初となった。またキンケードは、この死球で途中交代。救急車で兵庫県西宮市内の病院に運ばれ、左前頭部打撲と診断され、検査入院した。骨に異状はないが、数日間の安静が必要という。  ◇エースの矜持  なぜ井川が「阪神のエース」と呼ばれるか。その答えが明快に分かる試合だった。数字ではない。負けられない試合で最高の投球を見せる。そこにエースの矜持(きょう・じ)がある。  七回まで21人の打者を完ぺきに押さえ込む。ヒヤリとする当たりもなかった。八回の先頭打者・福留に中前打を許し、完全試合の夢は断たれたが、3連敗で甲子園に戻って来たチームに、再び勢いを付けるには十分過ぎる内容だった。  矢野は「全部(の球種が)良かったよ」と語る。三、五回の3連続など計11奪三振。直球、チェンジアップ、スライダー。すべての持ち球が低めに決まった。しかし、「点を入れてもらってからは、ストレートに力を入れて投げた」という井川の言葉に意味がある。  チーム状況を頭に入れ、相手をグウの音も出ないほど抑え込む。そこにこだわったのだ。初安打の直後はアレックスを併殺打。九回無死一、三塁のピンチも、力のある球で三振と併殺打で切り抜けた。「点を取られたら後味が悪いから」ととぼけたが、何が何でも完封する、という気迫に満ちたマウンドだった。  岡田監督は「横浜で打線を見て、感じることがあっただろう」と、エースの気概を見抜いていた。打線も井川の力投に応えて集中打が復活。昨季は46勝15敗と圧倒的な強さを見せた甲子園で、阪神が再浮上のきっかけをつかんだ。横浜にいやな負け方をしたのでこの試合の勝ちは大きい。

 
横浜に連敗
(4/7 阪神0-17横浜)

昨年のお得意さんである横浜に連敗してしまった。一点も取れないのも珍しい。これくらいの大差で負ければあきらめもつく。
【1回】阪神は1死後、好調赤星が左前打で出たがキンケードが三塁ゴロ併殺。近鉄から移籍した阪神先発前川は、その裏いきなり石井に中前打を許した。しかし、鈴木尚三振のとき二盗も阻止し2死。多村は三塁ゴロに打ち取った。  【2回】1死後桧山が中前打した阪神だが、初回と同じように今度はアリアスが遊ゴロ併殺打に倒れた。その裏横浜はウッズが四球で出た後、村田が右翼フェンス直撃安打で無死一、三塁。金城は三振したが、内川の二塁ゴロの間にウッズが生還して1点を先制した。  【3回】阪神はこの回も併殺打でチャンスをつぶした。先頭鳥谷が死球出塁したものの、矢野が遊ゴロ併殺。横浜は1死後、石井が右翼席へ1号ソロアーチをかけて差を2点とした。  【4回】1番から3者凡退に終わった阪神。横浜は1死後、村田が四球。2死後に内川が右翼線に落ちる安打で一、三塁。相川が中越え二塁打して2者を返した。  【5回】阪神打線は横浜先発マレンの微妙に変化するボールに手こずった。金本が四球で先頭出塁したものの、桧山、アリアスが相次いで三振。鳥谷も平凡な二ゴロに終わった。横浜は先頭の石井がこの試合3安打目を右前へ。鈴木尚が手堅く送り、2死からウッズは四球。ここで村田が初球を右中間へ運ぶ2号3ランで、一気に7点差とした。  【6回】阪神は1死から代打浜中が四球を選んだが、今岡が遊ゴロ併殺打。逆に勢いに乗った横浜は、阪神2番手の江草からあっさり追加点を奪う。先頭内川が中前へ落ちる幸運な二塁打の後、相川が中堅右へ2号2ランを放ち、9―0。  【7回】3回以降安打が出ない阪神は、この回も赤星の四球を生かせない。横浜もウッズが死球出塁したが後続なし。  【8回】マレン攻略の糸口がつかめないままの阪神。横浜は阪神3番手の吉野に金城、内川、相川が3連続長短打を浴びせ2点を追加。さらに代打小田嶋、石井が続いて1点。1死後、四球、ウッズの捕手前適時内野安打に村田の犠飛、この後も3連打。この回だけで大量8点を加えた。  【9回】阪神は、横浜の新人吉川相手に1死から赤星が四球で出たが、キンケードが三ゴロ併殺。
ランナーが出ればことごとく併殺だから点が入りようがない。今日はすっきり勝ちたい。

 
アリアス満塁ホームラン
(4/3 阪神5-1巨人)

巨人に2連勝。先発の福原が危なげなく7回まで投げきり、アリアスの満塁弾で息の根を止めた。(拍手喝さい・・・)
止まらない、止められない。確かに敵地のはずなのに、アリアスはこの球場に、愛の告白までしてしまった。「東京Dが大好きだっ!!」。開幕から2戦、同一球場に限れば4戦、さらに言えばOP戦から数えて6戦連続の本塁打。新生岡田丸を開幕連勝劇に誘う、衝撃の満塁弾が飛び出した。  「やはり巨人に勝つことは一番いいことだからね。(昨季逃した本塁打王は)もちろん獲れたらうれしいけど、何があるかは分からない。最後まで、頑張るよ」  1点リードの四回。赤星からの連続攻撃で、瞬時に無死満塁の絶好機が出来上がる。しかし巨人先発・高橋尚も土俵際で踏ん張った。桧山のバットが空を斬る。ここが勝負の分起点だった。  飛んだ。落ち切らないスクリューボールを捕らえて、打球はセンター左寄り、140メートル地点に着弾した。中堅手であるA砲の親友ローズは、打球を目で追うことしかできない。昨季14戦7発。来日5年で通算21本目。ビッグエッグの魔物は、いつでも味方してくれる。  「ローズも球をよく見れば、必ずいい結果が出る。そうすれば、怖いラインアップになるよ」  神戸市内の同じマンションに住んでいた。オリックス時代から、異国でできた「ベストフレンド」と呼べる存在だった。仲良くなっても1年限りの縁…となるのが助っ人の宿命だ。顔ぶれが変わっていく中、2人だけが残り続けた。ローズと近鉄の契約がこじれ、巨人移籍が決まったときは、「慣れれば大丈夫さ」と背中を押してあげた。  適応すること。実はそれが一番難しい。新チームから加わった金森コーチが言う。「僕には選手時代の実績がない。正しい道理でも、実際に成功例を見せてあげないと、誰も取り組みません。僕が名球会なら違うでしょうけど」。少し自嘲気味に笑う新入コーチに、最初に近付いたのが背番号14だった。名前ではなく、何を与えてくれるのか。プライドやこだわりを捨てた分、新たな何かが受容できるのだ。


井川 白星スタート
(4/2 阪神8-3巨人)

ヒーローにはなれなかったが、白星は手にした。3年連続で開幕投手に抜擢された井川が7回を被安打5、3失点。苦しかった。しかし粘りは忘れなかった114球。そして巨人に、上原に投げ勝った!  「球がバラついた。上体が高かったから球が浮いた。最低限の仕事はできましたけど…」   2年ぶりの開幕勝利。しかし完封勝利をもくろんでいたエースの表情はやはり渋かった。猛攻を見せてくれた味方打線への感謝と自分への反省の尽きない白星となった。  都内で行われた3月31日の決起集会では、2次会に向かう仲間に別れを告げ1人、宿舎に戻った。前夜(1日)も10時間睡眠をとり体調は万全。しかしマウンドには防御率3.86と精彩のなかったオープン戦の井川が立っていた。  1点リードの二回、元木に右中間に逆転2ラン。真ん中に入った直球を叩かれた。同点に追いついた後の五回には仁志に打たれた。1−2から甘く入ったスライダーを左翼へ。この一発で勝ち越しを許した。  それでも岡田監督は信頼して続投させてくれた。井川もエースとしてのプライドを胸に粘りを見せた。ベンチに戻るたびに佐藤投手コーチとフォームを検証。上体で投げていたのを徐々に下半身で投げられるように修正した。六回は三者凡退。七回も阿部、井出を連続三振に奪い三者凡退でチェンジ。そして味方打線は爆発した。  「井川に勝ち星がついたのは大きいよ。打線との信頼関係が大きい」  岡田監督は安堵の表情を見せた。「次はいろいろと修正していく」  一方、不完全燃焼に終わった井川は次回での名誉挽回を誓う。シーズン始まったばかり。20勝エースが進化した姿を見せてくれるのはこれからだ。