マジックがついに11になり、待ちに待った優勝が秒読みになった。
もう、優勝を確信してもいいだろう。しかし、阪神フアンは、
やはり半信(阪神)半疑という言葉が心の
どこかに残っているのだ。



海外でも「六甲おろし」

阪神優勝の興奮は国境を越えた。海外に住むファンは15日、パリでセーヌ川に
飛び込み、ロンドンでは有名広場で「六甲おろし」を熱唱。アジア各地の「猛虎会」
も祝杯に酔いしれた。  パリでは優勝が決まった後の15日午後5時(日本時間
16日午前零時)、シャンゼリゼ通りの真ん中にある地下鉄駅に約30人が集まった。
日本から送ってもらった法被、メガホン、はちまきなどタイガースグッズで身をかため、
凱旋門(がいせんもん)まで数百メートルを、六甲おろしを歌いながら行進した。  凱
旋門前で、関西向け輸出のために欧州の業者がつくった「阪神優勝記念ワイン」で乾
杯。通行人にも振る舞った。  日本酒販売店員の八雲祐寿さん(34)は、セーヌ川に
かかるアルマ橋の上から飛び降りた。85年の優勝のときは大阪にいて、道頓堀川に
飛び込んだ。「道頓堀の方が臭かった。セーヌの方が橋が高いので、滞空時間が長く
感じました」  ロンドン在住のファンは中心部のトラファルガー広場をめざした。ネルソン
提督が19世紀初頭、フランス軍を撃破した「トラファルガーの戦い」を記念する広場だ
が、阪神ファンにとって、この日は「虎ファルガー」。  100人を超す人だかりになり、
六甲おろしを大声で歌い、噴水の池に次々に飛び込むさまに、通行人は目を白黒。
 「マニラ猛虎会」の約50人は、日本人向け飲食店が集まるマニラの「リトル東京」
にある料理店の衛星テレビで、優勝の瞬間を確かめた。日本酒やビール
をかけ合い、六甲おろしの大合唱。  顧問のコンサルタント藤本定(さだむ)
さん(63)は京都市出身で、機械技術者として72年に来比した。
「阪神はフィリピンと一緒。未完成で、もう少し手をかけたら何と
かなる、そういう存在。それだけに、優勝は我が子の成長を見たよ
うな気持ちです」  中国で在留邦人が約1万6000人と最も多い
上海でも15日、4日前に結成されたばかりの「上海猛虎会」
のメンバー約30人が、日本料理店で爆竹を鳴らし、
祝杯をあげた。  バンコクの日本料理店でも
「泰国猛虎会」のメンバー約50人が酒だる
を抜いた。「やっと安心した。10月には動物園の
トラを借りてきて、ホテルで大祝勝会を予定しています」


優勝
(阪神3-2広島) 9/15

ついに優勝の時がきた。待ちに待った優勝だ。
18年ぶりの優勝だ。前回は宮之城の繁華街を梯子酒
したことを思い出した.あれから18年もたったのか・・・・・。

飛び回って勝利の雄たけびを上げるナインの後ろから、星野監督が
ゆっくりとグラウンド中央の輪へ進んでいく。次の瞬間、無数の
フラッシュの中に、顔をクシャクシャにした背番号77が浮かび
上がった。1度、2度…。左手で帽子を握りしめて7度、宙を
舞った。  「ああしんどかった。苦しい時代を乗り越えて、
夢に日付を入れることができました!」優勝インタビューで
感情を爆発させる指揮官を、ナインが整列して見守った。島野
ヘッドコーチが、そして平田監督付広報が代わる代わる、1997年
1月31日に51歳で亡くなった扶沙子夫人の遺影を掲げ、目を真っ赤
にした。  人生をかけた大バクチだった。69年のプロ入り以来、慣れ親
しんだ名古屋を離れたのは2年前の2001年。「周囲には“今までの成功
を捨てることになる。やめとけ”って反対されたけどな。おれは冒険家なの
かもしれん」決断してからは、大胆な手腕で球団を改革した。1年目こそ
4位だったが、オフには金本、伊良部ら大補強に成功。春先から走り続
け7月8日、故郷・倉敷での広島戦でマジック「49」を点灯させた。
マジックがひとけたになってからもたついたが、甲子園に
帰っての優勝は感慨もひとしおだった。次は
日本シリーズへの挑戦だ。


中日に3連敗
(阪神0-5中日) 9/14

優勝を目前に足ぶみが続いている。
これも優勝という言葉が選手達にプレッシャー
になっているのだろう。甲子園に帰って気分一新だ。

2連勝で今季3度目の先発マウンドに上がった阪神・福原が、
5回3失点(自責は1)で初黒星。一回にいきなり2点を奪われ、
金縛りムードのチームに喝を入れることはできなかった。
 「よーいドンで四球を出したらいけませんよ。それが
すべて。その後はなんとかなったけど、やっぱり初回の
四球がいけない」  立ち上がり、いきなりだった。先頭の森野
にストレートの四球。続く関川に左前打され一、三塁。福留の打席
で捕逸が出て1点。続く立浪の二ゴロで2点目を失った。先発2試合
で12イニング無失点を継続中だったが、初回にあっけない形で
消滅した。  結局、五回まで投げて被安打6、3四球で3失点。
佐藤投手コーチは「病み上がりだしね。いつもいいというわけ
にはいかない」。背番号28をかばったが、“背信”の事実に
は変わりない。右肩手術から復活した奇跡の右腕がみせ
た、立ち上がりのつまづき。日本シリーズ第4の先発
へ、大きな宿題ができた。


投壊
(阪神7-9中日) 9/13

久しぶりに一軍復帰したムーアだったが、一回
持たずにKO。藪をはじめ出てくる投手が12四死球
をだして試合を壊してしまった。生みの苦しみなんていう
段階ではない。星野監督がおこるのも無理は内。

1点リードの5回、3番手の藪が1死から3連続四球を出すと、
闘将がマウンドへ。今季3度目の“直接指導”で気合を入れたが、
藪は代打・井上に右中間への2点二塁打を浴びる。「3連投が影響?
 そんなことないよ」ベテラン右腕は気丈に振り返ったが、痛恨の決勝点
になった。ベンチへ戻った星野監督は思わず足元のメガホン
を蹴り上げた。結果的には甲子園での胴上げが近づいた。


中日に完敗
(阪神1-2中日) 9/12

優勝のプレッシャーか、打てない守れない阪神に
逆戻りしたようだ。赤星、金本が全く打てそうな雰囲気
がない。投手陣もピリッとしない試合が続いているのが気になる。

野口に完敗。星野監督は「晴れ晴れとしとったな。腕が振れて、
切れがあった。そうは打てんよ」と潔く負けを認めた。  野口に最高
の投球をされた。これまではチーム打率3割5分6厘と打ち込んでいたが、
この日は低めのスライダーに大苦戦を余儀なくされた。  「ここまで勝って
きたから今があるんや。1勝が遠い? 楽しんでるんや」。星野監督は
笑顔で強気に語り、落ち込む選手たちを鼓舞した。ほんとうに
気楽に阪神の試合が見れていうことはないのだが・・・。

 
マジック2
(阪神7-7ヤクルト) 9/11

ヤクルトもなかなか負けてくれません。最後の意地を
みせて頑張ったため、引き分けにするのがやっとだった。
このままでは、日本シリーズが心配だが、とりあえず優勝だ。

猛打賞でマジック減らしに貢献した沖原が、まずは満足感に浸った。
8回に同点に追いつく2点タイムリーを放ち「右方向に打つことを心掛け
ていました」と、逆らわずに右翼線に運んだ一打を振り返った。  引き
分けに持ち込むことには貢献したが、延長10、12回の打席はともに
二塁に走者を置いてヒットは打てず。「最後で打ちたかった」と悔や
んだ。それでも今岡の離脱で6日から1番・二塁での先発出場を
続けている。「いいところで使ってもらえてうれしい」と話した。
今岡を超える活躍だ。頼もしい一番打者になった。


マジック3
(阪神2-3ヤクルト) 9/10

井川がそこそこ好投したが、ヤクルトの新人・館山
も阪神の打者を寄せ付けず、緊迫した試合になった。

 阪神は同点の延長十一回、3番手の安藤が一死満塁とされ、
救援のウィリアムスが二死としたが、代わったリガンがラミレスに
決勝の二塁内野安打を許した。  打線も9回2失点の井川を援護で
きなかった。四回に先制。1―2とされた直後の七回は片岡の本塁打
で追いついたが、その後は継投にかわされた。ヤクルトは今季最
多タイの6連勝。  広島が中日に敗れたため、阪神の優勝への
マジックは1つ減って「3」になった。 週末の中日戦あたりが
Xデーになりそうだ。ここで3連敗すれば甲子園で
ということになるかもしれない。それでもいいか。


マジック4
(阪神3-10ヤクルト) 9/9

先発の伊良部が満塁弾などでKO。ヤクルトに完敗した。
3点のリードを簡単に逆転されて敗れた阪神。星野監督は「5回は
二死からの7失点? みっともないな。マジックを消す(減らす)ような
ゲームじゃない。消化ゲームのようだったな」とあきれたような口ぶり。
甲子園では9連勝とヤクルトを圧倒しているが、神宮では逆に5連敗と相
性が悪い。  5回の7失点がすべてだった。先発の伊良部は無難な立ち上
がりだったが、4回に抜けたフォークをラミレスに左中間席に運ばれてリズムが
]狂ったか。5回は2安打と死球で二死満塁とされ、岩村に甘い直球を左翼席
に運ばれた。これで伊良部の気持ちも切れた。  夏場以降も、伊良部は
先発陣には入っているが、主力の打者に一発を浴びるなど、勝っても負
けても内容はいまひとつ。佐藤投手コーチは「やっぱり相手の3、4、5
番を抑えないとね。一発を浴びるのはボールが甘いから。スタミナ不
足だな」と課題を口にした。  広島が敗れ、阪神のマジックは4に。
指揮官は「満足できない試合? 年間、なんぼかはある。
でも普通、ここまでくるとないんだがなあ」と
首をひねっていた。


マジック5
(阪神8-3横浜) 9/7

横浜との最終戦はアリアスの満塁ホームランなどで快勝。マジックを
5とした。チームの勝利数も80の大台にのせ、優勝も秒読み態勢に・・・。
福原が6回を無失点で2連勝を飾り、右肩手術からの完全復活を印象づけた。
 「低めに一生懸命に投げようと思った」と汗をぬぐう。伸びのある直球にフォーク
ボールを絡めて被安打はわずかに2、三振は7個を奪った。  安定感に満ちた
94球にも「もう少し投げられるようになりたい」と前向きの右腕を、星野監督
は「終盤にああいう投手が出てくるのは大きい」と大きな手ごたえ
を感じ取ったようだ。 後は優勝をいつむかえるかだ・・・。


矢野さよならホームラン
(阪神4-3横浜) 9/5

ライナー性の当たりだった。5万観衆がかたずをのんで行方を見守る。
矢野は「入ってくれと思いながら走った」。白球がバックスクリーンで跳ね、
夜空をつんざく歓声がわき起こる。逆転サヨナラ本塁打。ヒーローは拳を突き
上げ、何度も大きく跳びはねた。  試合後、その激しいまでの喜び方について
聞かれると「試合が終わったら(感情を)出しますよ。(試合中は)キャッチャーだか
ら出せない部分はある」。普段は表情を隠し、相手との駆け引きに専念せざる
を得ない。それだけに爆発した歓喜は大きかった。  前半は三浦に完全に
抑え込まれ、矢野自身2三振を喫した。リード面でも5回の失点を悔や
んだ。失策から2点を失ったのはしょうがない。だが2球続けた速球を
適時打された3点目は自分を許せなかった。  「打撃では足を引っ
張っていたし、守りでも乗り切れなかったから」。2―3で迎えた
9回1死一塁。雪辱のチャンスに、最高の形で結果を残した。
 劇的勝利でマジックを「6」に減らし「優勝」の二文字がくっきり見え
てきた。「どんなかな、と想像はしますよ。最後は三振でウイニングボール
を捕りたいなとかね」。チームは18年ぶり、そして自身初の栄冠。近づい
てきた歓喜の瞬間へ、思いをはせていた 。


ちぐはぐな攻撃
(阪神1-4広島) 9/4

下柳はよく投げたと思うが、星野監督が言う投手に四球、
先頭打者に四球を出し、その後タイムリーを打たれて負けた。

下柳が魔の6回に泣いた。先頭のブロックにストレートの四球を与える。
2死を取ったが、緒方に甘い変化球を左翼席へ逆転2ランを浴びた。  
「低めにびしびし来たかと思えば、突然甘く入るポカがあるか
らな」。前回登板で完封した時も、星野監督は下柳に
やや厳しめの言葉を残していた。投手に出塁を許
すこと、回の先頭に四球を与えること。
投手出身の星野監督が説いてきた戒めを二つも
犯したことが敗因となった。  5回終了時点で1000投球回
を達成。自身9年ぶりの2けた勝利も持ち越した。チームに今季初
の8連勝をもたらすことにも失敗した。試合後は無言で通した。

この試合は、下柳よりも攻撃陣が広島のブロックに抑え
込まれた。チャンスは何回も訪れたが後一本が
なかなかでなかった。完敗。


マジック7
(阪神5-4広島) 9/3

 今季、何度となく繰り返してきた集中力を、1点リードされて迎えた7回に
爆発させた。主役は4番・片岡だ。2死二塁から自分の目の前で、金本が敬遠
された。「あれで気合が入ったよ」肩に入ってしまった力は、カウント2―1からの
5球目で抜けた。玉木の暴投で走者は二、三塁。続く6球目を自然体で振り抜くと、
打球はあっという間に右中間を割る。逆転だ。なおもアリアスの一打が、左翼席へ
きれいな曲線を描く。「片岡の一打で乗っていけたよ」助っ人の2試合連続、ホーム
ランダービーでもトップに並ぶ31号2ランで、今季2度目の7連勝を決定づけた。
アリアスの31号ダメ押し  試合前から不穏な空気が漂っていた。核弾頭・今岡が
左肩痛でスタメン落ち。先発した井川は、初回に左ひざを痛めて退場した。投打の
主軸に起こったアクシデントも吹き飛ばすほど、今の猛虎打線には勢いがある。「カ
ウントダウンのプレッシャーなんてないよ。優勝が決まる試合くらいじゃないか。
これだけ差が開いてるんだから」試合前に断言していた指揮官も、ナインの
予想以上の成長ぶりに目を細めた。  連勝街道をあと4つ伸ばせば、
7日の横浜戦で、歓喜の瞬間を迎える可能性がある。
舞台はもちろん、超満員の甲子園だ。「(優勝が)
近づいてきたことは、間違いないな」慎重な
指揮官も、もはや指折り数えて
待つ心境に達している。


マジック9
(阪神7-4広島) 9/2

アリアスの2本のホームランなどで広島に勝ってマジックを9にした。
長い道のりだった。7月8日の広島戦(倉敷)で優勝マジック「49」を点灯
させてから56日目。一度も灯を消すことなく数字を減らし続けた。この日の朝、
広島市内の宿舎では、はやる気持ちを抑えるように、慎重に言葉を選んだ。
 「マジックをそう気にするな。週末にもV? そんなに早く決まるわけないやろ。
オレの予想では名古屋の後の甲子園(15日からの広島3連戦)じゃないか。
球場にこだわり? 何十年も優勝してないチームやないか」白星を重ねていけば、
7日に地元・甲子園での横浜戦で優勝が決まる可能性もある。周囲の期待が
ナインへのプレッシャーにならぬよう、あえて最短Vの話題を笑い飛ばした。
 ただ、胴上げを確信している気持ちは、もう隠すことはできない。「まだ
まだ先の話や。だが、間違いなく(その日は)来るんだから」ユニホーム
を着ていなくても、今や24時間、歓喜の瞬間だけを思い描いている。
もう、優勝は間違いなくやってくる。


福原が帰ってきた
(8/31 ヤクルト戦で復活)

目に涙が浮かんでいたのでは? 問われた福原は照れながら
「そんなことないですよ」と打ち消したが、言葉は上ずっていた。約1年
ぶりの1軍マウンド。そして、好調なチームの輪に加わった。5年目右腕は
二つの感動を味わった。  「よう投げたよ」。星野監督も素直に褒めた。
投手出身だから、余計にその苦労が分かる。6回無失点ながら、
86球で降板させたのは「100球は超えさせない。あいつには
将来があるから。おれにそう言わせる投球やった」と目を
細めた。  ローテーションの谷間で勝って、優勝へ一歩近づいた。
「これからも貢献したい。先発へのこだわりは当然ある」。福原は自分
の居場所を確保しようと懸命だ。その強い思いはチームに緊張感を運び、
また阪神を内側から強くする。マジックも11になりいよいよ優勝も
秒読みにはいった。今月中には優勝も確定するはずだ。
さあ、ラストスパート。後一息だ。