2002 タイガース始動

星野監督を迎えて新生タイガースが動き出した。屈辱の4年連続の最下位返上
を目指して・・・・・。FAで獲得した片岡選手、続いてアリアス選手の新しい
息吹が、よどんだ阪神を蘇らせてくれるであろう。

3/20
阪神6-6オリックス

負けない

白星こそのがしたものの、日替わりヒーローがチームを盛り立てた。チーム
最年長の広沢が、そして移籍2年目の若虎・平下が奮闘。値千金のドローで、
あと2勝すればオープン戦優勝が決まる。この勢いで開幕ダッシュだ。 1点を
追う九回、一死一、二塁。打席に立ったのは五回に同点2ランを放った広沢。
スライダーを左前へ運び同点。「まあ、調子は良くなったよ。(ベテランの味?)ま
だまだだよ」と相変わらずの広沢節だが、健在ぶりを十分にアピール。
 さらに二死二、三塁から打席に立った平下が、驚くようなパワーを魅せた。
直球を下半身からうねり上げる豪快なスイングでとらえた。打球は“竜巻打球”
となり、逆転の中越え三塁打だ。「結果を出さないと2軍に落とされますから」と
控えめに話した平下だが、この一打が開幕1軍を大きく引き寄せた。 
星野監督は「トラ(広沢)もええ仕事をするし、平下もおるし困ったなあ」とうれ
しい悲鳴。試合を重ねるごとに、阪神は強さを増している。

3/12
阪神3-2ロッテ

藪好投

星野阪神が見事、甲子園初ゲームを白星で飾り、オープン戦7勝目を
挙げた。二回、ルーキー・浅井のタイムリーで先制。逆転された直後の
五回、4連打とホワイトのV犠打であっさり再逆転に成功した。投げては
先発・藪が4回を2安打無失点、4三振を奪う力投を見せた。
 春の日差しが注ぎ込む甲子園。二回にルーキー・浅井の適時打で先
制しながら、五回に成本が2失点。1―2と劣勢だったチームもが即座に
反撃に出た。  五回一死から浜中、赤星が連打で一、二塁とすると、坪
井が中前にはじき返して同点とした。さらにアリアスが二塁後方にポトリと
落ちる幸運な安打を放って満塁。ここで、10日の近鉄戦(高松)で九回に
同点打を放った新助っ人・ホワイトがセンターに高々と打ち上げ、犠飛で逆
転の走者を迎え入れた。  オープン戦で発揮し続けている粘り強さは、この
日も変わらず健在。マウンドでも、先発・藪がキャンプから持続する好調ぶり
を披露した。二塁に走者を許さず、4回を2安打ゼロ封。4奪三振の力投に
「どれだけ真っすぐを力強く投げられるかを気を付けた。感触は悪くなかった」
と、確かな手応えを口にした。  逆転の後は伊藤、遠山、新守護神候補・
バルデスと”本番”さながらの継投で1点差逃げ切り。星野阪神が今季
の甲子園初ゲームを見事に白星で飾った。

3/7
阪神8-5巨人

巨人に快勝

北の大地で猛虎復活の雄叫びだ。札幌ドームで行われた巨人とのオープ
ン戦で8―5と快勝。アリアス、片岡を欠く“飛車角抜き”の打線で今季初の
2ケタ12安打。開幕前哨戦を“ガチンコ”で制した星野監督は、開幕Gたたきへ
手応えだ。 相手は現役時代から譲れないライバル。“手負いの虎”だから
こそ、野生の本能が蘇った。 スランプに苦しんできた浜中が、初回に
右翼の左への当たりで二塁を陥れる好走塁。三回に同点中前打、
五回には勝ち越し右越え三塁打で、計4打点を挙げた。
今季初の1番に座った今岡は六回に特大満塁弾。切り込み隊長の仕事も
きっちりこなした。指揮官には状況判断のうまい赤星を2番に据える構想もあ
る。 4盗塁、送りバント、進塁打も効いた。4発のアーチを放った巨人打線を
完全に脇役に回した。 「今日はいろいろ全部試せたよ」と星野監督。田淵
コーチも「(相手に打線の)脅威を与えたかった」と前哨戦の目的は果た
した。札幌で30年ぶりの伝統の一戦は、開幕戦へこの上ない
期待感を膨らませた。

3/3
阪神3-0オリックス

4連勝

3連勝で勢いに乗る阪神が3回、1点を先制した。1死から2番田中が
二塁打。浜中三飛の後、アリアスが左越えに適時二塁打を放った。
オープン戦初先発の阪神井川は、危なげない立ち上がり。3回まで
2安打を許したが、要所を締めて0封。開幕投手最有力候補の貫禄を
見せた。3回を終わって1−0と阪神が有利に試合を進めた。  井川は
回を追うごとにペースアップ。4回に、3番葛城、4番進藤から連続で見
逃し三振を奪うと、5回にも7番三輪、8番五島を同じく連続見逃し三振
に斬って取った。結局5回を投げて、2安打0封、6奪三振。格の違い
を見せつけた。阪神は6回、貴重な追加点を奪う。1死から桧山が
左中間を破る二塁打で出塁。エバンス三振のあと2死から坪
井が中前適時打で1点を追加した。  6回から登板し
た阪神の新外国人左腕ムーアは、3回を投げて
1安打4奪三振の好投。
8回には代打カツノリが左越えに本塁打を放って勝負を決めた。
9回は新外国人バルデスが締めた。阪神は星野監督の地
元で3ー0と快勝し、オープン戦4連勝となった。

3/2
阪神4-3オリックス

三連勝

星野監督が、オリックスとのオープン戦で最終回に敬遠策をとる“ペナント
采配”を披露。猛追をかわした5年ぶりのオープン戦開幕3連勝で、勝利に
執念を見せる“星野イズム”が、息吹となって聞こえてきた。 4―2で迎えた
九回。3番手の成本が、3連打を浴びて1点差。無死二、三塁。オープン戦と
は思えない表情の成本は、気力を振り絞って高見沢、福留を連続三振。ここ
で星野監督が動いた。左の葛城に対し、出したサインは「敬遠」。 オープン
戦ではまれな光景に、スタンドがざわめいた。これが“勝利至上主義”か―。
尻に火がついたベテランは、佐竹を一ゴロに抑えた。マウンドを降りた成本は
「監督の勝つという意思が伝わってきました」と、興奮冷めやらぬ様子。 3連
勝にも「ガツガツやって勝っているんじゃなく、自然の流れの中で勝っている
からな」ととぼける。手応えがあるからこそ、言葉に飾りはない。「でも一回
ダダーッと(楽勝で)勝ってみたいな」。ポロリとこぼした本音と笑顔が、
また一歩前進した証拠だ。

2/24
阪神6-3西武

松坂を粉砕

白星発進にも、容赦なく振るわれた闘将のムチが、早速効果を見せた。
3年ぶりのオープン戦開幕連勝。「結果は2重丸やな」。この日、唯一のほめ
言葉が、星野監督の手応えを表した。 昨年の春野で、先頭から5連続三振を
奪われた松坂への雪辱戦を“立ち合い”で制した。初回二死一、二塁の好機で、
エバンスがバックスクリーンへ先制3ラン。この一撃で松坂をビビらせ、西武連
破に弾みをつけた。 23日に逆転サヨナラ勝ちを収めた後、消極的な打撃が目
立った野手陣に「勇気が足りん」と一喝。さらに夜のミーティングでも、島野ヘッド
の口を借りて「積極的に行け。もっと勇気を持て!」と強烈なゲキを飛ばした。この
試合でも、二つの見逃し三振に倒れた今岡を、田淵チーフ打撃コーチがベンチ裏
に呼んだ。「これからは勝つだけでは済まされん」。 星野監督も七、八回のピン
チでマウンドに集まる内野陣に、ベンチから「いちいち集まるな!」と大声を飛
ばした。鬼と化した監督の姿が若虎を奮い立たせ、連勝という最高の
結果を導いた。
2/23
阪神4-3西武

オープン戦初戦は
逆転さよなら勝ち

西武とのオープン戦で星野監督が初さい配、九回裏に藤本の3点三塁打と
今岡の中前打で、劇的な逆転サヨナラ勝ちを飾った。目標は優勝―星野監督の
言葉が、説得力を持ち始めた。 だが星野監督は、選手の前では最小限の喜
びしか見せなかった。サヨナラに沸くナインの後ろで、島野、和田コーチとそっと
握手。ポンポンと手をたたいてベンチへ引き揚げた。 結果オーライでは終わらせ
ない。「今日の得点は死球、四球からばかり。九回に1点取られてあれで負け。
ペナントレースならな」。最後の最後で逆転にこぎつけた打線にも不満が口を突
く。八回まで散発5安打で無得点。根底にある、4年連続最下位チームの“萎縮”
を見逃さなかった。 球場を出ようとした車の窓が開くと、おもむろに左手の人さし
指を天に向けて突き立てた。照れたようにニヤリ。隠しても隠し切れなかった喜
びを表現した。単なる1勝ではない。星野仙一少年が憧れ続けた「阪神タイ
ガース」に、星野仙一監督がもたらした歴史的な1勝だったのだ。

1/11
初夢?
 
優勝パレード

40年ぶりの優勝パレードや!星野仙一監督が監督就任あいさつのため
地元の甲子園署、兵庫県警、大阪府警を表敬訪問した。そこで言
われたのは、何と…。「優勝パレードのときは協力させてい
ただきます」―。阪神ファンが胸の奥にしまっていた「優勝
パレード」という言葉を思わぬ所で耳にした。 
スーツ姿に身を固めた星野監督は午前10時に甲子園署、11時過ぎ
に兵庫県警、午後3時には大阪府警を訪ね、就任のあいさつを
した。 現役監督が警察を表敬訪問すること自体珍しいが、
その理由を「(甲子園球場は)あれだけの人間がたくさ
ん集まる所。ご迷惑をかけてもいかんし、よろしくお
願いします、と」と気配りができる指揮官らしく
説明した。そのうち、兵庫県警と大阪府警
からは、ちゃっかり優勝をおねだりされた。 
阪神の優勝パレードは、1962年にまでさかのぼる。当時のルートは
甲子園球場を出発して東は尼崎、西は神戸を目指した。甲子
園署の後藤署長は、当時の交通事情とは違うことを考慮
した上で、甲子園―神戸間を「住宅地を通って…」などと、
約1時間で行けるルートを披露。何とも気の早い話だ
が、星野阪神にとっては、実にありがたい構想?  
訪問した各警察で「優勝に向かって頑張り
ます」と約束した星野監督であった。


2/1
キャンプ

春のキャンプスタート

2002年2月1日午前10時、高知・安芸が星野色に染まった。安芸キャンプ
が始まり、星野監督の指揮の下、緊張と期待感が交錯する中、新生タイガース
が生き生きと始動した。 白地にタテジマのユニホーム、背番号77が、鮮やかに
映えた。安芸市営球場セカンド後方。新指揮官を待ち受けるナインに歩みよりざ
ま、グラウンドコートを脱ぎ捨てた瞬間だった。 訓示―。選手がツバを飲み込む。
星野監督が口を開いた。「おう、川尻やないか」。メジャーへの移籍問題で契約
がもつれながらも、最終的に星野監督の下でのプレーを決断した川尻にまず、
声を掛けた。一同爆笑、そしてこの時、星野タイガースは一丸となって動き始
めた。 野村前監督初年度の3倍となる3000人のファンを集め、報道陣も
30人多い約300人。新しい阪神を見たくて集まった数だ。天気も最高。
星野丸は帆に一杯の追い風を受けて、絶好のスタートを切った。

2/6
優勝だ

優勝のためには

星野イズムがチームの隅々にまで浸透したことを証明する“事件”が起きた。
 カーライルが、ブルペンに一番乗りした。今キャンプ初投げ。10球に達するよ
りも早く、佐藤投手コーチがカーライルの欠陥を看破した。そして、自らカーラ
イルの右足を持って、うまく左足に体重移動できるよう指導を施した。 助っ人
の表情が曇る。昨年、本番のマウンドで打ち込まれた時によく見せたイラつい
た仕草。無理もない。昨年までは“野放し”の状態だったからだ。 しかし、
それは昨年までの話。相手が誰であろうが伝えるべき意思はきっちりと伝
達する。手抜きのないコミュニケーションこそが星野流だ。「ひざと腰の使
い方を話した。だってあれじゃ、ダメだろう。オレの考えを柔軟に実行で
きるのなら、やればいい。無理ならその時考えるよ」(佐藤投手コーチ)
 このままなら衝突寸前―。しかしカーライルは、去年のやり方が間違いであ
ることを察知していた。「自分の直そうとしていることにあてはまる話
だった。これからも聞こうと思ってるよ」。冷静さを取り戻し、
何事もなかったように話した。 最下位脱出、そして
優勝へ向けて、遠慮は何もいらない。


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