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土石流災害に思うこと (5)

No.216(2018.08.04)


スギやヒノキを植林して管理放棄された山林に問題があるからといって、すべて国の責任において解決すべきであると主張できない理由があります。

それら山林は所有権を個々人が有する私有地であるからです。

当然植えてある木々の所有権も同様です。

私が農村で暮らしていた時に所有していた土地の前所有者は、傾斜地の土が雨で流れて田んぼのあぜ道をふさいだ際に、自費での対策を集落から求められたそうです。

一般的に私有地間の問題に行政が積極的に関与して解決をはかってくれることは望み薄でしょう。

予算措置をしていないでしょうから予備費的な余裕がなければ財政的にも難しいでしょうし。

災害が起きた場合の復旧費用がどのように工面されるのか私は知りません。

ハザードマップで危険とされていても危険度に応じて順次対策費用が予算化されてはいないという事実はあります。

災害が起こる前と後では、使われるお金の流れがまったく違う名目によってなされるのではないかと推察されます。

土砂崩れや土石流が起きた場所が私有地であったとしても、当該土地の所有者に明白な過失があることを立証できなければ、被害者が損害賠償請求をすることはできないでしょう。

植林した山林の管理が不十分であることを当事者の過失であるとしたら、社会的秩序の維持が不可能になると思います。

土地の所有者の管理義務の範囲は明確に定められているのでしょうか。

山林となっている土地の所有権に関して、主に境界線でもめる住宅地とは異なる難しい問題が、植林によって生じてしまったようにも思えます。


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