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お墨付きカリスマ (2)

No.114(2003.06.04)


大阪での久司道夫氏のセミナーの1週間後に、今度は日本CI協会が主催し東京で行なわれた2日間に渡る同セミナーにも参加しました。

セミナーのテーマは「霊性の進化」だったと記憶しています。(ちょっと大風呂敷なところに親近感を覚えます)

大阪の時よりも引き締まった雰囲気だったので集中力が増しましたし、また講義の内容もより深かったです。

参加者全員が、氏の話の内容に感心するとともにそれをそのまま鵜呑みにしているような様子で講義が進んでいた際には、氏のこんな発言も飛び出しました。

「皆さん、大丈夫ですか?私の言っていることは全部嘘かもしれませんよ。」

その時私は、どこかで同じようなことを聞いたことがあったなぁ、と思いました。

友人から借りたマクロビオティックの創始者である桜沢如一氏のニューヨーク講演のカセットテープで聞いたのだと思い出すまでにさして時間はかかりませんでした。

信じ込ませるのではなく主体的に考えさせよう、という師の手法が伝承されていたのです。

私はそれ以前に久司氏の(当時入手可能だった日本語での)著作を全て読み終えていたので講義の内容の8割以上は既に知識としては得ていたものの、話し言葉で聞くのはまた格別なものがありました。

知的好奇心を刺激しつつ満たしてくれると言ったらよいでしょうか。

そんな内容の講義だったためか受講者にも向学心に燃える人達が多いように感じられました。

休憩時間に廊下でたまたま大阪でのセミナーにも参加していた女性と出会いました。

懇親会での一件を思い出した私は遠慮がちにさぐりを入れてみました。

「あの時は(私が)変な質問をして座を白けさせてしまいましたね。」

感情を表に出さない様子の彼女から返ってきた言葉は意外なものでした。

「あのくらい言ってやった方がいいんじゃないですか。」

私は苦笑いをしながら曖昧な相槌を打つしかありませんでした。女性は強い!(苦笑)

恐らく彼女も当時のマクロビオティック普及活動に対して何らかの不満を抱いていたのでしょう。

大阪の会場に、声なき少数者とはいえ実績や権威に対して盲目的に思考停止してしまわない人がいてくれたことが分かり、私には心強く思えました。

それと同時に数の論理で追い込まれた際の自分自身の弱気を思い出し恥じました。その頃の私は今以上に自分の言行に対する覚悟が足りなかったのでした。

覚悟と言えば、いくらお墨付きでカリスマ性のある人物のお話しだからといって、それを無防備に信じ込んでしまうには、冷静に考えてみると相当の覚悟が必要なはずなのですが。


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