トップページへ

末期では手遅れ

No.101(2002.11.15)


田舎では公民館の年次総会の来賓として市町村議員を招待することがしばしばあります。

農村に移住後初めての総会で、ちょっと変わった議員と出会いました。

彼は挨拶の際に直立した姿勢からいきなり開脚して尻を床につけ、高齢であるのに身体が極めて柔軟であることを強調したのでした。
そして開口一番、「田舎で地縁血縁なしに議員をするにはこのくらいできなければ駄目なんです」。

私を含め多くの人が唖然としていました。

その後懇親会(飲み会)に入って席順に関係ない移動が始まると、その議員さんは私がよそ者と知っていて隣りに来ました。

話してみると人は悪くないし、考え方に共感できる部分もあったので熱烈ではないものの彼の支持者になりました。
と言っても選挙の際に彼に投票する以外は街中で会った際に立ち話で雑談をするという程度の関係です。

数年後に、最近見かけないな、と思っていたらその議員はガンでもう助からないという噂話が伝わってきました。

寝耳に水だった私はさっそく連れ合いと一緒に病院にお見舞いに行きました。

意外だったのは見た目には彼は非常に元気そうで末期の肺ガンで助からない状態にあるとはとても思えなかったことです。

しかし付き添っていた奥様から、もう口からは何も食べられないので点滴をしていると聞くに及び、実状はかなり危険な段階まできていることが分かりました。

当時私達はマクロビオティックの料理教室に通い始めていて、病気治しのために参加している人達とも接していたので、なんとか議員の力になれないかと思案しました。

料理の先生とも相談して玄米スープ(調理法省略)を試してみることにしました。

できあいのものではなく我家で食していた玄米を用いて調理したものを冷めないようにポットに入れて病院に持参しました。

その場で試してもらったところ、無理なくのどを通って飲み込めたことに議員本人よりも奥様の方が驚いていました。

喜んでもらえたので足繁く玄米スープを届け続けたところ奥様が恐縮され、作り方を教えて欲しいと依頼されました。

我家で実際に作るところを見てもらい、また安心できる食材の入手方法もお伝えし、その後は奥様にお任せすることにしました。

その日に奥様から今までの経緯を聞かせてもらいつつ話し合う時間ももてました。
彼が玄米スープを飲むことができたのを目の当たりにした私は、知人に紹介してもらった玄米菜食の食事療法で難病の治療をしている医者に既に電話で相談していました。私が彼の様子を説明するとその医者は、もはや食事療法で治る段階ではなく転移しているのではないか、と言っていました。
その件を奥様に伝えると、甲状腺に転移しているとあっさりと話してくれました。
また、本人は本心では西洋医学的治療を受けたくなかったのに、以前にその病院の理事長を務めていた関係から医師に対する気遣いで受けたとのことでした。
さらに抗がん剤を用いた後の1週間くらいは非常に体力が消耗して悲惨な状態になったことや、コバルト照射をした部位に後々焼けるような痛みがあったことも聞かされました。
奥様はもう助からないことは分かったうえで、できることは何でもして後悔しないようにしたいと考えていることも知りました。
彼自身は玄米スープが飲めたことに一縷の望みを見出していた様子でしたが、奥様にとっては単に民間療法の一つだったようです。

その後、年越しで一時退院されている時にご自宅に見舞った際にも彼はしっかりしていて、ガンを治そうという気持ちもまだあるようでした。

年が明けて再入院されたと人づてに聞いたので再びお見舞いに行きました。

病室の入り口に面会謝絶の札が下がっていましたがノックしてみました。

マスクをした奥様がドアを開けた途端に部屋の中からもの凄い悪臭が臭ってきました。

廊下で奥様から病状を伺ったところ、肺の内部に膿が溜まるので胸に開けた穴から吸い出しているそうで、その膿が何とも言えない嫌な臭いだとのことでした。

程無く彼は亡くなりました。

告別式が済んだ後に彼の息子さんから亡くなる際には安らかに息を引き取ったと聞かされたのがせめてもの救いでした。

私は必ずしも玄米菜食でガンが治るとは考えていません。

ただし環境や生活習慣によって患ったガンなら、信頼できる指導者のもとで玄米菜食を実践すれば治らないまでも上手にガンと共存し、なおかつ死に際して地獄の苦しみを味わうことはないように思っていますし、そのような実例も数多く知っています。

少なくとも西洋医学による定番の治療法で基礎体力を弱らせられたり、最新の治療法の実験台にされるよりはましです。

また、これさえ使えば必ず治る、などという怪しげな民間療法に頼る他力本願よりも、治そうという自身の意思の強さを要求されるという厳しい面もあるほうが自然だと感じます。

現状は、ガンに限らず難病の患者が西洋医学や民間療法、さらに怪しげな治療法まで全て実行してみて身も心もボロボロになってから玄米菜食と出会うことが多いそうです。

ガンや難病で死を告知されると平常心を失うのが普通なのでしょう。

私は、もし難病になったらどのような治療法を用いるか、ということを健康なうちに調べ勉強し検討しておいたら本人だけでなく家族も助かるのに、と考えてしまいます。


前に戻る 目次へ戻る 次を読む