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地方行政に接して (9)

No.90(2002.07.24)


地方の市区町村では、行政側が本来地区の代表である自治公民館長を行政区長に任ずることが多いです。

私は1年間その役を務めた際に、行政側の隠れた思惑に気が付きました。

行政区長という何だか偉そうな肩書にもかかわらず、実際の待遇は臨時職員扱いです。

それでも戸数の多い地区では手当がかなりの金額になることもありますが。

最初に居心地の悪さを感じたのは、課長職を中心に行政側の職員が「区長さん、区長さん」とやたらと持ち上げた時でした。

金融機関の人間特有の慇懃無礼さに通ずるものがあります。

何故そのような態度をとるかというと、行政区長は地区民が行政に対する時の窓口にさせられていたからでした。

逆に行政側から見れば行政区長にクッション、盾のような役割を期待しているのです。

一般の地区民を行政区長より一段下に位置付けることによって行政に対する敷居を高くしておきたいのです。

その結果「何かあったら区長さんに言ってください」となります。

その一方、行政区長に対しては前述のような態度を基本に飲ませたり旅行に行かせたりで懐柔しようとします。

行政側の都合の良いように動かすかわりに大仰な役職名や持ち上げる態度などで見せかけの名誉を演出しているのです。

通常は時間にも経済的にも余裕のある高齢で退職した方がこのような役職を務めるので、名誉を欲することを先読みしているのでしょう。

かつては行政区長を操る側にいた課長職経験者でさえ、定年退職後に地元の行政区長を務める際に満更でもないという表情をしていました。

意識改革が進んでいる地方自治体のなかには、行政連絡員という適正な役職名を使っているところがあることも知りました。

ところで、私が今住んでいる近隣のある市には数社の大企業が進出しており、その豊かな税収のお陰か数年前に立派な庁舎を新築しました。

先日ふとその市の広報誌を目にする機会がありました。

そこに載っていたのは行政区長を10年努めた人を表彰するという記事でした。

正直がっかりしました。

建物だけ新しくしたからといって意識が刷新されるわけではないのです。

地元の自治体に行政区長という仕組が残っているかどうかを調べてみるのも面白いかもしれません。

もしいまだに残っているとしたら、市区町村合併など今後の社会構造変化に取り残される可能性が大きいと考えられます。


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