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地方行政に接して (6)

No.87(2002.06.18)


農村地帯に移住して少し経った頃に、近隣の地区にはまだ伝統芸能が残っていることを知りました。

「○○太鼓」とか「○○踊り」のような名称で呼ばれるものが点在していたのです。

さすが、田舎では都会と違って伝統が現在まで受け継がれているのだと最初は感心したものです。

その後数年過ごすうちにおかしなことに気が付きました。

それらの伝統芸能が披露される場が、必ず行政がらみの行事であることです。

練習もその行事を目標に行なわれているようで、何か変です。

ある日酒の席で知人に、隣りの地区で「○○臼太鼓踊り」の復興に尽力したという人物を紹介されました。

その人の話によると伝統芸能の復興には行政側の後押しがあったそうです。

高度成長期を経て地方自治体の予算にも経済的余裕がでてきてそのような目的にも金が使えるようになったからでしょう。

さっそくその踊りを覚えている高齢者の方達から指導助言を仰いだそうです。

ところが該当する方は少数で、しかも記憶が完全ではなかったのです。

私の推測ではアメリカ合衆国の7年間に渡る戦後占領政策で一度我国の伝統が断ち切られたことが原因でしょう。

その問題に対する対処法を聞いた私は呆れるとともにがっかりしました。

行政から地区に対して伝統芸能専門の振付師の先生を紹介された、と言うのです。

私にとってはそういう商売をしている人がいること自体も驚きですが。

そんなやり方で復興する場合が多いためなのか、県下には似たような名前の伝統芸能がいくつもありました。

都会田舎を問わず、行政が音頭をとる行事に面白いものがあったためしがないことの理由を垣間見た気がしました。


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