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農村で暮らす (22)

No.78(2002.04.02)


私は社人のなかであくまでも太鼓専任と位置付けられていました。

ですから大祭や神楽の後の直会い(なおらえ)で神歌を交代で詠んでいくという経験は何度もしたものの、神事の初めの祝詞(のりと)は一度もあげず仕舞いでした。

太鼓の叩き方はお祭りでもお葬式でも基本的に同じでしたし、太鼓の師匠にあたる方がカセットテープにお手本を録音して貸してくださったので構成を覚えるのは早かったです。

その後に実際のばちさばきの手ほどきを神社の社務所で受けました。

神事の楽(がく)の進行は太鼓が先導して篠笛と手拍子(とびよし)はそれに追従するのです。

よって太鼓を担当する私としては神事が進むなかでどこが楽を切り替える節目になっているのかを把握する必要がありました。

太鼓が間違えると滅茶苦茶になってしまう可能性もあるのでその責任は重大です。

農村地帯は高齢化が著しいためか平均すると月に一度くらいは地区のどこかで葬式がありました。

そのお陰で葬式用の楽は頻繁に叩かせてもらったのでじきに身につきました。

葬式時の楽は短いですし宮司の動作で展開の時期がつかみやすいので割合簡単だということもあります。

しかし、大祭や神楽の際にはお供え物も多いし神事の進行が長く複雑なので初心者のうちはハラハラしながら叩いていました。

ましてそれぞれの神事は年に一度だけなので教えてもらっても一年経つと忘れてしまうことが多いのです。

神事の最中に横で篠笛を吹いている師匠に目配せで合図してもらって事なきを得たこともしばしばでした。

自信をもってこなせるようになってきたのは3年目以降のことだったと思います。

太鼓を叩いているだけだったら気も楽だったのですが、社人になって2度目の神楽からは神楽舞も覚えなければいけないことになってしまいました。

話が違う、とはいまさら言えませんでした。


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