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品切れしない不思議

No.31(2003.04.06)


恐らく高学歴の女性を対象にしているのであろうあるファッション雑誌に載っていた、安心して食べられる食材を特集した記事を以前に読みました。

そこには原料や製法にこだわった各種の食品の紹介が、それぞれの製造元の連絡先や購入方法とともに掲載されていました。

それらのなかに我家から車で1時間ほどの場所にある基本調味料の製造元をみつけ、嬉しくなり是非今度訪ねてみようと思いました。

これが簡単にマスコミを信じてしまった私の判断ミスでした。

後日自然食品の販売をしている友人と会った際に、本に載っていたその製造元を知っているか聞いてみました。

たまたまその友人には以前にその製造元に住み込みで勤めていて、そこの内部事情に詳しい知人がいました。

その人の話によると、親切なことに訪ねて来た人達に製造過程を見せるための見学コースのような施設をその製造元ではわざわざ設けているそうでした。

また近隣の農家と契約して原料作物を無農薬無化学肥料で栽培してもらっていることも事実だそうです。

ところがある晩の深夜にその人は密かに原料が搬入されているところを目撃してしまいました。

不審に思いその件について経営者に質問してからは不当に冷遇されるようになり、最終的には退職に追い込まれたそうです。

その人は今現在自然食とはまったく関係ない業種にいるので同業者間の足の引っ張り合いでないことは確かです。

内情は下記のようなものだったそうです。

その製造元の知名度が上がるにつれ注文が増え続け、契約農家の栽培する原料だけでは足りなくなったため、別の原料も混入させるしかなくなったが、それを外部には(何らかの不都合があるために)公表できなかった。

経営者としての商魂が製造者としての良心を吹き飛ばしたということでしょう。

増え続ける注文に応え続ければ売上はどんどん膨らんでいくわけですから。

そういえば先日世間を騒がせた食肉の産地を偽装表示した事件も、欠品するのが恐かったからというのが犯行に及んだ理由であったことが思い出されます。

皆が自然食に関心をもつようになったらまともな食材の絶対量が不足するから多くの人達が無関心のままでいてくれた方が良い、と早世した親友が生前に皮肉を込めて言っていましたっけ。

こだわってますという看板やマスコミの扱い、知名度、評判などまったくあてにはならないようです。

需要に対する供給に限度がない、品切れ欠品をすることがないような食品は疑ってみなければならない。

考えてみれば当たり前のこんな教訓が寂しく悲しく感じられるほど私の感覚も麻痺していたようです。


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