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あってはならないこと

No.6(2002.05.29)


私が年に数回アメリカ合衆国へ小荷物を航空便で郵送するようになってから10年以上経ちました。

送料の安い船便だと届くまでに数ヶ月かかることもあり、初めの頃に一回試して懲りてしまいました。

航空便で送る方法は何通りかあり、初心者には分かりにくい非常に不親切な料金設定になっています。

しかもその送料は高く、下手をすると送る物の値段より高額になってしまうという笑えない結果になることもあります。

私の場合は毎回送る物が同じなので、何回かの試行錯誤の際に窓口の若い局員さんが助言をしてくれました。

そのお陰もあり一番安く送る方法が分かりました。

小形包装物、という扱いにするのです。

大きさや重さに制限があったり紛失した場合に何の保障もないので料金が安いのです。

割安なその方法で今まで何十回も送ってきて何も問題は起きませんでした。

ところが後にも先にもたった一度だけ荷物が行方不明になってしまったことがありました。

その荷物を送る際に窓口で応対した局員さんはたまたま普段の若者ではなく年配の人でした。

連れ合いが手続きをするのを私は後方で待っていました。

一度記入した書類の書き直しを命じられ、いつもより手間取っている様子でした。

航空便でとだけ言い、小形包装物扱いと指定しなかったための二度手間だったのです。

顔見知りの若い局員さんだったらそれで通じていたのでうっかり言い忘れた連れ合いにも落ち度があることは認めます。

しかし同じ航空便でも何通りもの送り方があることを熟知しているのであれば、そのうちのどれにするのかを逆に問うのが職務上当然の義務であろうと私は考えていました。

何よりもその接客態度のあまりの横柄さに腹が立った私は思わず叱責してしまいました。

筋を通して抗議したので反論できなかったらしく最後には小声で謝罪しました。

その方の年齢からみて、競争相手の宅配便が登場する以前に郵便小包の受付で「ひものかけ方が悪い」などといばっていた時代の経験者かもしれません。

どちらにしろ口では謝っていてもその心中はさにあらずであったことは想像に難くありません。

後日荷物が届いていないことを同局に告げると、調査依頼書の提出を求められました。

書留扱いのように記録に残す作業を省略した無保証扱いゆえの低料金なのですから、そんな調査は形式的で実効性はないと最初から分かっていました。

が、その老局員さんの不正工作ではないかという疑念を強く抱いた私としては何かしないと気がすまなかったのです。

案の定調査したが原因不明だという結果の電話連絡がありました。

電話してきたのは若い局員だったので、これ幸いと発送時の窓口での経緯を話し、それと荷物の行方不明との間に何らかの関係があるのではないかと訊ねてみました。

その時の返答が、今回の表題を含む「そういうことはあってはならないことですから」でした。

責任(追及)から距離をおこうともとれる言い回しは嫌悪感をさらに助長させます。

接客態度が立派で好感をもっていた若者でさえマニュアル通りの対応しかできないことに組織の内情が浮き彫りになっていると感じました。

日本の組織は上から下までその大小にかかわらず不正監視機能が欠けているかあっても不十分だと私は考えます。

密室で何をされても外部からうかがい知ることは不可能です。

その場の感情で知っていたはずの危険を不注意にも冒してしまった私のミスです。

その一件以降は別の郵便局から必ず小形包装物扱いと指定して発送し続けていますが、同時多発テロ以後も問題は皆無です。

証拠はなくてもその老人が限りなく黒に近い灰色だと直感した私は今でもそう思っています。

書留扱いにしない普通郵便物が無事に届くかどうかは運まかせで不確実。

まさか!?この日本では絶対そんな風にならないでしょ。

確かに「あってはならないこと」だと誰もが願うでしょうが、そうならないという保証はどこにもありません。


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