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暴力的ビデオゲームと攻撃的性格

2000年11月,伊地知信二・奈緒美

自閉症児がパターン化してしまう行動内容はなかなか予想することができず,パターン化してしまうと社会適応に支障を来すような行動内容が容易にパターン化してしまい,そのつど状況に合わせた対策が必要になってきます.精神的発達の過程で,暴力的な内容や残酷シーンなどを素直な子供の目に触れないようにすべきことは,健常児も自閉症児も同じですが,特に自閉症児や自閉症的傾向のある子供ではこの原則は十分にかつ長期に守られるべきと考えております.以下に暴力的なビデオゲーム経験が健常学生に与えている影響を検討した研究の結果をご紹介します.


(文献1:Larkinによるランセット誌の記事)
暴力的なビデオゲームで遊ぶことで,子供の攻撃的行動が増加すると,Anderson氏が警告している.この影響は,暴力的なテレビや映画の影響よりもより有害であろうと予想されており,Anderson氏は,「ビデオゲームは双方向的で,子供をとりこにしてしまい,プレイヤーが攻撃的であることを要求することで,有害性が高くなる」と述べている.Anderson氏は2つの研究結果を発表している.一つの研究では,227名の大学生を対象とし,攻撃的な性格特性,最近の非行行動,ビデオゲームで遊んだ時間を調査した.過去においてより暴力的なビデオゲームで遊んだことのある学生ほど,より攻撃的な行動をとるようになっており,大学での成績もより悪くなっていた.2つ目の研究では,210名の大学生を対象とし,コントロール試験として半分は暴力的なビデオゲーム,半分は暴力的でないビデオゲームで遊んでもらった.ビデオゲームの15分後に暴力的なビデオゲームで遊んだ学生は,大声でより長い時間相手を激しく非難した.


(文献2:上記の記事中の研究論文)
攻撃性に関連する個人差(aggression-related variables)への暴力的ビデオゲームの効果を2つの研究で検討した.研究1では,リアルな暴力的なビデオゲーム遊びは,攻撃的行動と非行を増加させることが示された.この関連は元々アグレッシブな男性により強くでていた.ビデオゲーム遊びに費やしたトータルの時間が長いほど,学業成績は悪かった.研究2では,研究室で暴力的ビデオゲームを体験させることが,攻撃的な考えや行動を増加させることが示された.両研究において,男性は女性よりもより外世界に対して敵対心を持ちやすいことが示された.これらの結果は,暴力的ビデオゲームを経験することが短期的(検査時の攻撃性)にも長期的(非行)にも攻撃的な行動を増加させることを予想した「全般的情緒攻撃性モデル」の考え方に一致している.


文献
1. Larkin M. Violent video games increase aggression. Lancet 355: 1525, 2000.
2. Anderson CA, Dill KE. Video games and aggressive thoughts, feelings, and behavior in the laboratory and in life. J Pers Soc Psychol 78: 772-790, 2000.


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