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アメリカでの注意欠陥/多動性障害(ADHD)児
の数とリタリンの消費量の急増について


1997年1月、伊地知信二/奈緒美

昨年(1996年),アメリカのマスメディアが,リタリンの生産量と消費量の急増を報じ,この薬剤の不適当な使用(リタリン乱用)が急増したのではないかという議論が起こりました(文献1).

リタリンは市販名で,日本でもこの名前で販売されており,一般名はmethylphenidateです.うつ病の治療薬としても知られておりますが,注意欠陥/多動性障害(ADHD)の治療薬として頻用され,ADHDと臨床的に重複する部分のある自閉症においても有効性が指摘されており(文献2),アメリカではよく投与されます.寛所長もアメリカでのんでみましたが,その時はかえって多動がひどくなりました.

1990年から1993年の3年間で,リタリンの生産量は2.86倍に増加したという事実と,成人に対する投与で多幸感(euphoria)を誘発する場合があることから,リタリンの覚醒剤的な使用や乱用の増加が心配されましたが,どうやらこれは例外的なケースだったようで,アメリカでのリタリンの生産量は,ADHDと診断された子供の数の増加(同じ3年間で2.48倍の増加)に一致していたのです(文献1).ADHDと診断された子供の70%がリタリンの投与を受けているとのことで,アメリカでは現在なんと20人に一人の児童がADHDと診断されているのです(文献1).

ヨーロッパでのADHDの頻度は200人に一人程度で,アメリカとの差は診断基準の違いやアメリカでの過剰診断の可能性が指摘されています(文献1).しかし,文化的な影響や,教育環境の違いなどもADHDの背景として注目されており(文献3),ADHDの問題は社会的な問題になりつつあります.


文献
1. Bonn D. Methylphenidate: US and European views converging? Lancet 348: 255, 1996.
2. Quintana H, et al. Use of methylphenidate in the treatment of children with autistic disorder. J Autism Dev Disord 25: 283-294, 1995.
3. Anderson JC. Is childhood hyperactivity the product of Western culture? Lancet 348: 73-74, 1996.


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