Sorry, so far only available in Japanese.
PANDAS(3)
(強迫性障害・トウレット障害・溶連菌感染症)


2000年9月,伊地知信二・奈緒美

PANDAS(post-infectious autoimmune neuropsychiatric disorders associated with streptococcal infection)に関連する論文の概訳を下に示します.話がADHDへと展開されており,さらにこんがらがってきた印象を持ちました.
Petersonらの論文(文献1):

(背景)過去の論文は,「チック障害あるいは強迫性障害(obsessive-compulsive disorder:OCD)は,先行する連鎖球菌感染の結果である」という仮説を支持する予備的血清学的証拠を報告している.しかし,以前報告された連鎖球菌感染との関連は単なる合併症であるのかがはっきりとしていない.また,連鎖球菌感染症が,生体内での脳構造(これらの疾患病態に関わる脳部位)の解剖学的変化に関連しているかどうかも結論がでていない.

(方法)慢性チック障害(chronic tic disorder:CTD),強迫性障害(OCD),および注意欠陥多動性障害(ADHD)と診断されている105人を対象とし,抗連鎖球菌抗体価を測定した.また,コントロールとしてこれらの疾患のない37人においても同様に測定した.連鎖球菌感染の既往に関しては区別せずに測定した.対象者のうち113人は,基底核神経核のボリュームを測定した(患者群79人,コントロール群34人).

(結果)DSM-IV基準によるADHDは,2種類の異なる抗連鎖球菌抗体に対して有意な関係を示した(抗streptolysin Oと抗deoxyribonuclase B).これらの関係は,慢性チック障害と強迫性障害の合併による効果を考慮しても有意なままであった.抗体価と慢性チック障害,抗体価と強迫性障害の間には有意な関係はなかった.これらの解析に,基底核神経核ボリュームを含むと,抗体価と基底核神経核ボリュームの間の関係が,他のグループに比較して,強迫性障害とADHDにおいて有意に異なっていた.強迫性障害とADHDにおいては,抗体価が高ければ高いほど,被殻と淡蒼球のボリュームが大きかった.

(結論)これらの結果は,過去に報告された抗連鎖球菌抗体と慢性チック障害または強迫性障害との間の関係は,ADHDをこれらの疾患と同一視してしまった結果であった可能性を示唆する.また,ADHDか強迫性障害を持つ人においては,慢性あるいは再発性の連鎖球菌感染症が基底核神経核の構造的変化と関連している仮説を支持する.


文献
1. Peterson BS, et al. Preliminary findings of antistreptococcal antibody titers and basal ganglia volumes in tic, obsessive-compulsive, and attention-deficit/hyperactivity disorders. Arch Gen Psychiatry 57: 364-372, 2000.


表紙にもどる。


ご意見やご質問のある方はメールください。

E-mail: shinji@po.synapse.ne.jp