Autism, bowel inflammation, and measles

Walker-Smith J. Lancet 359: 705-706, 2002

 

自閉症,腸炎,そして麻疹

 

私は,1998年に報告された回腸リンパ様結節性過形成,非特異的腸炎,そして広汎性発達障害に関する予備的研究におけるラストオーサーである.我々の報告のあとに発表したレターの他には,私はこの件に関するいくつかの論文の共著者となった以外は,何も発言してこなかった.私は,重要な医学的,科学的議論はピアレビューの過程を経た専門誌に発表された論文を基に,専門的なメディアを介してなされるべきと信じる.この件に関する最新のエビデンスはインターネットで発表され,BBCのパノラマプログラムで2002年2月3日に報道された.私は,2000年の9月にRoyal Free病院と医科大学のポストを辞し,その後患者は診ていないが,私の意見が何かの役に立てばと希望する.わたしは,専門誌に発表されたデータは2つのことを示していると信じる.第一は,発達障害を持ち多くは退行現象を伴った自閉症である厳選された症例グループが存在し,彼らが回腸リンパ様結節性過形成と典型的な炎症性腸炎ではない非特異的腸炎で特徴づけられる特異な胃腸異常を持っているということである.この障害の免疫病理学的研究はFurlanoらによって報告され,慢性炎症性腸疾患とは明らかに異なることが示されている.2番目は,そのような厳選されたグループにおいて,Uhlmannらは麻疹が関与している可能性を示す新しい証拠を提出した.彼らは回腸リンパ様過形成,腸炎,発達障害のある91例の中で,75例において麻疹ウイルスゲノムの存在を分子生物学的手法で示した.コントロール70例では5例のみ陽性であった.麻疹ウイルスは主に回腸の反応性濾胞性過形成中心の樹状細胞の中に局在していた.この局在はHIV-1に類似している.Uhlmannらは麻疹ウイルスが発達障害児において既に報告されている特異な炎症に部分的に関与しているかどうかという問題を提示した.この問題に答えるための研究は現在高いプライオリティーがあると言えよう.Wakefieldらの研究に関しては多くの批判があった.彼の結果は誤りでありそれを証明すべきと言われてきた.この批判の大半は疫学的なものである.しかし,MorrisとAldulaimiがダブリンからの報告に関してコメントしているように,「疫学はあまりはっきりしない方法であり,行われた研究はMMRと自閉症/腸炎症状態との関連が存在するリスクグループの可能性を除外していない」のである.私にとっては,疫学が示したことは,MMRワクチンが多くの子供にとっては安全であるということだけのように思える.Furlanoらの自閉症における炎症性変化と腸の研究は医学研究会議の2001年のレポートにおいてレビューされた.いくつかの批判はあったが否定されなかったのは確かである.逸話的であるが,現在私がみるところでは,MMRが自閉症と腸疾患のトリッガ−的役割をはたす可能性について,自閉症児の多くの親たちが重大な懸念を持っている.この懸念はテレビを通じてより多くの視聴者に広がった.この件は最初の論文に関する議論と,後に続く研究発表によって言及されるべき問題と信じる.小児科医として,私は麻疹の危険性はよく知っている.麻疹流行がアフリカの子供たちを蹂躙した現状を私は見,また医学歴史家の一人として,イギリスにおける麻疹が原因となった大量死に関してもよく知っている.パノラマプログラムにおいてS Murch氏は,麻疹予防接種率に影響するような研究に携わることは小児科医にとってはいかに気まずいことであるかを述べた.私はこの見解に賛成であるが,私はまたRoyal Free病院で1995年から2000年の間に毎週診察した子供たちにおける自閉症の重症度にもショックを受けた.また,私はこのような子供たちの親の考えにも耳を傾けた.私は,MMRワクチン接種を支持することには変わりはない.MMR支持は,最初からこの研究においてRoyal Free病院の小児科医全てがもっていたものである.私の3人の孫は,MMRワクチンの接種を受けた.昨今の麻疹感染症の流行には懸念をいだいているが,MMR接種を自閉症のオンセットに関連づけて考えている親の真の懸念を解決し,そのような障害のリスクをもつ大変小さなかつ重要な症例群を決定する因子が存在するのかどうかを同定するための,さらなる研究が大至急行われる必要あると考える.私は,ワクチン製造会社に対する現在の法的動きに関与する対立関係を伴ったアプローチが子供たちに悪影響を及ぼしていると信じる.またこの対立関係は健康省の何人かの担当者によってAndrew Wakefield氏らをも巻き込んでいる.この姿勢は,パノラマプログラム(テレビ番組)でのDavid Salisburyが,Wakefield氏の研究を軽蔑したあざけりのコメントを述べたことに象徴される.研究計画はこのような子供たちの腸に焦点をしぼった,非疫学的研究を含んでいなければならない.全体としての疑問は今後もそう関単には解明されず,親の心労の大きな原因となっていることは自明のことである.最初の観察結果が拡大研究され,追加のエビデンスと共に示されたのであるが,この問題の解決は遠いように思われる.最近報告された研究は,麻疹ウイルスが役割を担っている可能性に関するエビデンスを供給した.この研究の重要性は至急確認され精査される必要がある.