No evidence for a new variant of measles-mumps-rubella-induced autism

Fombonne E, et al. Pediatrics 108, e58, 2001

新型MMR誘発自閉症の存在を示すエビデンスはない

 

(目的)MMRワクチンとあるタイプの自閉症との間の関連が提唱された.その自閉症のタイプとは,ワクチン接種後直後に起こる発達退行現象と消化管症候の組み合わせを伴ったものである.この仮説は,3つの異なる主張を含んでいる.1) 退行現象と消化管症候を呈する自閉症の新しい表現型が存在する.2) その新変異型自閉症は,言われている自閉症頻度の増加の原因である.3) この表現型は,麻疹の持続性感染を示唆する生物学的所見に関連している.これらの主張の内,一番目の主張を我々は検証する.もしこの新しい「自閉症性腸炎:autistic enterocolitis」症候群に何らかの妥当性があるのであれば,次に挙げる6つの予想のうち一つあるいはいくつかが経験的データにより支持されるはずである.1) 小児崩壊性障害の頻度が多くなる.2) MMRワクチン接種を受けた自閉症児について,最初に親がおかしいなと思った時の児の年齢の平均が,MMRワクチン接種を受けていない児の場合よりも,平均接種年齢により近い.3) 自閉症児の発達における退行が,MMRワクチン接種を受けた児においてより一般的にみられる.4) 退行現象を伴う自閉症児の症候オンセット年齢が,MMR接種時期の周辺に集まり,退行現象を伴わない自閉症児の場合とは異なる.5) 退行現象を伴う自閉症児は症候プロフィールや重症度が異なる.6) 退行現象を伴う自閉症児は消化管症状があることに関連しているか(and/or)炎症性腸疾患に関連している.

(方法)3つのサンプルを検討した.1992年から1995年の間に生まれ,最近のイギリスでの調査で報告されたように広汎性発達障害の診断を受けたことのある(MMR後サンプル)96人(95人は中央値で13.5ヶ月時にMMR接種を受けている)の小児に関する疫学的なデータを,それより以前の2つのサンプルグループと比較した.以前のサンプルグループは,98例のMMR未接種群と68例のMMR後群である.全ての対象者は,標準化されたADIにより評価され,親が最初に懸念を抱いた時期や,サンプル間の退行現象の率の厳密な比較が可能である.ADIスコア,親の懸念時期,発達退行現象の有無に関するデータの信頼度は非常に高い.さらに,腸の症候や腸疾患に関するデータも小児科の情報と親からの情報の両方から疫学調査より得ることができ,予防接種情報はコンピューター化された記録から得ることができた.

(結果)小児崩壊性障害の有病率は1万人あたり0.6人で95%信頼区間は1万人あたり0.02-3.6人であった.このように非常に低い率は,以前の推計値に一致しており,MMRワクチンの接種を受けた児のサンプルにおいて広汎性発達障害に属する小児崩壊性障害の頻度が増加していることは示唆されない.親の最初の懸念時期については平均値で,MMR後サンプルで19.3ヶ月と19.2ヶ月(最近のサンプルと過去のサンプル),MMR未接種群で19.5ヶ月であり有意な差は見られなかった.従って,MMR接種は親の最初の懸念の時期を早くすることには関連していない.同様に,MMR後サンプルにおいて報告された発達退行現象の率は15.6%で,MMR未接種群の18.4%と比べて差がなかった.ゆえに,自閉症の発達経過における退行現象の頻度がMMR導入が原因で増加した可能性は示唆されなかった.疫学的サンプルにおいて,退行現象を伴う自閉症サブセットは,他の発達的特徴や臨床的特徴を有しておらず,特異的な病因的に異なる表現型らしくはない.退行現象を伴う自閉症児の親は,最初の症候を19.8ヶ月で気づいており,退行現象のない自閉症児の親の19.3ヶ月と非常に近似している.さらに,MMR接種から親の自閉症徴候の認識時期の間のインターバルの平均値は,退行現象の有無に関係なく似たような結果であった(248日対272日,有意差なし).疫学的データにおいては,消化管症候は18.8%の児において報告されていた.便秘が最も多く,9.4%で,炎症性腸疾患はなかった.さらに,発達退行現象と消化管症候の間には関連はみられなかった.両方を経験していたのは2.1%のケースに過ぎず,有意な増加はなかった.

(結論)MMRが誘導した自閉症あるいは「自閉症性腸炎:autistic encephalitis」に特有な症候が存在することを示唆する証拠はなかった.これらの結果は,MMRと自閉症の関連をポピュレーションレベルで支持することに失敗している全ての大規模な疫学的研究の最近の集積と同じ方向の結果である.合わせて考えると,最近の所見からは現行の予防接種プログラムと(予防接種の)推奨を変更すべきという見解には賛成できない.