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自閉症の集学的評価とフォローアップを
(オーストラリア)


Tonge BJ: Autism: time for a national approach to early assessment and management: a concerted multidisciplinary and national effort is needed for the early detection, assessment and management of children who may have autism. Med J Aust 165: 244-245, 1996.

(概訳)自閉症は集学的に(多分野にわたって)評価すべきである。自閉症者の障害は、情緒的なコミュニケーションの問題、こだわりや常同的動作/行動による問題、社会性の問題、医学的な問題、そして学習障害など非常に多岐にわたる。この原因として、次のようなものが考えられる。
自閉症自体が、スペクトラムとして認識すべき病態である(アスペルガー症候群をはじめ、自閉症のそれぞれの特徴には境界線のひけないひろがりがある)
神経生物学的病因は単一でない(遺伝素因、左大脳半球の異常、側頭葉の異常、小脳/辺縁系の異常などが報告されたが全ての症例に共通するものではない。また、自閉症に関連する病態として先天性風疹、結節性硬化症、脳外傷、多彩な遺伝性/代謝性疾患、癲癇など多くのものが報告されているが、これらの病態を持つ者のほとんどは自閉症ではない:直接的な因果関係はない)
自閉症の基本的障害が、認知(cognition)における根本的な部分に及んでいるため、派生するあるいは相互に影響を受ける二次的障害が、社会的認知、言語、相手の考えを把握する能力(theory of mind)、自己における感情の認知など非常に複雑である
合併あるいは派生する病態は、チック(Tourette's症候群)、情緒障害、神経症、集中力障害、多動など多彩である
療育を最も効果的に行い、個々の自閉症児の社会適応の到達点を最高のものにするためには、これらの複雑な問題点が全て把握されていることが不可欠である。従って、自閉症児の評価は、集学的(多分野での)検討を必要としており、以下のような点を網羅していなければならない。
精神科的評価・診断
行動観察
学習障害の有無
小児科的・神経学的診察(遺伝疾患の有無、代謝疾患の有無、脳波、CT、MRIなどを含む)
聴力検査、言語能力評価など

オーストラリアとスエーデンでの、最近の検討によると、一万人の子供の中に9〜10人の自閉症児がいることが明らかになっており、自閉症に関する集学的なアプローチは、自閉症の早期発見/早期療育のために、全国的に行うことが望ましい。オーストラリアでは、ビクトリアと南オーストラリアで、このような試みが既に始まっており、自閉症の集学的評価とフォローアップのために、多分野にわたる専門家のチームが継続的な活動を行っている。これにより、自閉症者がどこに居ても(普通学校/養護学校/職場)効率的にその社会適応を促進することができる。しかし、アスペルガー症候群の若年者のいる家庭への援助や、デイケア施設なども、今後の検討課題であり、成人した自閉症者への福祉サービスもほとんどなされていないのが現状である。


(解説)日本の場合で考えてみますと、自閉症児の効果的療育のための診察は、(小児)精神科医・小児科医・小児心理学者・言語療法士・耳鼻科医・神経内科/脳外科医・教師がチームを組んで行うべきという主張です。加えて、年長者あるいは成人の自閉症者への福祉サービスの欠如を指摘しており、指摘してくれる人がいるだけ日本よりましと言えるでしょう。日本では、未だに、援助を必要とする成人の自閉症者の一部が、分裂病とカルテに記載されて精神病院に入院している可能性を完全には否定することができない現状です。


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