1 | 自閉症自体が、スペクトラムとして認識すべき病態である(アスペルガー症候群をはじめ、自閉症のそれぞれの特徴には境界線のひけないひろがりがある) |
2 | 神経生物学的病因は単一でない(遺伝素因、左大脳半球の異常、側頭葉の異常、小脳/辺縁系の異常などが報告されたが全ての症例に共通するものではない。また、自閉症に関連する病態として先天性風疹、結節性硬化症、脳外傷、多彩な遺伝性/代謝性疾患、癲癇など多くのものが報告されているが、これらの病態を持つ者のほとんどは自閉症ではない:直接的な因果関係はない) |
3 | 自閉症の基本的障害が、認知(cognition)における根本的な部分に及んでいるため、派生するあるいは相互に影響を受ける二次的障害が、社会的認知、言語、相手の考えを把握する能力(theory of mind)、自己における感情の認知など非常に複雑である |
4 | 合併あるいは派生する病態は、チック(Tourette's症候群)、情緒障害、神経症、集中力障害、多動など多彩である |
療育を最も効果的に行い、個々の自閉症児の社会適応の到達点を最高のものにするためには、これらの複雑な問題点が全て把握されていることが不可欠である。従って、自閉症児の評価は、集学的(多分野での)検討を必要としており、以下のような点を網羅していなければならない。
オーストラリアとスエーデンでの、最近の検討によると、一万人の子供の中に9〜10人の自閉症児がいることが明らかになっており、自閉症に関する集学的なアプローチは、自閉症の早期発見/早期療育のために、全国的に行うことが望ましい。オーストラリアでは、ビクトリアと南オーストラリアで、このような試みが既に始まっており、自閉症の集学的評価とフォローアップのために、多分野にわたる専門家のチームが継続的な活動を行っている。これにより、自閉症者がどこに居ても(普通学校/養護学校/職場)効率的にその社会適応を促進することができる。しかし、アスペルガー症候群の若年者のいる家庭への援助や、デイケア施設なども、今後の検討課題であり、成人した自閉症者への福祉サービスもほとんどなされていないのが現状である。