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消化管の炎症と注意欠陥/多動性障害(ADHD)

Sabra A, et al. Ileal-lymphoid-nodular hyperplasia, non-specific colitis, and pervasive developmental disorder in children. Lancet 352: 234-235, 1998.
(概訳)Wakefieldらは,消化器疾患と発達障害との関係を報告し(文献),免疫学的機序が介在する可能性を示唆し話題を投げかけた.自閉症関連疾患と回腸リンパ様結節性過形成および非特異的腸炎の関連を考察したこの報告は,自閉症における腸の解剖学的/組織学的変化の存在をも示唆している.外来分子に対する腸管透過性の亢進が原因である可能性が述べられているが,消化管変化に関しては何の説明も提示されていない.Wakefieldらの報告を支持することとして,偏頭痛や幼児疝痛,消化管に関連したてんかん,アレルギー性緊張-疲労症候群,そして注意欠陥/多動性障害(ADHD)が食物アレルギーに関連して報告されている.このような病態では,IgEを介した食物アレルギーだけでなく,他のメカニズムの存在も考えられる.我々は,皮膚や肺や消化管を標的器官とする組織障害の原因として,食物アレルギーと腸管に関連する免疫学的機序を研究してきた.非IgE性の食物アレルギーがあり,喘息,アトピー性皮膚炎,ADHDを呈する患者たち(注:人数が記載されていない)は,著明な回腸リンパ様結節性過形成を有している.また,我々はこのような患者の2名で,いろいろな食物にアレルギーがあり回腸末端においてWakefieldらが報告したものに類似した腫大したリンパ様結節を証明した.我々の研究では,回腸リンパ様結節性過形成は,非IgE性食物アレルギーの患者におけるパイエル板(回腸末端のリンパ組織を指す)近隣のリンパ組織における反応性炎症の結果として,腸の炎症粘膜を抗原が透過し易くなっている特徴的病変として位置ずけられる.Wakefieldらの症例も,おそらく同じ病態であろう.WakefieldらはMMRワクチンとの関連を未確認のまま示唆したため,多くの議論を誘発したが,回腸リンパ様結節性過形成が特異な病態(他の組織への免疫学的組織障害)の徴候である可能性が強調されるべきである.


(解説)これもWakefieldらの報告(文献)と同様,単なる症例報告です.Wakefieldらの報告がきっかけとなった議論については,話題のコーナーを中心にいくつかの記事を既に掲載しました.話題がADHDに飛び火したというか,広がった訳ですが,このような機序が,決定的かつ普遍的な病因であることはないと考えます.


文献
Wakefield AJ, et al. Ileal-lymphoid-nodular hyperplasia, non-specific colitis, and pervasive developmental disorder in children. Lancet 351: 637-641, 1998.


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