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受精卵凍結の児への影響

Wennerholm U-B, et al. Postnatal growth and health in children born after cryopreservation as embryos. Lancet 351: 1085-1090, 1998.
(概訳)体外受精後培養した受精卵を凍結保存し,着床しやすい時期に解凍して着床させる方法が,不妊治療として行われている.この場合,妊娠・出産が成功しても,児の出生後の健康状態に関しては不明な部分が多く,児の発達障害が出現しやすくなるのではという議論が存在する.凍結保存処置を行った受精卵による体外受精法での出生児(255人)と,凍結保存処置を行っていない新鮮な受精卵による体外受精法での出生児(255人),および正常妊娠による出生児(252人)の三者の成長と健康状態を生後18ヶ月まで比較した.身長,体重,頭の大きさに加え,慢性疾患(染色体異常,神経疾患,成長障害,眼疾患,アトピー性疾患,慢性中耳炎,セリアック病,乳糖不耐症,吸収障害,腎疾患など)の有無,一般疾患(上気道炎,気管支炎,蕁麻疹,急性中耳炎,尿路感染症,疝痛,熱性痙攣,心雑音,整形外科的疾患,ヘルニア)の頻度を検討した.主な奇形についても検討した.凍結保存処理による児への有意な悪影響は見いだせなかった.行動障害や学習障害や注意/認知障害などに関する軽症のハンディキャップについては,今回の検討(生後18ヶ月まで)では否定することはできない.


(解説)過去の報告で,受精卵凍結保存処理と児の低精神年齢や低学習能力/低言語能力との関連が健常者との比較で報告されています(文献1).今回ご紹介したこの論文では,凍結保存処理をした体外受精児の中に,ダウン症が2人,レット症候群が1人いたとのことですが,統計的な有意差はなかったとのことです.1歳半までの検討だから自閉症を含む発達障害については不明ということのようですが,この研究グループの次に出す論文が受精卵凍結保存処理と発達障害の関連についてもある程度の結論を出してくれると思われます(おそらく関係はなさそうです).


(文献)
1. Sutcliffe AG, et al. Outcome in children from cryopreserved embryos. Arch Dis Child 72: 290-293, 1995.

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