ADHDのQTLアプローチ(ドーパミン受容体)

Curran S, et al. QTL association analysis of the DRD4 exon 3 VNTR polymorphism in a population sample of children screened with a parent rating scale for ADHD symptoms. Am J Med Genet 105: 387-393, 2001.

訳者コメント:発達障害の背景としてのQTLの重要性は,最近特に注目されておりますが,ADHDに関するQTL解析の報告は少なく,貴重な報告です.つまりADHDを,健常者と連続する分布の中の極端例として捉える立場で,自閉症やADHDに関する私どもの立場と同じです.DNAのサンプリングは口腔ぬぐい液で,自宅で採取してもらって郵送で送ってもらうという方法で集めており,自閉症児でも行える方法です.

(概訳)

分子遺伝学における最近の進歩は,複雑な人の発現形質に影響する遺伝的多型の同定を目的とした研究を加速してきた.特に注目されている表現形質として,行動特質としての多動と多動を症候のひとつとするADHDがある.この領域における分子遺伝研究の背景としての原動力は,量的遺伝学研究からの圧倒的な証拠である.量的遺伝学研究は,ADHDがカテゴリー的概念として把握されるか,連続した特質として把握されるかにかかわらず,ADHDの診断で特徴づけられる行動の遺伝性は高いことを示している.これまでのところ,分子レベルの研究は診断基準により定義されたADHDの易罹患性遺伝子を同定することを目的として行われ,ドーパミン神経伝達を制御する遺伝子のバリエーションに注目が集まっている.いくつかの研究はドーパミンD4受容体遺伝子(DRD4)の第3エクソンにおける48bpの反復多型の7回反復対立遺伝子(DRD4-7)とADHDが関連していることを示唆している.ここでは,ADHDを量的形質としてとらえ(dimensional perspective),一般のポピュレーションから選別した子供達をサンプルとしてドーパミンD4受容体多型との関連が検討された.親が評価したSDQ(強度・困難度質問紙)の中の5つのADHDアイテムのスコアが高いグループと低いグループが選別された.結果はスコアが高いこととDRD4-7との間に有意な相関が発見された(P=0.008).

イントロ:ADHDは学童の2-5%にみられ,過剰な活動性,注意力障害,そして衝動性が持続する行動パターンとして臨床的に定義される.これらの症候は社会的な状況において広範にみられ,かなりの社会性障害と併存する.カテゴリー的に診断されたADHDの長期予後は良くなく,社会的な孤立や青年期・成人における持続的精神病理のリスクが増加しており,60%のケースに及ぶ.しかし,このような行動多型を質的形質として捉える方法(dimensional methods)がより大きな予想的妥当性を持つことが判明するであろうことを示唆するいくつかの証拠がある.性差は臨床サンプルにおいてはおそらく過剰評価されているが,より複雑な差異が存在している.疫学的サンプルにおいては,男女比はおおよそ3:1で,一方臨床サンプルでは男女比は5-9:1と結果がばらける.これはおそらく紹介によるバイアスや,行為障害や攻撃性などの他の客観性障害との合併を反映しているのであろう.

遺伝の影響と環境の影響の相対的重要性を検討できる双生児研究は,そろって小児期においてはADHDは最も遺伝性が高い行動の中に含まれることを示している.二者択一的にカテゴリーとしての障害として評価しても連続する分布として評価しても,同様にその遺伝性は70%から90%と報告されている.ADHDは診断カテゴリーを定義するための基準を使って診断されるが,活動性や集中力の測定値は一般ポピュレーションにおいては連続的に分布しており,多くの研究が多動性の量的計測値とカテゴリーによる診断の間に高い一致性があることを発見している.これらの研究では,ADHD児と非ADHD児は明らかに属性が異なるものとして分離できず,ADHDは連続した分布の中のひとつの極端例である可能性が示唆されている.事実,双生児研究は一般に多動性に関する連続性レーティングスケールを使用しており,診断的カテゴリーが必要な時には臨床的カットオフ値を設定して診断が行われる.カットオフ値がどこに設定されるかにかかわらず,また診断基準が使われるか連続性基準が使われるかにかかわらず,これらの研究結果は全て遺伝性が高いことを示している.さらに,そのような研究に応用されている数学的モデルは,ADHDが全体の一般ポピュレーションの中に遺伝的にばらけている行動の極端例であるとする仮説を支持している.総合すれば,これらの所見は,多動を連続分布として考えることは量的形質遺伝子座群(QTLs)を同定するためには妥当なアプローチであり,臨床的に定義されるサブタイプを研究するための強力な補足的戦略を提供するはずであることを強く示唆している.

ADHDの遺伝素因が重要であることは,質問紙法に基づく双生児研究に由来するが,これまでのところ分子遺伝研究はカテゴリー基準で診断されたADHDを中心に行われてきた.我々が知るかぎりでは,症例の収集や選択がQTLを考えて行われた報告はこれまでにはない.QTL法は統計的に強力なアプローチ法であり,それによって連続分布する形質の背景にQTLsとして知られている複数の別個の染色体部位が存在することが遺伝子地図上に示されるかもしれない.これは,遺伝子マーカーとある形質の相対量の間の関連を検討することによって明らかになる.このアプローチは最初は植物や動物の量的表現形質の研究のために開発され,その後人における連続分布形質に応用されている.アルコール消費量や学習などのような行動上の表現形質と同様に,高血圧や糖尿病,肥満,そして動脈硬化などに寄与する遺伝子座の部位が最近げっ歯類で同定されている.Moisanらはラットの多動スコアについての主なQTLが第8染色体上にあることを報告している.人においては肥満の複雑な形質の遺伝子をマウスモデルと人の間の遺伝子の相応性から検討されており,また2型糖尿病や高血圧においてはQTL連鎖スキャン研究が有望な結果を報告している.QTLテクニックの応用は読書能力や知能を研究するために使われ,表現形質の量的表価値が応用されているADHDのうような状態においても有意義であるように思われる.

従って我々は,DRD4エクソン3におけるタンデム反復多型の反復回数7回(DRD4-7)とADHDと診断されたケースとの間に報告されている関連が,疫学的サンプルにおけるQTLアプローチでも再現できるのかどうかを確認するために本研究を設定した.ADHDや多動のドーパミン仮説には歴史があり,最初は動物と人における神経化学研究に基づいており,2番目にADHD症候がメチルフェニデートのような刺激剤により劇的に改善することがその背景である.メチルフェニデートの主な作用機序はドーパミンを介しており,特異的な作用部位については結論がでていない.ゆえにいくつかの独立した研究グループが報告した遺伝子研究がドーパミンシステムの遺伝子との関連や連鎖の証拠を提供していることは非常に興味深いことである.これらの報告には,D4受容体遺伝子(DRD4),D5受容体遺伝子(DRD5),ドーパミントランスポーター遺伝子(DAT1)などがあり,これらの候補遺伝子は診断基準により選別されたADHDサンプルにおいて示されたのである.これまでのところ,これらの報告の中で最も有望なのは,ADHDとDRD4-7の関連であり,9つの研究結果がこの関連の証拠を提供している.一方,4つの研究はこの関連を否定している.報告されたデータと報告されていないデータの両方に関する最近のメタ解析の結果は,7つのケースコントロール研究からオッズ比1.9(95%信頼区間は1.4−2.2,P=0.00000008),14個の家族を基盤とした研究からはオッズ比1.4(95%信頼区間は1.1−1.6,P=0.02)が得られ,かなりのしかしまあまあの結果と言えよう.DRD4多型の機能的意義は依然として結論がでていない.7回反復型が機能的バリアントと連鎖不均衡にある可能性も残っており,この連鎖不均衡が関連研究に影響して関連結果の矛盾の原因になっているかもしれない.機能的なプロモーター遺伝子の多型で所見を説明できる可能性も示唆されているが,DRD4-7との連鎖や関連が示されたサンプルではプロモーター部の多型についてはネガティブ結果であるので,おそらくプロモーター部の機能性では説明できないであろう.

対象と方法

サンプル収集
本研究においては,南イングランドに住む5歳から15歳の疫学的サンプル(一般の子供たち)を,pSDQ(強度・困難度質問紙の親用)を使って検討した.いくつかの根拠があって,最初の評価法としてSDQが選ばれた.SDQは短い30アイテムの質問で,郵便で簡単に親に送付できる.SDQは現在いくつかの疫学的サーベイに使われており,精神科的診断に対して予想および識別妥当性が良好であり,またRutterとAchenbachのスクリーニング質問紙法との一致妥当性も良好である.さらに親が判定した多動に関するSDQスコアは,遺伝性が高いことが知られている.親が判定したSDQは,ICD-10による多動障害(hyperkinetic disorder)のいずれかを予測する感度は5−10歳で33.3%,11−15歳で45%.DSM-IVのADHD障害のいずれかを予測する感度は5−10歳で29.9%,11−15歳で41%であった.親が判定した質問紙法と教師が判定した質問紙法を組み合わせると,診断の予想感度はかなり高くなり,75%から85%となる(教師が判定した質問紙法での感度は,親が判定したものより少し高い).

本研究のためにSGDP研究センターで行われた他の関係のない研究に参加した親に連絡して,対象児が集められた.いかなる表現型に関しても無作為の成人データベースは,医学研究会議が研究費を出した臨床医研究機構といっしょになった共同研究プロジェクトを通し構築された.このポピュレーションの人種は,Caucasianが95%であった.子供がいる成人に連絡をとり,本研究に参加できるかどうかの了解を得た.このデータベースを通して,12,000例の成人が同定され,本研究に参加できるかどうかを聞き,参加できる場合は5歳から15歳の子供のそれぞれに関するpSDQsに全て答えてくれるかどうかの了解を得た.反応率は30%で,反応者の33%が本研究に参加してくれた.トータルで3,097例分のpSDQsが回収された.

サンプル選択
複雑な疾患における遺伝子の連鎖や関連を検出するための妥当な統計学的パワー(感度)を得ることは困難であることがある.遺伝子型タイピングのような制限に配慮し,いくつかのQTL研究に採用されてきた感度増強戦略のひとつに,表現形質上極端な例を選択的にサンプリングする方法がある.しかし,ある与えられたポピュレーションサイズにおいては,至適選択基準は可能性のある遺伝モデルに言及し,大きなサンプルサイズに必要なものと極端例選択の効果の帳尻を合わせなければならない.さらに,Allisonらのシミュレーションによると,他の事情が同じならば,より極端例を選べば選ぶほどより大きな統計学的パワーが得られるとする仮説は必ずしも正しくはない.細かいデータは省略するが,シミュレーションを使い,巾を想定した考えられる遺伝モデルに基づくQTL関連研究の至適選択基準を検討した.その結果,分布の両サイドの20%から27%を極端例とするのが最も適当であった.

本研究では,DNA検査とさらなる表現形質測定のために優先する選択症例を決めるために,pSDQの5つのADHDアイテムから算出した0点から10点の分布から閾値を設定した.高スコア極端例は7点以上の対象者で,低スコア極端例は0点か1点のケースとした.教師が評価したSDQは,この方法で選別された両極端例において集められ,DNA抽出サンプルとしては口腔ぬぐい液が採取された.

pSDQの結果は3097人分集められ,その分布形態は,10300人の結果(イギリス,同年齢分布)と一致した.10点満点のうち7点以上のケースで17%,1点以下のケースが31%となる.合計,DNAは224人から採取され遺伝子型を検討した(高スコア例が133人,低スコア例が91人).高スコア例では,男女比は2:1で男児がかなり多くなっている.対照的に低スコア例では男女比は2:3と逆転していた.

DNA収集とDRD4第3エクソンのVNTR多型の増幅
DNAは(口腔ぬぐい)綿棒を2.5mlの保存緩衝液の入った15ml試験管2本に入れて郵送してもらって集めた.この方法で一人あたり120マイクログラムのDNAが採取できた.

第3エクソンのVNTR多型は,多型部の両側にプライマーを設定して,PCRを行い,アガロースゲル上に泳動展開してバンド数を確認した.バンドが見られない場合はPCRを繰り返した.それぞれの検体は2回PCRし,2回の結果が異なる場合はもう一度2回検査した.

pSDQデータとの関連解析
DRD4遺伝子座頻度は,高スコア例と低スコア例でそれぞれ検討し比較した(表1).

表1 DRD4対立遺伝子頻度
  2回反復 3回反復 4回反復 5回反復 7回反復 8回反復
高スコアグループ 16(16%) 8(3.0%) 170(63.9%) 1(0.4%) 70(26.3%) 1(0.4%)
低スコアグループ 18(9.9%) 8(4.4%) 124(68.1%) 2(1.1%) 26(14.3%) 4(2.2%)

両グループを比較すると,かい二乗検定で危険率0.013の有意差があった.それから,以前の研究により示唆されている7回反復型が関連しているという仮説を検証するために,7回反復以外の対立遺伝子の頻度をひとつにまとめて検定した.その結果危険率0.003で有意であった.7回反復型の頻度とそれ以外の頻度は,Hardy-Weinbergの均衡状態にあることが判明した.

さらなる解析は,SPSSにおける単純一次回帰を使って行われた.これは7回反復対立遺伝子の存在を独立した変数とみなし,pSDQスコアを依存変数として扱いこれもまた有意差がでた(P=0.008).混同する変数として性を調整すると危険率は0.009となり,女性であることは標準化係数で−0.262とわずかに陰性の影響を持つことが示された.段階的複数回帰において全ての対立遺伝子を使うと,有意となる唯一の手段は,7回反復型単独での計算のみであった.

我々は,全データ(3000)におけるpSDQスコアと7回反復型との相関を計算するために最大尤度法を使った.この方法はpSDQでの選別による計測値における変数差を考慮する相関のより正確な計算を可能にする.相関係数は0.13で,DRD4-7との関連により説明されるpSDQにおける変数(rの二乗)は2%ということになる.

親が評価したSDQデータと教師が評価したSDQデータの関連解析
最大尤度法を再び用い,pSDQとtSDQでのADHDスコアの相関を計算した(r=0.48).pSDQとtSDQは,遺伝子型をタイピングした226人中143例で得ることができた.pSDQスコアの分散は,tSDQスコアの分散からそれほど大きく異ならず,ゆえに両スコアに同じウエイトが置かれた.

tSDQについては厳密には設定せずに,pSDQのADHDスケールが7点以上でtSDQのADHDスケールが4点以上のケースをいつでも高いグループとし,pSDQが1以下で,tSDQが4未満のケースをいつでも低いグループとする.いつでも高いグループには51例が含まれ,いつでも低いグループには57例が含まれる.DRD4の7回反復型との関連は有意なレベルには達しなかったが,予想される方向に傾向があった(P=0.1).

考察

ADHDの遺伝素因は重要であるとする行動遺伝学の分野からの証拠に一致して,ADHDの易罹患性遺伝子を同定しようという試みは現在国際的に注目されている.これまでのところ,分子生物学的研究は,ADHDの臨床サンプルに注目しているが,ADHDが連続分布的側面を持つことを示唆するかなりの支持がある.この連続分布的見方はADHDを連続的に分布している形質の極端例としてみなし,ゆえに強力な方法である量的形質法を適応することの根拠となる.本研究では,DRD4-7と臨床的ADHD症例との間に報告された関連に再現性があることを示すことで,QTLアプローチの合理性をさらに示すこととなった.つまり本研究では,選別されていない一般のポピュレーションから,ADHDスコアが高い(高い方の17%)か低いか(低い方の31%)でサンプルを選びDRD4-7との関連を検討したのである.この選別法は,統計的シミュレーションにより感度(パワー)が最大になると予想された方法である.

本研究の主な制限は,まず,陽性所見の原因としてのポピュレーション階層化(サンプリングバイアス)を除外しにくいことである.遺伝子型の結果はHardy-Weinberg平衡に一致したが,最近のポピュレーション混合の可能性は体系的に除去できない.2番目に,サンプルは親が評価したSDQスケールを基に選別しており,この方法では臨床的ADHD診断とは中等度にしか相関しない.したがって,この所見の有意性が臨床的なADHDにも当てはまるかどうかの結論はでていないわけである.しかし,親が評価したスケールと教師が評価したスケールを合わせると,臨床的ADHDの診断との相関度が上がる.従って,親と教師の評価スケールを合わせた検討では危険率は0.1に過ぎなかったが,親と教師の評価スケールを合わせた検討の結果が親の評価のデータと同じ傾向であったことは注目に値する.これらの所見と,ADHDの臨床サンプルで繰り返し示されているDRD4-7との関連は,我々のQTLアプローチが臨床的に関連する所見を検出するための能力を持っているという考えを支持する.

ADHDへのQTLアプローチは期待できるものであるが,最初に懸念すべき問題点がいくつか存在する.表現形質としての計測は依然として議論点であり,高血圧のQTLsを研究するための血圧測定と同じと言うわけにはいかない.行動遺伝学の研究結果は,かなりのバリエーションが情報源(親,教師,本人)に由来して存在し,評価法のタイプや数に由来することが示されており,これら全てに中等度の相関が見られる.

2つの最近の双生児研究は,問題点に関する重要な例である.Thaparらは,Du Paulスケール(親)で評価するよりもRutterスケール(親)で評価する方が,ADHDを連続性の形質とみなした時の遺伝性がかなり高くでることを発見した(Du Paulスケールで0.47,Rutterスケールで0.84).これらの結果は別のもうひとつの双生児研究(Martin)とは対照的であり,Martinの結果ではSDQスケールのADHDアイテム(親)で算出した遺伝性が0.58,短Connersスケール(親)で評価した場合が0.78であった.本研究では,親が評価したSDQとConnersレーティングの2変数解析は,この二つのレーティングスケールの間に遺伝素因の大きな共有部(50%)を示し,SDQスケールの遺伝的多様性の全てがこれに含まれていたが,Connersスケールではさらに24%が検出された.同じ結果が教師が評価した場合でも(両スケールで)みられ,このことはADHDにとって,より多くのアイテムを含んでいるスケールは遺伝的多様性をよりよく反映することを示唆している.両方の研究より,より長いDu PaulスケールとConnersスケールのコントラスト効果が減っているかあるいはコントラスト効果がないことを示していることが明らかである.Thaparらは,公式にはこれを検証し,Rutterスケールを使った時の評価者のコントラスト効果を示しているが,Du Paulスケールではこれは示されていない.

行動遺伝研究において臨床インタビューではなく,質問紙法のレーティングスケールを使うことは,さらにバリエーションを増やしてしまうかもしれない.質問紙法は精神計測方式に属し,この方式は疾病(disorders)を同じ連続する背景(正常範囲のバリエーション)の上にある極端例と仮定している.一方臨床インタビューは疾患の範疇化のための医学方式から派生している.臨床的極端例に一致する個人は,環境リスクファクターと遺伝リスクファクターのバランスが異なっているかもしれないので,遺伝と環境の効果は異なるかもしれない.

最後に,ADHDの行動遺伝研究は,一般的に親による評価法のみを使ってきた.しかし,親による評価と教師による評価を合わせた場合の遺伝性は,親か教師の単独での評価に比べ高い結果が得られ,また,複数の評価者と評価スケールから潜在する形質を創造するための構造的方程式モデリングを使うことでも遺伝性データは高くでる.親による評価スケール単独ではADHDの臨床診断との相関が,親と教師の評価を合わせたものよりかなり低く,評価者によるバイアスがより大きいのであれば,最も厳密な方法は,遺伝性の潜在形質を創造するための複数の評価法と複数の評価者を使った方法であろう,

結論として,我々は,ADHDとDRD4-7の関連を,一般ポピュレーションサンプルを使ったQTLアプローチで再現した.この結果は,DRD4-7またはDRD4-7と連鎖不均衡の関係にある機能的遺伝子変異が,診断的サブタイプを狭くするための危険因子のひとつというよりも,一般集団における多動スコアの巾に影響を及ぼすQTLのひとつであることを示唆する.これらの所見はさらに,ADHDの新しいQTLsを同定するためにQTLアプローチを使うべきであることを示唆している.既に明白は関連所見を再現することに問題があるため,我々は表現形質の計測のための統一されたアプローチを考慮すべきであることを示唆する.

 


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