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セロトニントランスポーター遺伝子と自閉症

Klauck SM, et al. Serotonin transporter (5-HTT) gene variants associated with autism. Hum Mol Genet 6: 2233-2238, 1997.
(概訳)セロトニントランスポーター(5-HTT)を選択的に標的とする抗うつ剤は,自閉症者において反復性行動や攻撃性に有効で,言葉の使い方にも改善が見られることが知られており,セロトニントランスポーター遺伝子の変異が自閉症になりやすい素因のひとつであることが想定されている.言語発達の遅れを伴う自閉症児とその両親52家族(Aグループ)と,この52家族に3歳まで言語発達に問題のない自閉症児の家族を含む計65家族(A+Bグループ)の両者を対象とし,セロトニントランスポーター遺伝子の転写調節部位(5-HTTLPR)の多型と,第2イントロン内のVNTRの多型,および両領域のハプロタイプ(組み合わせ)をTDT (transmission/disequilibrium test:遺伝不均衡テスト)にて解析した.5-HTTLPRの多型は長/短の2種類あり,自閉症児において長い方が高頻度かつ優位に遺伝していたが,TDT法ではA+Bグループの方の検討でのみ統計的有意差がみとめられた.今回の結果はアメリカの研究者たちが発表した86家系での結果(短い方の5-HTTLPRが優位に遺伝する)と逆であり,どちらの結果でも第2イントロン内のVNTRの多型については有意な連鎖不均衡はなかった.両遺伝子部位のハプロタイプ(組み合わせ)の検討では,セロトニントランスポーター遺伝子と自閉症の関連が示唆された(Aグループでp=0.069,A+Bグループでp=0.049).


(解説)下記の文献1を含むいくつかの論文が最近発表され,一部の研究者たちは,「自閉症の遺伝素因はセロトニントランスポーター遺伝子で決まり」とまで豪語しているようですが,案の定なかなかそう簡単にはいかないようです.文献1での結果はセロトニントランスポーター遺伝子のプロモーター部位の多型の短型(変異型)が自閉症に関連すると示唆し,この論文では長型が関連するとしており,まったく逆の結果になっております.また,この論文でのハプロタイプ解析で「セロトニントランスポーター遺伝子と自閉症との関連の証拠」としている結果の危険率は,小さい方で0.049(4.9%)で,「傾向がある」と言えるギリギリの線(5%以下)です.結論は,細かい臨床的な検討(サブグループ化)を含む大規模な多民族での検討が必要ということのようです.


(文献)
1. Cook EH, et al. Evidence of linkage between the serotonin transporter and autistic disorder. Mol Psychiat 2: 247-250, 1997.

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