芸術と心の健康





何のために 生きているのだろう
  何を喜びとしたら よいのだろう
     これからどうなるのだろう

その時 私の横に
  あなたが一枝の花を 置いてくれた
    力を抜いて重みのままに咲いている
       美しい花だった


これは星野富弘さんの詩です。彼は中学校の体育の先生になったばかりのころ、
空中回転した時あやまって首の骨を折ってしまいました。首から下は動かせなくなって病院のベッドの上で置物のように横たわったまま苦しみ続けました。
ある時、ぃっそ死んでしまいたいと下を噛み切ろうとしましたが死ねません。
それを見たお母さんは、びっくりして「お前が生きていてくれるだけでお母さんは嬉しいのだよ」と諭しました。
どんな人間にも生きることに意味と役割があることを知った星野さんは、どうせ生きるのなら少しでもましな生き方をしたいと、口に筆を咥えて絵と詩を書き始めました。日に日にすばらしい作品が生まれて展覧会や詩画集は多くの人々を感動させ力づけてくれました。星野さんと同じように大学時代、ラクビーの試合中に首の骨を折ってしまった垂水出身の北迫正治さんは、星野さんの生き方と作品に力づけられて、自分でも詩や絵を書くようになりました。次は北迫さんの詩です。



明るい所から 暗い所は見えにくい
不幸な人が 見えないような人にはなりたくない

さあ一緒に 花の種を いっぱい蒔こう

口に咥えた筆の先から、光るような魂の言葉が溢れ出ててます。若くして生きる希望を失った二人が見事に蘇ったのです。二人は作品を作り続けることで少しずつ心が安らぎ、感性が澄み切って、生きることに、もっと豊かな意味を見い出し始めたのです。
次は星野さんの詩です。


いのちが一番大切だと思っていたころ
  生きるのが 苦しかった

いのちより大切なものが あると知った日
  生きているのが 嬉しかった


出典:鹿児島県精神保健福祉協議会 
    心の健康シリーズ第30号「ノーマライゼーションについて考えよう」
    −心やさしい仲間たちの作品を通して−
    「芸術と心の健康」 竹元隆洋