予防訴訟判決 Q&A10.23都高教全組合員配布テキスト)

「日の丸・君が代」強制は憲法違反!

 10.23通達は教育基本法違反! 予防訴訟、全面勝利判決を勝ち取る

 

 9月21日、東京地裁で言い渡された「予防訴訟(国歌斉唱義務不存在確認請求訴訟)」の原告勝利判決は、直ちにNHK・TV三時のニュースで流され、翌朝(「産経」除く)全国紙はすべて一面トップ扱い、外国紙も詳しく報じました。地方紙の社説でも30数社が扱い、TV報道や週刊誌でも引き続きとりあげられています。

 

Q1 まずこの画期的と言われる判決の内容を説明してください。

A1 東京地裁は、都教委が校長に職務命令として発した10・23通達を違憲・違法と判示する重要な判決を言い渡しました。

 判決内容は以下のとおりです。

() 今回の東京地裁判決(以下「本件判決」という)は、

 @在職中の原告らが、10・23通達に基づく校長の職務命令に基づき、

 @)入学式・卒業式等の式典会場において、指定された席で国旗に向かって起立し、国歌を斉唱する義務が存在しないこと

 A)式典の国歌斉唱の際に、ピアノ伴奏をする義務が存在しないことを確認する。

 A都教委は、在職中の原告らが、上記職務命令に違反して、起立しない、国歌を斉唱しない、ピアノ伴奏をしないことを理由として、いかなる処分もしてはならない。(処分差止め)

 B都は、原告ら全員に対し、各自3万円の慰謝料と遅延利息を支払え。(損害賠償)

という主文(結論部分)です。

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●憲法違反という点について

Q2 起立・斉唱・伴奏の義務が存在しないということは憲法十九条で国民に保障された基本的人権である「思想・良心の自由」の意義を、明確に認めたということですね。

A2 本件判決は「・・・国民の間には、公立学校の入学式、卒業式等において、国旗掲揚、国歌斉唱をすることに反対する者も少なからずおり、このような世界観、主義、主張を持つ者の思想・良心の自由も、他者の権利を侵害するなど公共の福祉に反しない限り、憲法上、保護に値する権利というべきである」「教職員に対し一律に,入学式、卒業式等の式典において国歌斉唱の際に国旗に向かって起立し、国歌を斉唱すること、ピアノ伴奏をすることとの義務を課すことは、思想・良心の自由に対する制約になる」とはっきりと憲法十九条違反を判示しています。

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Q3 「国旗掲揚、国歌斉唱をすることに反対する者も少なからずおり」という認定はどのようになされているのでしょうか。

A3 本件判決は「我が国において、日の丸、君が代は、明治時代以降第二次世界大戦終了までの間、皇国思想や軍国主義思想の精神的支柱として用いられてきたことがあることは否定し難い歴史的事実であり、国旗・国歌法により、日の丸、君が代が国旗、国歌と規定された現在においても、なお国民の間で宗教的、政治的にみて日の丸、君が代が価値中立的なものと認められるまでには至っていない状況にあることが認められる」と判示しました。

 したがって、「宗教上の信仰に準ずる世界観、主義、主張に基づいて、入学式、卒業式等の式典において国歌斉唱の際に国旗に向かって起立し、国歌を斉唱することを拒否する者、ピアノ伴奏をすることを拒否する者が少なからずいるのである」としているのです。

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Q4  「このような世界観、主義、主張を持つ者を含む教職員らに対して、処分をもって上記行為、すなわち起立、斉唱、伴奏を強制することは、結局、このような思想を持っている者に対し不利益を課すに等しい」と言っています。思想・良心の自由を侵してはならないということですね。

A4 わが国の憲法で思想・良心の自由が特に明文で保障されているのは、戦前、特定の思想・良心を持つ者がその故をもって厳しく弾圧され、多数者の考え方と異質な考え方が排斥され、社会から自由な雰囲気が失われてしまったという歴史的事実を踏まえた反省によるものです。

 本件判決も指摘するように「憲法は相反する世界観、主義、主張等を持つ者に対しても相互の理解を求めている(憲法13条等参照)」のであり、このような寛容の精神こそが、平和で民主的な社会を築く上で、必須のものではないでしょうか。

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●「強制は当然」の理屈その1

Q5 判決は「学習指導要領の国旗・国歌条項は、教職員にその思想・良心に反してまで起立・斉唱・ピアノ伴奏を義務付ける根拠にはならない」としています。しかし、被告である都教委は、学習指導要領の国旗・国歌条項(「入学式や卒業式などにおいては、その意義を踏まえ国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するよう指導するものとする」)を「公教育の根幹」であると錦の御旗のように掲げて、10・23通達も学習指導要領の趣旨に基づくものだと主張してきたのではなかったですか。

A5 本件判決は「学習指導要領の国旗・国歌条項の法的効力は、その内容が教育の自主性尊重、教育における機会均等の確保と全国的な一定水準の維持という目的のために必要かつ合理的と認められる大綱的な基準を定めるものであり、かつ、教職員に対し一方的な一定の理論や観念を生徒に教え込むことを強制しないとの解釈の下で認められるものである」と判示しています。これは1976(昭和51)年5月21日の旭川学テ最高裁大法廷判決の判示を正しく踏まえたものです。

 すなわち、本件判決は、学習指導要領というものは、その性質上、あくまで「大綱的基準」として取り扱うべきものであり、これを根拠に現場での教育のあり方を一律に画一的に教育行政当局が取り決めるようなことは許されない、としているのです。

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●「強制は当然」の理屈その2

Q6 都教委はこれまで、教職員に国歌斉唱の際に起立、斉唱、ピアノ伴奏を職務命令で命ずることは、「一定の外部的行為」を命ずるに過ぎず、内心領域における精神活動の自由までを制約するものではない、思想・良心の自由の侵害ではなく憲法違反ではないとして、強制を押し進めてきました。この点についてはいかがですか。

A6 本件判決は「人の内心領域の精神的活動は外部的行為と密接な関係を有するものであり、これを切り離して考えることは困難かつ不自然」と明確に述べています。日の丸・君が代やその強制を受け容れがたいと考える者に、内心はどうあれとにかく立って歌え、ピアノ伴奏をせよ、と命ずることは、実際には、江戸時代の踏み絵に等しいものです。

 キリシタンに対する踏み絵も、内心を問題にしているのではない、絵を踏むという「一定の外部的行為」を命じているだけだ、と言い逃れることができるでしょうか。むしろ「一定の外部的行為」を命ずることにより、実に巧妙に、キリシタンの精神を圧迫し、転向・改宗を迫ることができたのです。どの憲法の教科書にも、江戸時代の踏み絵は、思想・良心の自由の侵害の典型的事例であると書かれています。

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●「強制は当然」の理屈その3

Q7 都教委の10・23通達に基づく校長の職務命令が、教職員の思想・良心に反する行為を強いるものであったとしても、「地方公務員は全体の奉仕者であって、公共の利益のために勤務し、職務の遂行にあたっては全力を挙げて専念する義務があり、思想・良心の自由も、公共の福祉の見地から、公職員の職務の公共性に由来する内在的制約を受ける」というものでした。「職務の公共性」を、教職員の基本的人権を制約する、いわばマジック・ワードとして振りかざしてきたわけですが、この点はどうなっていますか。

A7 本件判決は「全体の奉仕者」「職務の公共性」というような極めて抽象的なマジック・ワードで基本的人権の制約を正当化することを否定し、思想・良心の自由は、「それが外部に対して積極的又は消極的な形で表されることにより、他者の権利を侵害するなど公共の福祉に反する場合」に、「必要かつ最小限度の制約に服する」のみであることを確認しました。つまり、思想・良心の自由はもっとも根本的に擁護されるべき人権であり、これが制限されるのは他者の人権を侵害する場合だけだとしたわけです。このような解釈こそが、憲法学における通説です。

 したがって、起立しない・斉唱しない・ピアノ伴奏しないという消極的行為が、抽象的に「職務の公共性」に反するのかという検討ではなく、具体的に「他者の権利を侵害するなど公共の福祉に反する」のか否かを検討しています。

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Q8 本件について具体的検討とはどのようになされたのですか。

A8 次のような詳細な検討がなされています。「原告ら教職員が入学式,卒業式等の式典において国歌斉唱の際に国旗に向かって起立すること、国歌を斉唱することを拒否したとしても、格別、式典の進行や国歌斉唱を妨害することはないうえ、生徒らに対して国歌斉唱の拒否を殊更煽るおそれがあるとまではいえ」ないし、学習指導要領の国旗・国歌条項の趣旨を阻害することもない、すなわち、「他者の権利を侵害するなど公共の福祉に反する」ものではない、と判断しています。

 また、国歌斉唱の際の音楽科担当教員のピアノ伴奏についても、本件判決は、「仮に音楽科担当教員が国歌斉唱の際のピアノ伴奏を拒否したとしても、他の代替手段も可能と考えられ、当該教員に対し伴奏を拒否するか否かについて予め確認しておけば式典の進行等が滞るおそれもないはずである」と判断しています。このような、「代替的手段の検討」は、基本的人権の制約が問題になる場面では、必ず求められるものとされています。

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●教基法違反という点について

Q9 本件判決では、教育基本法違反という判示もなされたそうですが、どのようなことですか。

A9 本来、各学校には、各学校毎の特色を生かした自主的な教育課程を編成する権限があるはずです。それが、10・23通達に象徴される都の強権的教育行政の下ではどうなったでしょうか。

 本件判決は、10・23通達及びこれに関する都教委の一連の指導が、「入学式、卒業式等の式典における国旗掲揚、国歌斉唱の実施方法等、教員に対する職務命令の発令等について、都立学校の各校長の裁量を許さず、これを強制するもの」「教育の自主性を侵害するうえ、教職員に対し一方的な一定の理論や観念を生徒に教え込むことを強制することに等しく、教育における機会均等の確保と一定の水準の維持という目的のために必要かつ合理的と認められる大綱的な基準を逸脱しているとの誹りを免れない」とし、教育基本法10条1項の禁ずる「不当な支配」に該当するものとして違法、と判示しています。

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Q10 校長に対する都教委の「指導」という名の強制の実態についても、詳しく、かつ広範囲に事実認定されたという風に聞きましたが、その点はいかがですか。

A10 「10・23通達及びこれに関する都教委の一連の指導」の実態については、校長自身がいちばんよく知っているはずです。元校長の勇気ある詳細な証言は、裁判所の事実認定に大きな役割を果たしました。本件判決が認めているとおり、入学式、卒業式等の式典における国旗掲揚、国歌斉唱の実施方法や、教職員に対する職務命令の発令等について、校長にはまったく裁量の余地はありませんでした。これら事実全体に基づいて都教委の「指導」が教育基本法10条にいうところの「不当な支配」該当するとしたのです。

「最後の授業」とも言うべき卒業式を初めとして、重要な教育活動の一環である学校行事において、教職員集団というだけでなく、校長自身が自分たちの学校にふさわしい行事のあり方を何も自主的には決められないという現状は、たいへん貧しく、情けないことです。対面式やフロア形式の卒業式が出来ないこと、生徒の卒業制作を壇上に飾れないこと、養護学校において肢体不自由な生徒を国歌斉唱時に無理やりにでも立たせていること、といった諸々の事実も強制の実態を示しています。

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Q11 校長が10・23通達に基づき教職員に宛てて発した職務命令も「重大かつ明白な瑕疵」があり、教職員は起立、斉唱、伴奏の義務を負うことはないと判示されたそうですが、いかがですか。

A11 「校長の職務命令に重大かつ明白な瑕疵がある場合には、これに従う義務はない」という判例を具体的に当てはめて検討した結果、起立、斉唱拒否は積極的妨害行為でもなく、生徒扇動行為でもなく、学習指導要領の国旗国歌条項の教育目標を阻害しないこと。ピアノ伴奏は必須ではなく代替的手段があり、事前に確認して必要な措置を執っておけば式典進行も阻害しないこと。したがって、校長の職務命令は憲法19条違反で重大明白な瑕疵があると認定され、つまり、起立、斉唱、伴奏の義務を負わない、むしろ拒否の自由があるということになります。

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●都教委の対応は?

Q12 10・23通達及びそれに基づく職務命令が、裁判所の判決で憲法違反、教育基本法違反と明確に断罪されたにもかかわらず、都教委は判決翌日の22日に臨時校長連絡会を招集し、「控訴するのだから、私たちの行政行為が何ら阻まれるものではない」と開き直っています。このことをどう考えたらよいのでしょうか。

A12 原告団・弁護団は、判決を受けて直ちに「10・23通達を取り消せ」「これまでの処分を取り消せ」「判決を真摯に受けとめ控訴するな」の申し入れを行いました。しかし、都教委は22日の校長連絡会で「従来どおりの方針で臨む」と校長たち指導したと言われています。これは、都教委が本件判決で教育の自主性を侵害すると厳しく指摘された、校長らに対する強権的手法を、更に重ねていることに他なりません。

 三権分立の下では、行政権は司法権の判断に従って行動すべき義務を負うのは当然です。確かに、我が国では三審制が採られていますが、上級審で争うことができることと、地裁判決を考慮尊重しないことは全く別問題です。地裁判決が出た以上、行政権が従前と対応を同じくするということはありえないのであって、そうだとすれば、三権分立という憲法の基本を否定するものといわなければなりません。都教委は、憲法尊重擁護義務(憲法99条)に明白に違反しています。

 また、地裁判決によって10・23通達は違憲無効ということが確認されたのですから、従来どおりの対応をするということは、都と都教委は、10・23通達が違憲無効なものであることを認識しつつ、違憲無効な行政を進めるということになり、より責任が重くなると言わねばなりません(いわば、過失犯だったものが、故意犯になるようなものと言うべきか)。

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Q13 都と都教委は9月29日に控訴の手続きをとりました。今後の動きはどのようになるのでしょうか。

A13 都立高校保護者の申し入れや、ネットを通じた呼びかけで2晩で1200人もの賛同者を得た市民の申し入れもありました。また東京弁護士会、東京第2弁護士会からは判決を高く評価する会長声明も出されました。こうした良識の声を無視しての控訴です。

 都教委が、今後も卒業式等における国旗国歌の強制を繰り返せば、原告らは、そのたびに、懲戒処分等の強制の下、自己の信念に従って職務命令を拒否するか従うかの岐路に立たされます。しかも、原告らに対する懲戒処分は重くなり続けるのですから、そのことによる原告らの思想・良心の侵害は著しい。にもかかわらず、控訴を選択した都教委の姿勢は、思想・良心の自由は権利侵害後の事後的救済にはなじまないとして国歌斉唱義務不存在および処分の差し止めを認めた本判決をまったく無とするものであり、許されません。

 私たちは都側の控訴を堂々と受けて立ち、勝利判決をめざします。

 われわれは、控訴審においても、本件判決が認めた、民主主義社会における思想・良心の自由の保障の重要性、教育に対する行政権力の不当・不要な介入から教育の自主性を守ることの重要性などを引き続き強く訴え、司法判断を確実なものにしていきます。

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●もし、教基法が改悪されたら?

Q14 安倍新政権が誕生し、教育基本法改悪を当面の最大課題として取り組むという所信が表明されました。教育基本法が改悪されたら、この裁判の行方はどうなってしまうのでしょうか。

A14 教育基本法が政府案どおりに改悪される事態になったら、この裁判に困難な局面が生じることはたしかです。今国会での改悪ストップの闘いにともに全力で取り組みましょう。

 しかし、たとえ万が一、教育基本法が改悪されたとしても、私たちがすべての法的根拠を失うわけではありません。憲法は健在です。思想・良心の自由を侵害する10・23通達は違憲という判断は維持され続けます。判決の中では原告側の主張として、国際人権規約や子どもの権利条約にも言及されました。日本はこうした条約を批准しているのですから、国内法規の上位に位置するこれらの規約・条約を根拠に、日の丸、君が代の強制の違法性を主張することは十分に可能です。あきらめて敗北主義に陥ることはありません。

 引き続き、この裁判への大きな関心とご支援をお願いします。

 

      発行責任者 永井(五商定)宮村(千歳丘)

      連絡先

            「日の丸・君が代」強制反対 予防訴訟をすすめる会

       〒160-0003 東京都新宿区本塩町4番地4 祥平館ビル9階  東京中央法律事務所気付