パワプロとワールドカップ


ということでもうすっかり月イチになってしまった感じで、
そのせいか時事ネタとか季節ネタとか、
そんなのばかりやってる気もするけど、
今回もやっぱりそういう感じで話を進めます。

だっていまを逃したらむこう4年はこの話はダメなんですよ?
しかも日本が開催国になるなんて
次にハレー彗星を見るよりも後かもしれないじゃないですか。
もうこうなったらパワプロどころじゃないですよ。
プロ野球だって早々と白旗をあげたみたいですし。

ともかく、そのぐらい日本中がサッカーフィーバーになっています。
どのくらいフィバってるかというと、見た人もいると思うけど、
このあいだやってたサザエさんでもサッカーの話があったぐらいです。
原作にそういう話があったのかどうかはわからないのですが。

サザエさんと言えばドラエもんとおなじぐらい
日本のアニメ・マンガを代表する作品ですから、
トップにならえということでサッカー関連のマンガが
ここ最近けっこうな数が始まったようです。
まんがタイム系にも関連したネタがかなりありますし。
テレビでも連日サッカーの話題ばかりで、
なにがなんでも盛り上がれと言わんばかりです。

そこまでされると普段サッカーに興味のない自分でさえ、
「まあ、日本戦ぐらいは見たほうがいいかな」なんて思って、
しっかり3戦全部見ちゃたわけなんですよ。
Jリーグの試合を年に1度も見ないような人がですよ。

でもまあ感覚的にはオリンピックみたいなもので、
数年に1度しかなくてめずらしいから見るんですね。
それにサッカーは野球に比べてつかれるから、
とても毎日なんて見てられないんですよ。
スーパープレイだってしょっちゅう見てたら
なんだかありがたみがなくなると思うんですよ。

そんな感じで次の日本戦もあまりよく考えないで
「うわー」とかばかり言いながら見ると思います。
なんかよく知らないけど、なんかすごいらしいって思いながら。


そういう話になると「オフサイドって知ってる?」ということになることが多い。
詳しく説明しろと言われると困るけど、だいたいは知っている。
たしかキーパーと1対1になったらダメだったような気がする。
ちがっても死なないからべつに気にしてません。

これがどうしてダメなのだろうと思う人もいるかもしれないので、
なにがどうダメかを実例を示して説明したいと思います。

仮にというかボクのことなんだけど、
ボクはサッカーがうまくないほうというか
はっきりいってリフティングで2桁いったことがないぐらいの
超ド級のヘタクソだったんですよ。
球を蹴ればそれこそ「行き先は球に聞いてよ」だったし。

だからボールにほとんど触ることなく終わることなんてざらだったので、
その日も始めからやる気がなくて、開始早々に相手キーパーと
ぺちゃくちゃとおしゃべりをしてたんですよ。

そしたら戻したのかこぼれ球なのかはわからないけど、
なんか知らないけどボールが近くに転がってきたんですね。
もちろんボクはノーマーク状態だったし、
キーパーも寸前まで気づかなかったんですよ。
そこを「なんか知らないけど」と蹴ったらゴールになったんですよ。
そういうあまり公式じゃないサッカーはオフサイドなんてとらないですから。

そしたら大ブーイングですよ。なぜか味方にまで文句言われるし。
もしこれがワールドカップとかだったら、
それこそサポーターに殺されかねない勢いですよ。
だからそういうのを防ぐためにオフサイドはあるんですよ。

それでそのあと味方キーパーと話してたら、
今度は戻したボールにキーパーが気づかないで
自殺点になっちゃて、敵は大よろこびしてたけど、
またしても味方から大ブーイングですよ。
しまいには先生に説教されましたよ。

オフサイドとは関係ないでしたね、はい。



主人公「もうすぐ試合が始まるね」

矢部君「そうでやんすね」

主人公「なんでわざわざ部室で見てるんだろうね」

矢部君「まあ、おおぜいで見たほうが盛り上がるんでやんすから」

主人公「矢部君の感覚だと、ふたりからはおおぜいなんだ」

矢部君「そう言わずにでやんすね、たぶん江崎と豆山も来るでやんすよ」

主人公「でも江崎とかバイトじゃないの」

矢部君「そうでやんすね、コンビニとか出前関係はもうかってるそうでやんすね」

主人公「でも逆にふつうの飲食店はお客さんがかなり減ってるらしいよね」

矢部君「ファミレスなんかにもテレビを設置すればいいんでやんすよ」

主人公「期間中だけそういうノリにするんだ」

矢部君「いや、厨房の中にでやんすけどね」

主人公「ああ、もうあっさりとあきらめたんだねって、
    めちゃくちゃ感じのわるい店だよね、それ」

矢部君「お祭りだから少しぐらいはおおめに見てもいいじゃないでやんすか」

主人公「それはまあそうだけど」

矢部君「点が入ったら『ゴール!』とかさけびながら、
    包丁を持った人たちが厨房から飛び出してくるんでやんすよ」

主人公「いくらおおめに見ても、最初の段階で客は逃げてると思うけどね」

矢部君「それでそのまま勝ったら『わーっ!』とか言いながら、
    包丁を持った人たちが抱き合うんでやんすよ」

主人公「そういうときは包丁は持たないほうがいいって、
    このごろは学校で教えないんだね」

矢部君「そんなことしてるから料理ができあがらないから、
    客は遅いなーと思うんでやんすね」

主人公「その客ってアホでしょ、たぶん」

矢部君「そしたらなぜか宅配ピザが店に現れるんでやんすね」

主人公「その店に2度と行かないのは確かだね」

矢部君「店員は両手が包丁でふさがってるから、
    こう、アゴで客に向かって『おい、はやくとれよ』って」

主人公「両手に包丁を持ってたんだね」

矢部君「客がぶつくさ言いながらもうけとるでやんすよね、
    そしたらまたアゴで『おい、それこっち持ってこい』って」

主人公「店員たちのご飯だったんだね」

矢部君「それを食べ終わったら『ところであんた誰?』って」

主人公「その客ってさあ、やっぱりアホでしょ?」

矢部君「ワールドカップの思い出って言ったら、
    やっぱりその光景がまっさきに思い浮かぶでやんすねー」

主人公「もしかして経験者は語るだったの?」

矢部君「まあ、それもいまとなってはいい思い出でやんすよ。
    そういえば豆山も『かきいれどきでゲスから』とか、
    かなりいそがしそうだったでやんすね」

主人公「どこがいいのか全然わからないんだけど、
    チケットってかなりすごかったらしいよね」

矢部君「電話しても全然つながらなかったそうでやんすよね」

主人公「あれってやっぱり運なのかなぁ」

矢部君「運のほかにもでやんすね、コネとか重要でやんすよ」

主人公「やっぱり関係者とかには配られるんだろうね」

矢部君「夜中にこっそりとトイレに忍び込んでおくでやんすよね」

主人公「なんか意味がわからないけど、
    フランス大会でもそんな人が結構いたらしいね」

矢部君「でもそれは警備員だってお見通しでやんすから、
    トイレとかは全部チェックされるんでやんすよ」

主人公「そうだろうね」

矢部君「それで個室に隠れてるでやんすよね。そしたら警備員の人が、
    『おい、いまこの個室から音が聞こえなかったか?』なんて言って、
    自分のいる個室に近付いてくるんでやんすよ」

主人公「もう絶体絶命だね」

矢部君「そこで『にゃあーん』とうまく言えば、
    『なんだネコか』と、やり過ごせるんでやんすよ」

主人公「それコネじゃないよね」

矢部君「いいところまではいったんでやんすけどね」

主人公「やっぱり一般の人は気合いと運で取るしかないのかなぁ」

矢部君「電話をかけまくるしかないでやんすよ」

主人公「かなり望み薄で電話をするから、かかったらびっくりして
    何が起きたのかすぐには状況を把握できないかもしれないよね」

矢部君「オイラなんかうっかりいつもの癖が出ちゃって、
    『梅田だけど、寿司特上20人前』なんて口走っちゃったでやんすよ」

主人公「というか、矢部君ってそんなことばっかりしてるんだ」

矢部君「このせいで出前とかすごいらしいでやんすね」

主人公「矢部君は自分を世界標準だと思わないほうがいいよね、うん」

江崎「先輩たち、やっぱりここで試合を見てたんスか」

主人公「ああ、江崎。もうバイト終わったの?」

江崎「なんか店長が見たいから今日はもう閉めるとか言ってたっス」

矢部君「ところでその袋には例のごとくなんか食べ物とかが入ってるんでやんすか?」

江崎「途中で閉めたから、結構余り物が出たからもらってきたっス」

主人公「やっぱ、ビールとか片手に観戦したほうが盛り上がるよね」

矢部君「で、何があるんでやんすか」

江崎「なにせワールドカップっスからね、
   日本を盛り上げるためにもこれしかないっスよ」

主人公「日本を盛り上げるって…これ?」

矢部君「日の丸弁当でやんすか…」

江崎「賞味期限はきのうだからたぶんまだ大丈夫っスよ」

主人公「わーい、うれしいなー…」

矢部君「盛り上がってきたでやんすね…」

江崎「あと、飲み物もあるっスよ」

主人公「もうそっちに期待しようか」

江崎「やっぱ日本を応援するんスからね」

矢部君「ペットボトルの日本茶でやんすね…」

主人公「しかもフタがもう空いてるよ…」

江崎「日本の応援グッズもそろったし、盛り上がってきたっスね」

主人公「いや、全然」

矢部君「そうこうしてるあいだに、試合の方は盛り上がってるみたいでやんすよ」

主人公「サッカーは展開が速いからなぁ」

江崎「あっと言う間にボールが流れていくっスね」

矢部君「コンビネーションとかすごいでやんすね」

主人公「なんかときどき言うけどさ、アイコンタクトとか本当にあるのかな」

矢部君「目でちらっと見たりしてパスをつないだりするでやんすか」

江崎「サッカーだけにサッカードってことっスね」

主人公「いや、それの意味が全然わからないんだけど」

江崎「あっ、フリーキックみたいっスよ」

矢部君「壁を作ってるでやんすね」

主人公「あの壁の人たちって手で押えてるけど、当たると痛いからなのかな」

矢部君「そりゃ痛いと思うでやんすよ」

江崎「でもちょっとおいしいとか思うんじゃないスか」

主人公「いや、全然」

矢部君「フリーキックって蹴る前にふたりで何か話すときがあるでやんすよね」

主人公「どっちが蹴るかとか展開の打ち合せじゃないの」

江崎「いやぁ、もっと違うことだと思うっスねぇ」

主人公「どんなの?」

江崎「『おう、最近は小中学校でブルマって廃止らしいな』

   『え?マジっスか。最悪っスねー』

   『じゃあその気持ちをこのボールにぶつけてみろ』

   『まかせてくださいよ』」

主人公「最悪なのはそいつらだよね」

矢部君「もっとまじめに蹴ることの話でやんすよ」

江崎「じゃあどんなのっスか」

矢部君「『…てな感じで、ふたりで一緒に走ってオレが蹴るから』

    『じゃあかけ声とかどうしますか』

    『“せーの”で走り始めようか』

    『“いっせーの”じゃないんですか?』

    『じゃあ“いっせーの”で』

    『でもそれだと“いっせーの、はい”って感じになりますよ』

    『“いっせーの、せっ”じゃないのか』

    『ボクのところでは“いっせーの、はい”でしたよ』

    『それはなにか、オレの出身が田舎だって言いたいのか』

    『いや、そういうわけじゃないですけど』

    『どうせFFを“ファイファン”とか言うと思ってるんだろ』

    『誰もそんなこと言ってないじゃないですか』

    『カラオケが街に2軒しかないって思ってるんだろ』

    『そうなんですか?』

    『ほら、やっぱりそう思ってるんだ』

    『それより早く蹴らないとまずいですよ』

    『“せーの”で蹴るんだよな』

    『“せーの”で走り始めるんですよ』

    『じゃあ“せーの、たったったっ、ボン”か』

    『イメージ的には“ボス”でしょうね』

    『“せーの、たったったっ、ボス、ボム、パシュ”だな』

    『なんですか、途中の“ボム”って』

    『あいつがヘディングする音だよ』

    『直接ねらうって言ってたじゃないですか』

    『直接でって、“ボス、キン、ぴょんぴょんぴょん”か』

    『あんたどこを直接ねらうつもりなんですか』

    『違うの?』

    『ああ、審判がこっちにらんでますよ。早く蹴らないと』

    『そういや、今朝の占いってオレとお前のどっちが上だったけ』

    『いや、いいから』

    『“せーの”だよな』

    『“せーの”でも“はい”でもなんでもいいですから』

    『じゃあオレはハンバーグのほうがいいんだけど』

    『あんた何言ってんですか』

    『なんでもいいって言ったじゃないか』

    『物の例えですよ』

    『でも“チャーシューメン”はあるじゃないか』

    『じゃあハンバーグでいいですから。ほら、審判めちゃくちゃにらんでますって』

    『ところでハンバーグをどうするんだ』

    『かけ声じゃないんですか』

    『いや、蹴るときのイメージかと思ってた』

    『じゃあもうそれでいいですから』

    『“せーの、たったったっ、ボス(ハンバーグ!)、キン(笑)”でいいな』

    『なんでそこで(笑)が入るんですか。しかもえらく力強いハンバーグだし』

    『いや、だって仲間に当てたらおもしろいじゃない』

    『当てられるのってボクなんですか?』

    『そうだけど。じゃあ蹴るか』

    『わー、ま、待ってくださいよ』

    『なんだよ、蹴れって言ったり蹴るなって言ったり』

    『もう1度だけ作戦を確認しましょうよ』

    『さっき言った通りだぞ』

    『最後を“パサ(喜)”にしときませんか』

    『じゃあ“キン(笑)、パサ(喜)”か』

    『(笑)はいいですから』

    『それなら“キン!(悶絶…)、パサ(喜)だな』

    『“キン”からも離れましょうよ。しかも強くなってるし』

    『いちいち注文が多い奴だな。“くちゃ(やべぇ…)、パサ(喜)”でいいな』

    『なんかさっきよりもひどいじゃないですか』

    『おい、それよりもうちの監督なんかキレてるぞ』

    『え?とっくにほかの人が蹴って、もう試合終わったって?』

    『監督かなりキレてるけど、もしかしてオレたちつぶされるのか?』

    『そっから離れましょうよ』

    『じゃあ性転換手術を受けさせられるのか』

    『一見リアルっぽいけど、もっとないでしょ』

    『それでマカオあたりに売り飛ばされるのか』

    『先輩、マカオってそんなところじゃないですよ』

    『どっちにしてもオレたちは性不一致ってやつになっちゃうんだ』

    『だからどうしてそっから離れないんですか』

    『だって、元はと言えば“せーの”が合わなかったのが始まりだし』

    『ああ、“せーの”不一致ですか。先輩うまいなぁ』

    『これで監督許してくれるかな』

    『ダメでしょ。だいたい日本語通じないし』」

江崎「矢部さん、試合もう終わってるっスよ」

主人公「ほら、ユニフォーム交換してるし」

江崎「あれって汗でばっちくないんスかね」

主人公「どうだろうね。お互い様だし」

矢部君「え、あれって罰ゲームじゃないんでやんすか?」

主人公「じゃあ勝ったチームはなんのためだよ」

矢部君「それは趣味でやってるんでやんすよ」

江崎「矢部さんは自分を標準と思わないほうがいいっスね」

矢部君「なんかそのセリフはさっきも言われた気がするでやんす」

主人公「あ、ほら。街の様子だって。すごいね、これ」

江崎「やっぱり川に飛び込む人たちがいるんスねー」

矢部君「オイラたちも飛び込もうでやんす」

主人公「飛び込むって言ったって、このへんにそんな川ないよ」

矢部君「じゃあそこの流しでいいでやんすよ」

主人公「流しって。無理だって。ほらすごい体勢だし」

江崎「…一応、すっぽりはまったっスね」

矢部君「じゃあ、上から水をかけて欲しいでやんす」

主人公「矢部君がそう言うなら…(ジョロジョロジョロ)」

江崎「(ジョロジョロジョロ)…矢部さん、どうっスか?…」

矢部君「盛り上がってきたでやんすね!」

主人公「いや、全然」


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