裏口


裏口は官僚大学のマネージャーで、
フルネームは裏口徹です。

すごい名前のようですが、
誰もそのことには触れません。

大倉先輩の例があるので、
その辺はあいまいにしとこうという
大人の判断というやつかもしれません。

宇宙物理学とか宇宙心理学とか、
ものすごくうさんくさい研究をしています。
おそらく実際はふつうの物理学と心理学で、
気分的に意味もなく宇宙をつけているのだと考えられます。

別にこういうのはめずらしいことでもなく、
「応用」とか「概論」などと、
わかったようなわからないような単語が
既存の学問につくのはよくあることです。

扱う範囲を漠然と、やたらと広くしておけば、
内容はかなり好きにできるので、
いろいろなことにちょっかいを出したいんだとしておきましょう。

しかし主人公いわく、
「結構むずかしいことをやっている」そうですから、
中身はわりときちんとしているのかもしれません。

野球部に入部するときの発言から推測すると、
専攻は心理学だと思われます。
物理学とか流体力学はそのあいまにやってるのかもしれません。

大学ともなれば自分の専門以外のことは
おろそかになりがちですから、
これはかなりえらいやつです。

さらに主人公と同じ学年でありながら
主人公を先輩と呼ぶことから、
とび級でもしたのかもしれません。
これはますますもってすごいやつです。

また、5の白鳥学園マネージャー冬野と似たタイプのようですが、
特殊変化球やサブポジを教えてくれる分、こちらの方がはるかに優れています。
野球についての観察力もかなりのものであると言えます。

このように、パワプロ史上まれに見るスペックの持ち主ですが、
プレイヤーの人気は全然高くなく、むしろ嫌われている傾向があります。

それはやはり外見のせいかもしれません。
あの顔はステレオタイプな嫌なやつの顔です。
駒坂や猪狩進と違ってあからさまな悪意を感じます。

裏口を通すことによって、現実世界とは違って
ゲームの世界では外見がいかに重要かを痛感するのでした。



主人公「矢部君、裏口の専攻ってなんだったけ」

矢部君「確か心理学とかそのへんだったと思うでやんす」

主人公「心理学ねぇ。あれってどんなことをやるの?」

矢部君「それはやっぱり、人間の心理についてやるんじゃないでやんすか」

主人公「あ、噂をすれば本人だ」

裏口「先輩方、なにをやってるんですか」

主人公「いや、ちょっとね。心理学ってなにをやってるんだって話になって」

裏口「そうですね。じゃあちょっとした実験でもしてみましょうか」

矢部君「実験でやんすか」

裏口「ここに○、×、□が書かれたカードがあるから1枚とってください」

主人公「それってどのカードをとるかでどうって実験なの?」

矢部君「じゃあ○にするでやんす」

裏口「そしたらその裏を見てください」

矢部君「なにか書いてあるでやんす」

主人公「ええっと、『あなたは○のカードをとる』って、当たり前だろ!」

矢部君「こ、これが読心術ってやつでやんすか!」

主人公「違うよ!」

裏口「まあ、いまのはちょっとした冗談ですよ。
   じゃあ次はこの絵を5秒だけ見てください」

主人公「記憶力とかそういうのを調べるの?」

矢部君「なんだかごちゃごちゃした絵でやんすね」

裏口「はい、5秒経ちました」

主人公「なんか全然頭に入らなかったんだけど」

裏口「じゃあこの絵の裏を見てください」

矢部君「なんでやんすか。『あなたはこの絵を見る。しかも5秒きっかし』。
    ま、また当たったでやんす!今度は時間までぴったり!」

主人公「お前バカだろ!」

裏口「いままでの余興ですよ。じゃあそろそろまじめにいきますか。
   あなたはいま森の中をひとりで歩いています」

主人公「なんだか心理テストっぽくなったね」

裏口「そこに動物が現れました。その動物の姿を想像してください」

矢部君「うーん、想像したでやんす」

裏口「では、その動物の背中のチャックから出ているものはなんですか?」

主人公「そんなこと想像しないよ!」

矢部君「ジターリングでやんすね」

主人公「って、想像してたの!?それよりなんだよそれ!」

裏口「ジターリングと答えたあなたは典型的な日本人です」

主人公「そうなの!?そんなものまで決まってるの!?」

矢部君「ちょっと当たってるでやんすねぇ」

主人公「というか、日本人そのものですよ!」

裏口「次に大きな湖がありました」

主人公「今度はなにを考えるの?」

裏口「あなたはこの湖を越えて向こう岸まで行かなくてはなりません。
   そこで次の選択肢があります。
   1.備えつけの舟を使う。ただし、舟はボロボロになっています。
   2.湖を迂回して歩いていく。
   3.泳いで渡る。
   さあ、どれですか?」

主人公「じゃあ2番」

裏口「2番は168ですね」

主人公「なにそれ」

裏口「あなたは森に潜んでいた狼の群れに襲われました。GAME OVER」

主人公「ゲームブックですか!」

矢部君「オイラはアイテムの宝石を使うでやんす」

主人公「いつ取ったんだよ!」

裏口「じゃあ矢部さんのお蔭で、主人公さんも命が助かったということで続けますか」

主人公「なんか趣旨が変わってるような気がするんだけど」

裏口「そろそろ暗くなってきたので、あなたは休もうと思いました。
   すると、ちょうど小屋が見つかりました。
   それを見つけたあなたはどういう感想を持ちましたか?」

主人公「ああ、これは運がよかったなぁ」

裏口「なんだよ、ボケなしかよ。使えねーなー」

主人公「そういう問題だったの!?」

矢部君「あっ、小屋だと思ったらズボンのチャックが開いてたでやんす」

主人公「なんでだよ!」

裏口「そこから何が飛び出しましたか」

主人公「ふつうはそんな感想持たないって!」

裏口「小屋に入るとひとりの老婆がいました。
   『旅の方、こんなへんぴな宿によく起こしくださいましたね。
   どうぞゆっくりしていってくださいな。ヒッヒッヒッヒッ…』」

主人公「おとぎ話だと、だいたいがヤマンバとかだよね」

裏口「あーあ、ネタバレしちゃったよ」

矢部君「主人公君はエチケットってもんを知らないでやんすか」

主人公「いつからそんな話になってるの!?」

裏口「まあ、ここは矢部さんに免じてこのくらいにしときますか。
   朝といってもまだ暗い時間に、あなたは妙な音で目が覚めました。
   老婆のいる部屋からなにかをとぐ音が聞こえます。それはなんですか?」

主人公「(刃物って言いたけど、またどうせボケろとか言うんだろうな)
    朝ご飯のためにお米をといでました」

裏口「はぁ?そんなわけないでしょうが」

矢部君「いるんでやんすよね、こういうときにふざけるのが、
    かっこいいことだとかんちがいしてる人って」

主人公「え?え?」

裏口「ホント、いい加減にしてくれないと、
   いくら先輩っていっても限界がありますからね」

矢部君「こんなの包丁に決まってるでやんす」

裏口「まったく。じゃあ続けますよ。
   あなたは命の危険を感じて急いで小屋を逃げ出しました。
   すると老婆もあとを追ってきました。
   そのとき老婆はなんと叫びましたか?」

主人公「ええ…、『待てー、お前を食ってやるぞー』とかそんな感じ、かなぁ…」

裏口「そんな解答じゃあ31点ですね。矢部さん、模範解答をお願いします」

矢部君「まったく、主人公君は人間として基本的なことが欠けてるでやんすね。
    『お、お客さん!勘定の方、まだもらってないンスけど』でやんす」

主人公「それってキャラが完璧に変わってるって!」

裏口「もういいですよ。とにかく、あなたは追い付かれました。
   そしてお金を払おうと思ったのですがあいにく持ち合わせがありません。
   どうなりましたか?」

主人公「どうって言われてもなぁ…」

矢部君「そんなの簡単でやんすよ。
    老婆に『それじゃあお前の命を頂こうか!』と言われて
    食べられちゃったでやんす」

主人公「結局、食われるんですか!」

裏口「じゃあ最後の質問です。食べ終わって老婆はなんて言いましたか?」

主人公「もう、ヤケクソ気味だけど『ごちそうさまでした』とか」

裏口「そんなわけないでしょ。正解は『あなたはこの心理テストを受ける』ですよ」

矢部君「うわっ!また当たってるでやんす!」

主人公「それはもういいよ!」


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