犬その1


ついに人間以外が登場することとなりました。

今回は犬です。
その1となってるのは、何回かありそうだからです。
とりあえず今回は主人公が拾う犬にでもしときます。

確かあかつき大学かパワフル大学なら犬を拾うことがあります。
で、犬を拾って一緒に遊べば体調とやる気が回復します。
5と違って確実にやる気や体調を回復する手段があるので、
使えそうで、あんまり使えません。

しかも相談コマンドでアイコンが母親の右にあるので、
拾ったことを忘れて惰性で母親に相談すると、
うっかりワンちゃんに国民年金の相談をしかねません。

名前はサンディです。
なんかアメリカのホームドラマに出てきそうな名前です。

一家揃った日曜日。
父親は椅子の上でコーヒー片手に読書。
母親は昼食の準備。
芝生が一面に敷いてある庭でゴールデンリトルバーと戯れる子供。

「おいで、サンディ」

とかそういうイメージがありますが、
実際は雑種で賞味期限が1週間は軽く過ぎたコンビニ弁当を
主食として食べさせられるのがオチです。

だいたい一人暮らしの大学生といえば
人間の方でさえまともな衣食住を期待しない方がいいですから、
まして犬なら推して知るべしです。



中学校のころときどき学校に犬が迷い込むことがありました。
どこから来たのかよくわからないけど、
大抵首輪をつけてなかったので野良だったのでしょう。

中学生は無駄にエネルギーや好奇心があり余っています。
つながれた犬にいろいろとちょっかいを出すのも、
まあ仕方がないかもしれません。

ある日昼休みに犬が学校に迷い込みました。
いまどき犬を知らない中学生なんているわけがないし、
無論雑種ですからさして珍しいわけでもないけど
やはりわくわくしてしまいます。
その方向性はだいたいにおいて、犬には迷惑ですが。

で、体育館の近くの木につながれました。
ちょうど女子が4時限目に体育館でバスケをしてて、
出入りするついでに犬をかわいがってました。
性差別がどうこうと言われてても、
やっぱり女の人の方がこういうときはやさしく接するようです。
現に撫でられている犬にりりしく書かれた眉毛は男子によるものです。

4時限目が終わりました。
犬は相変わらず女子に、もちろん男子にも大人気です。
給食で余ったチーズやらパンやらをもらってました。
犬も尻尾を振ってうれしそうです。
平和です。ほのぼのしています。

ところが、事件というものは得てしてそういうときに起こるものです。
ある男子、どちらかと言えば周りをおもしろくするタイプの人が
大変なことをしてしまったという顔で階段を上がってきて、
自分の教室の近くの水道にやってきました。
よくよく見ると手袋をはめているではありませんか。
そして気まずそうに口を開きました。

「あの犬チンチン触ってたらなんか出したって〜」

これは一大事です。
早速教室に残ってた人は全員、現場に急行しました。
時は放課後になってて、体育館では女子バスケ部が部活動の真最中です。
最初見たときと同じところに同じように犬はいました。
ただひとつ、違うところは妙に「ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!」と言ってるところです。

犬になにかを出させた帳本人もいつのまにか来ていました。

「そしたらこの犬、変な動きするようになったんだって」

そう言って犬の近くに行って中腰になりました。
すると犬は前足をその人のヒザのあたりにのせると、
さらに「ハッ!ハッ!」を激しくしながら腰を、
それこそ「カクカク」という音がするぐらい素早く動かしました。

健全な男子中学生ならこれを見てなんとも思わない方が難しいです。
本当に腹をかかえて、息を切らしながらみんなで笑いころげました。
あんまり外が騒がしかったらしく、体育館から数人の女子が出てきました。

女子も大爆笑。

体育が一瞬にして保健・体育になりました。
もちろん犬には笑わすつもりは全然なかったと思います。
でもだからこそ、その真剣なひたむきさが滑稽でした。
眉毛がなお一層、キリリとしてきました。

ほんの数時間前までは尻尾を振ってたかわいい人気物が、
いまでは一心不乱に腰を振ってボクらに笑いを提供してくれています。

それから数年後、いまでもああいう光景を見て、
同じように笑えるかどうかはわかりません。

「いい歳をして」と言ってバカをやめたり軽蔑することは、
本当は日々をつまらなくする、バカにも劣ることではないのでしょうか。


サンディから思わぬ方向に進んだけど、
その2か3あたりできちんとした話をしたいと思います。


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