冬美


えっと、今回は冬美です。
6の彼女候補はこれで全部だと思います。
ちょうど季節も冬になりました。

冬美が最後になりましたが、
やっぱりほとんど接点がないので書きづらいです。
彼女になったことがないし。

とりあえずフルネームは雨宮冬美だったと思います。
で、ミス○○(各大学ごと)に選ばれてて、
いつもまわりに親衛隊(かどうかは知らんけど)がいて、
矢部君の好みのタイプじゃないそうです。

デートイベントを見たことがないからよく知らないけど、
たぶん、お嬢様タイプで性格はけっこうキツイような気がします。
目つきがなかなか厳しいと言えなくもありません。
千秋とは別の路線のお嬢様です。

ひとむかし前にアッシーとかそういう言葉があったけど、
そういうのも当然のようにいるに違いありません。
人に指示を出すことに慣れてるんだと思います。
小さいころから周りに召し使いさんがいるとか理由で。

「なくってよ」とか「ございませんわ」とか言うんだと思います。
自分のお嬢様に対するイメージはこんなもんかとがくぜんとしました。

まわりをいつも人が囲んでいるんだそうですが、
入学時からずうっとそうだとすればちょっと異常な光景です。
子供じゃないんだから1ヶ月もすれば慣れると思うのですが。

さらに言えば彼らはもう大学生ですから、
そういうキャピキャピした恋愛もしないと思います。

ましてや、そろそろ就職とか結婚なんかも
視野に入れなければならない年頃です。

となると、考えられる結論はただひとつです。

冬美が上流階級に属する人間であろうことは十分予想できます。
であれば、彼女の親族一同は会社などの組織で
かなりの権限を持つはずです。

つまりこの就職難の時代、彼女に取りいって
なんとか安住の地を見つけようという魂胆なのです。

それにそういう世界と少しでもつながりを作っておけば、
将来なにかのときに頼れるかもしれないではないですか。

もちろん、冬美の周りには小さいころから
そういう人間がばっこしていたことは容易に考えられるので、
彼女のお目がねにかかるのはむずかしいかもしれません。

矢部君はそれらをすべて達観した上で、
「好みのタイプじゃない」と発言したのです。
やはりこの男はただものではありません。

常人にはとうてい想像すらできないような、
あまたの修羅場をくぐりぬけてきたのでしょう。

ピエロのメイクは表情が読みとれないからこそ、
その下に隠された悲哀や無情を感じさせます。

きっと矢部君のめがねの下にも、
そういう感情が隠されているのです。

まさか。



主人公「それにしても寒くなったね」

矢部君「そうでやんすね」

主人公「吐く息が白くなったね」

矢部君「え、じゃあいままでは黒とか赤だったでやんすか」

主人公「(軽く無視して)誰も練習にこないね」

矢部君「(もう慣れたから)とりあえず部室に行こうでやんす」

主人公「それにしても部室にこたつが置いてあるなんてすごいね」

矢部君「だって、豆山がここに住んでるでやんすから」

主人公「なんか『あいつならやりそうだな』って気がして驚かないね」

矢部君「お腹がすいたし、なんか食べるものないでやんすか」

主人公「冷蔵庫はからっぽだし、外に出るのも寒いし…
    そう言えば、江崎がいまコンビニでバイトしてるんじゃないの?」

矢部君「そう言えばそうでやんすね」

主人公「もうすぐ終わるみたいだし電話しようか。矢部君電話持ってる?」

矢部君「一応持ってるでやんす」

主人公「オレ、持ってないからかけてくれない?」

矢部君「じゃあちょっと江崎の所まで行ってくるでやんす」

主人公「え、どうして?って、これ糸電話だよ!」

矢部君「ダメでやんすか」

主人公「というか、糸もついてないし!」

矢部君「でもちゃんと聞こえるでやんすよ」

主人公「じゃあこれって無線でもついてるの?」

矢部君「これを耳に当ててでやんすね、『もしもし、聞こえるでやんすか?』」

主人公「『はい、聞こえますよー』って、こんだけ近くなら当たり前だよ!」

矢部君「じゃあこれを使うでやんすか」

主人公「まさか子機を出したりしないよね」

矢部君「嫌でやんすねー。おいらもそこまでバカじゃないでやんすよ」

主人公「って、本体丸ごとですか!」

矢部君「でもちゃんと通話できるでやんすよ。『もしもし。聞こえるでやんすか?』」

主人公「『はい、聞こえますよー』って、だからこんな近くで意味ないって!」

矢部君「そうこうしてるうちに誰か来たみたいでやんす」

江崎「先輩たちなにやってるんスか?」

主人公「おお、ちょうどいいところに。
    いやほら、きょうは寒いし誰も来てないからミーティングということで」

江崎「そんなことじゃプロになれないっスよ」

主人公「よし。じゃあ矢部君、いっちょかっこいいところでも見せようじゃないか」

矢部君「そうでやんすね。それじゃあノックをいくでやんすよ!カキーン」

主人公「おっと!パシ、ズササササー。はい!シュッ」

矢部君「いい球が返ってきたでやんす!」

江崎「全部口で言ってるだけじゃないっスか!」

主人公「これも立派なイメージトレーニングですよ」

矢部君「えーい、オイラ200Kmのストレートをホームランでやんす」

主人公「じゃあオレは1000Kmを打った」

矢部君「それならオイラは1億万Kmでやんす」

主人公「じゃあオレはちょーかめはめ波だー」

矢部君「オイラはちょううるとらすーぱーかめはめ波でやんすー」

主人公「うわーっ、やられたー」

江崎「先輩たち大学生っスよね!?」

主人公「ちょっと遊んでみたい年頃なんだって」

矢部君「そういえば江崎の持ってる袋ってなんか入ってるでやんすか?」

江崎「バイトで売れ残ったやつをもらってきたんスよ」

主人公「お、それってなにが入ってるの?アイスとかオチじゃないよね」

江崎「いえ、暖かいものっスね」

矢部君「肉まんとかでやんすか?」

江崎「いえ、『ホ』ではじまるものっスね」

主人公「ホットコーヒーとか?」

江崎「いえ、ホッカイロっスね」

主人公「あー…」

矢部君「ちょっとじゃりじゃりするでやんすね」

主人公「って、意地でも食べる気なの!?」

江崎「でも、貧血にいいらしいっスよ」

主人公「え、そういうもんなの?じゃあオレもちょっとなめてみようかな(ペロ)」

江崎「レバーとかは」

主人公「(ブペッ!)って、全然関係ない話かよ!」

矢部君「おなかすいたでやんすねぇ…」

江崎「先輩たち、メシまだだったんスか?」

主人公「それでなんか買ってきてもらおうと思ってたんだけどね」

江崎「なんだ、それなら早く言ってくださいよ」

矢部君「もしかしてなんか買ってあるんでやんすか?」

江崎「いや、早く言ってくれればなんとかできたのにって。残念だったっス」

主人公「残念がるだけかよ!」

矢部君「その袋にまだなにか入ってるみたいでやんすけど?」

主人公「それってコンビニ弁当じゃないの?」

江崎「これはオレが食べたあとのゴミっスけど」

主人公「なんだ…」

矢部君「それを貸せでやんす!うーん、おいしいでやんすねぇ。ぱくぱく」

江崎「や、矢部さん!空の弁当箱でなにやってるんスか!?」

矢部君「イメージトレーニングでやんすよ」

主人公「そうか!」

江崎「主人公さんまで!?」

主人公「冗談だって、冗談。それにしてもおなかすいたなぁ…」

江崎「売店まで行ったらどうっスか」

主人公「だってこたつから出たくないし」

矢部君「じゃあこうしようでやんす。トイレに立った人が買いに行くってことで」

主人公「うーん、まあ別にいいけど。ペットボトルに出したりするのはなしね」

矢部君「オムツはありでやんすよね」

主人公「してるの!?」

矢部君「しないんでやんすか!?」

江崎「…オレが買ってきましょうか?」

主人公「あ、ホントに?じゃあ頼むよ」

江崎「買ってきたっス」

主人公「お、ありがと…って、これオムツだよ!?」

江崎「ちゃんとフェアに勝負できるようにと思って」

主人公「別にちゃんとした勝負なんてしたくないよ!」

矢部君「うーん、ちょっと噛みきれないでやんすねぇ」

主人公「だから、食べるなって!」


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