パワプロと試験


中学生、高校生、もちろん大学生の方々は
近々定期試験の時期かと思います。

世の中は広いので「テスト大好きっ!」という人が
いないとは言い切れないけど、
まあ大多数の人は嫌いだと言っていいでしょう。

とにかく試験というのはストレスになります。
一夜漬けなんて当たり前だし、
深夜に演習問題の解答が載っていない教科書に
当たり散らすいうこともよくあることです。

「このあいだの試験はなんとか単位をとれたけど、今回はどうだろう」

と、答案用紙を前にすれば無性に不安にかられるし、
終わって提出してからも

「もしかしたら、自分はものすごいかんちがいをしてて、
 目もあてられないことになってるんじゃないだろうか」

などと悪い方、悪い方に考えて、
いつまでもハラハラして落ち着きません。

迷って書いた答えを終わってから確認したら
書かなかった方が正しかったなんて知れば、
やり場のないいきどおりを覚えてしまいます。

こういうふうに、学校に通う子供たちや通った大人たちは
例外なく精神的にひどい虐待を受けているし過去に受けたのです。

PTSDというのが最近よく話題になっています。
過去に受けたショックが何十年も経ってから突然
脳裏に浮かんだりしたりするそうです。

何年も前に学校を卒業したというのに、
未だに夢に試験が出てきてハッとなって
目が覚めるという話はよく聞きます。

高名な精神科の先生でもこういう夢は見るといいますから、
ボクたちの中にはこれを克服した人はいないのでしょう。

そうなのです。
どんな人でも心に傷を持っているのです。
一億総受験生ブルースなのです。

今回は人間の強さというものを再確認できたのかもしれません。

それにしても、夜中に書くとわけのわからない文章になります。



主人公「もうすぐ試験かぁ。嫌だなぁ」

矢部君「あ、主人公君。ここにいたでやんすか」

主人公「やあ、矢部君。そう言えば先週のあの授業ってどんなことやったの?」

矢部君「そう言えば主人公君は休んでたでやんすね。
    確か試験範囲とか言ってたでやんすよ」

主人公「え、ホント?それってちょっといまわかる?」

矢部君「ええと、6章から…、あ、なんかプリントを配ったでやんすよ」

主人公「試験についてのやつ?」

矢部君「よく見てないからわからないけど、たぶんそうだと思うでやんす。
    ここに入れておいたはずでやんすけど…あったあった、これでやんすね」

主人公「で、どんなことが書いてあるの」

矢部君「筆記用具・持ち込み可」

主人公「それはもちろん必要だよね」

矢部君「電卓・持ち込み可」

主人公「去年も計算問題が出たって言ってたしね」

矢部君「教科書、ノート類」

主人公「持ち込めるんだったら楽だけどね」

矢部君「持ち込みか?」

主人公「そんなこと聞かれても知らないよ!」

矢部君「机の上には持ち込み許可品のみ置くこと」

主人公「まあ、当たり前のことだね」

矢部君「机の中には不正品を隠すこと」

主人公「いいんですか!」

矢部君「制限時間は50分とする」

主人公「じゃあ1コマ分かぁ」

矢部君「または大地震が発生したときとする」

主人公「んなこと書かなくても」

矢部君「または火事が発生したときとする」

主人公「それも書いてあるの?」

矢部君「または日本が沈没したときとする」

主人公「そんなことはまずあり得ないって」

矢部君「または誰かが突然心臓発作を起こしたときとする、
    または校舎に爆破予告が、またはライオンが、または…または…」

主人公「なんでそんなに気にするんだよ!」

矢部君「範囲は6章から10章までとする」

主人公「まあ、毎年そのぐらいらしいよね」

矢部君「ただし、9章は縁起が悪いので除外する」

主人公「ホテルじゃないんだから」

矢部君「9章の替わりの分は受けてみてのお楽しみとする」

主人公「そんなのは楽しめないよ!」

矢部君「こんなところでやんすか」

主人公「なんか勉強する前から疲れたんだけど」

矢部君「まあ気を取り直してがんばるでやんすよ」

主人公「こういうのに限って必修だしね」

矢部君「対策としては、過去問を解いておけばなんとかなるそうでやんす」

主人公「確か矢部君って一通り手に入れてたよね」

矢部君「そうでやんす。ほら、この通り」

主人公「じゃあさっそく一緒にやってみようか」

矢部君「とりあえず順番に解いていくでやんす」

主人公「そうしようか」

矢部君「問1.次の計算をしなさい」

主人公「まずは簡単な計算問題からだね」

矢部君「ただし、必ずボケなさい」

主人公「なんでだよ!」

矢部君「でもそう書いてあるでやんす」

主人公「去年の先輩なんかはどう答えてるの?」

矢部君「この人なんか白紙なのにAをもらってるでやんす」

主人公「どうして?」

矢部君「一番最後に『バカには見えません』って書いてあるでやんす」

主人公「そいつが一番バカだよ!」

矢部君「これはアドリブで答えればいいでやんすから次に進もうでやんす」

主人公「なんつう試験なんだ…」

矢部君「問2.○○の定理を定義より示せ。途中式も書くこと」

主人公「やっとまともそうな問題になったね」

矢部君「ええっと、去年の人の解答は…」

主人公「そんなの教科書見ればいいでしょ」

矢部君「こう書いてあるでやんす。
    『きょうはこちらにできあがったものを用意しました。証明了』
    だそうでやんす」

主人公「3分クッキングかよ!それでいいのかよ!」

矢部君「だってそれで丸をもらってるでやんす」

主人公「なんかどうでもよくなってきたよ…」

矢部君「そんな投げやりになったらダメでやんす。次は問3」

主人公「そろそろまともな問題になって欲しいよね」

矢部君「この橋、渡るべからず」

主人公「今度は問題からすでにそんなのですか!」

矢部君「あっ、ここに小さくなんか書いてあるでやんす。
    『ただし、ネタがかぶった場合は落第とする』だそうでやんす」

主人公「罠かよ!」

矢部君「とにかく、この試験は気をつけたほうがいいみたいでやんすね。
    それで次は論述問題みたいでやんす」

主人公「いい加減、まともに答えてみたいよね」

矢部君「○○の発生についてその原理を述べよ」

主人公「ふつうっぽいけど…どのくらい書けばいいの、それって。
    何文字以上とか以内とか制限はないの?」

矢部君「漢字1文字で表せ」

主人公「そんなの無理だって!」

矢部君「だいたいこんな問題が出てるみたいでやんすね」

主人公「なんか勉強するだけムダって気がしてきたんだけど」

矢部君「まあそう言わずにでやんすね、もしかしたら今年から出題形式がかわって
    まともな問題が出るかもしれないでやんす」

主人公「そういう可能性も否定できないけど…」

矢部君「一応、ふつうの勉強もやっておこうでやんす」

主人公「そうだね」

で、試験当日。

主人公「範囲のところはだいたい理解したつもりだけど」

矢部君「でもまだなにがくるかわからないでやんすよ」

主人公「あ、もう時間だ」

先生「それではいまから試験を始めます。
   持ち込み許可品以外はカバンにしまってください」

主人公「いまのところふつうみたいだな」

先生「わたしの『はじめ』の合図で問題を裏返して始めてください」

主人公「あとはどんな問題が出るかだな」

先生「それでは、はじ…」

主人公「よし、がんばるぞ(ピラ)」

先生「のほうに座ってる人は、もっと中央の方に座ってください。
   あ、いまめくった人は不正行為とみなします」

主人公「うおっ!あ、危なかったぁ。そうきたか」

先生「はい。じゃあ、は…」

主人公「今度はもう誰もひっかからないだろ」

先生「は、ハックション!」

主人公「ほら、誰も答案をめくろうとしてないし」

先生「…じ…ゴニョゴニョ…」

主人公「せ、先生!いまなにか言いませんでしたか!?」

先生「さあ、なんのことですか?」

主人公「(ど、どうする!?もしかしたらもう始まってるかもしれないぞ…)」

先生「あれ?みんなどうしたんですか?」

主人公「なんだ、始まってたのか(ピラ)」

先生「え、まだ『はじめ』って一言も言ってませんよ。
   じゃあ、いまめくった人は退出してください」

主人公「うわっ!き、きたねぇ…」

  「はじめ…」

主人公「え、いま誰が言ったの?」

矢部君「なんか小さな声で『はじめ』って聞こえたでやんす」

先生「さてと、いま11時ちょうどですか」

主人公「いや、まだ油断できないぞ」

先生「そういえば最近、趣味で腹話術をやり出しましてね」

主人公「ええっ!?」

先生「あと、聞いたことがある人もいると思いますが、
   小さいころから無線をいじくるのが好きでしてね。
   モールス信号で会話もできるんですよ。
   (と言いながら鼻歌まじりにボールペンで机をたたく)」

矢部君「さっきのは腹話術だったでやんすか…」

主人公「それともモールス信号『はじめ』の合図を出してるのか…」

先生「(時計を見ながら)はい、あと30分」

主人公「ええい、もうなんでもいいから始めてやる(ピラ)」

先生「経ったら試験を始めたいと思います」

主人公「うわわっ!」

矢部君「いまのでまた何人か出ていったでやんす」

主人公「あとちょっとタイミングが早かったらダメだったかも」

ということで30分待機。

主人公「そうこうしてるうちに、
    ふつうの試験時間ならもう終わるころになったよ」

先生「ふう、やれやれ。それにしても今年はけっこう落ちるんだなぁ」

主人公「落ちるんだなぁって、もう落ちたあとじゃないんですか?」

先生「まあいいか。はい、はじめ」

主人公「今度こそ、正真証明始めるぞ(ピラリ)」

矢部君「こ、これは…や、やんす…」

主人公「ええと、なになに。『真の試験場所は3Fです。急いでね』って、ええっ!?」

先生「もうあと2、3分しかないぞー。急げー」

矢部君「オイラたち留年確定でやんす!」

主人公「こんなところ絶対やめてやるうっ!」


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