[ねらい]
・前向き生きることの大切さが理解できます。
障害者に対して正しく認識することの大切さが理解できます。
[セールスポイント]
・導入段階でジェスチャーゲームを用いることにより,授業に集中させるとともに,音が聞こえないことの不便さを
疑似体験できます。
・読み物資料ではないので,読解力の乏しい子どもも授業に進んで参加することができます。
・ワークシートとセットになっています。
[対象学年]
・小学校中学年以上
[追試上の留意点]
・写真(イラスト)や久美子さんからのメッセージは,コピー機でTPシートに転写して活用するとよいです。
[備考]
・この資料は,高島良宏さん久美子さん夫婦の全面的協力より完成することできました。
ありがとうございました。
・この資料は,ノンフィクションです。
[指示1] ジェスチャーゲームをしましょう。
ルールを説明します。
列ごとの競争とします。
列の最初の人は,後ろの人に先生が提示した文章を伝えるだけです。
しかし,口を開けてもいいですが,決して言葉に出してはいけません。
ちなみに,伝える文章は全部同じにしています。
導入段階では,,授業に対して身構えてしまわないためにも,ゲーム形
式を取り入れた。またこのジェスチャーゲーには,聴覚が不自由な方の疑
似体験をさせる意図がある。
伝える文章は,「あなたは,ラーメンが好きですか。」である。
子どもたちは,一生懸命身振り手振りで表現していた。何人かの子ども
は,口を大きく開けて文章を伝えようとしていた。
[指示2] 列の一番後ろの人に,どんな文章が伝わってきたかを発表してもらいましょう。
次のような反応があった。
・あなたは,そばが好きですか。
・あなたは,腹が減りましたか。
・あたは,ラーメンが好きですか。
・あなたは,歯を磨きましたか。
「あなたは,ラーメンが好きですか。」と,答えたグループは30%であった。
[説明1] 答えは,「あなたは,ラーメンが好きですか。」でした。
子どもたちは,「やったー」とか,「誰から間違ったんや」などと呟いていた。
[発問1] どんな点が難しかったですか。
次のような反応があった。
・「ラーメン」が表現しにくい。
・「好き」をどのように表してよいのか難しかった。
・全部難しかった。
[指示3] VTRを見ましょう。
『風の歌が聴きたい』(ジュバン社)というVTRの中で,久美子さんが高校生に
に演説している部分を用いた。
このVTRの代わりに,NHKの視聴覚障害者向けの番組などを代用することも可能である。
[発問3〕 どうしてこのような話し方をするのでしょうか。
次のような反応があった。
・口が悪いから。
・病気だから。
・耳か悪いから。
「耳が悪いから。」という意見が少なかった。
[説明2] 久美子さんは生まれつき耳が聞こえませんでした。
生まれつき耳か聞こえなければ,発音(音を出す)することは,できません。
なぜならば,音を聞く経験がないのでから,音を真似て発音することは,不可能なのです。
しかし,猛練習によって,ある程度発音することが可能になりました。
[発問4〕 耳が聞こえない久美子さんについて,どう思いますか。
次のような反応かあった。
・かわいそう。
・早く治ればいい。
〔発問4〕は,終末段階における内面を重視することの大切さを理解させるための,
布石の役目を果たしている。
[指示4〕 耳か聞こえないということは,どんな点が不便・悲しいでしょうか。
ワークシートに書きましょう。
次のようなことが書かれていた。
・電話が使えない。
・テレビを見てもあまり分からない。
・ラジオが聞けない。
・友達と楽しく話すことができない。など
〔指示をする担任(大江浩光)〕
[説明3〕 久美子さんから,次のようなメッセージが来ています。
「不自由な点は,いろいろあります。
例えば,車のクラクションが聞こえないから,道路を安心して通行できないことや
もちろんてれびラジオの放送が分からないこともあります。
一番つらかったのは,健常者とコミュニケーションがとれなかったことです。」
私が行った授業では,久美子さんからのメッセージが入ったVTRを見せた。
[説明4] 久美子さんの生い立ちについて,説明します。
久美子さんは函館で生まれ,小・中・高等部の聾学校で勉強をしました。
久美子さんは,絵を書くのが好きでした。
聾学校を卒業後,両親の元を離れ美術学校へ通うため,一人暮らしをはじ
めることを決意しました。
実際一人暮らしをはじめこところ,寂しさのあまり何度も実家に戻ってきました。
しかし両親は,可愛い娘だからこそ,ここで甘やかしては久美子のためになら
ないと思い,心を鬼にして追い返したそうです。
久美子さんは,23歳の時,同じ障害を持つ中学校時代からのペンフレンドで
ある高島良宏さんと結婚しました。
久美子さんは結婚に際し,さほど心配はしていませんでしたが,赤ちゃんを作
るかどうしょうか迷ったそうです。
〔発問5〕 久美子さんは,どうして赤ちゃん作るかどうしようか迷ったのでしょうか。
次のような反応があった。
・ちゃんと育てられるかどうか不安だったから。
・自分の子どもも耳が不自由だったらと思ったから。
[説明5] 久美子さんは,自分の赤ちゃんも耳が聞こえなかったら,という不安があったそです。
障害の有無で人間を判断しては,いけないことを誰でも理解している。
勿論,久美子さんも同じ考えだと思います。
久美子さんは,自分が経験してきたつらさを親心として,自分の子どもにはさせたくない
という気持ちがあったことを子どもたちに伝える必要がある。
この親心の考えは,障害者を否定する考えにつながると論ずる人もいる。
確かに,その考えも否定はできない。
この問題に関しては,他の自作資料で追究して行きたい。
[発問6〕 久美子さんは,結婚してからあるスポーツを始めました。
そのスポーツとは,何でしょうか。
・テニス ・卓球 ・ゴルフ ・バレーボールなど
[説明6] 久美子さんは,トライアスロンというスポーツを始めました。
トライアスロンとは,水泳を3キロメートル,自転車を155キロメートル,マラソン
を42.195キロメートルを続け行うスポーツです。
分かりやすく言いますと,25メートルプールを120回泳ぎ,校庭を自転車で
1000周走り,校庭を280周走ります。もちろん続けて行います。
子どもたちから「すごい」や「わー」という呟きが起こった。
[説明7〕 久美子さんは,トライアスロンに参加するため,道路を自転で走ったり,マラソン
をしたりしたそうです。
練習中に,何度も事故に合いそうになったそうです。
その原因は,耳が聞こえないため車のクラクションが聞こえなかったこと多かっ
たそうです。
〔発問7〕 久美子さんは,このような練習を続け,トライアスロンに参加したことについて,どう思いますか。
〔賛成派〕・前向きに生きていることは,素晴らしい。
・自分の人生なのだから,このようなことをしてもよい。
〔反対派〕・もし事故をしたら,たんへんだから。
・事故をする可能性が高いから。
お父さんやお母さん,おむこさんに心配をかけるから。
※ 従来ならば,「もし,自分が久美子さんだったら,そのようなスポーツをしますか。」と,発問すること多
い場面である。あえて,そのような発問をしなかったのは,「もし,自分が久美子さんだったら」というこ
とは,現実的にありえないことである。
ゆえに,そのような発問はさけるべきである。
その人がとった行動に関して,賛否を問う事により,多様な視点て物事をみるの大切さやいろいろな
考えが深めることができる。
※ この発問に対しは,結論は出さない。理由は,上記の通りである。
[説明8] VTRを見ましょう。
(久美子さんが負傷しながら,トライアスロンを完走する様子。)
〔VTRを使用しない場合〕
「久美子さんは,スタートの合図を他の選手の動きから判断し,主人の良宏さん
と一緒に猛然と海に跳び込みました。
3キロメートルという長い距離も無事に泳ぎきりました。
しかし,自転車競技(155のキロメートル)で腰をひどくいため,顔をひきつるよ
うにしながら,ペダルを踏みました。地元の方の心温まる応援や,途中で良宏
と手話で,交わした「ゴールで待ってるよ」という約束を励みに,頑張りました。
久美子さんは,遂に12時間37分かけて,ゴールしました。
久美子さんと先にゴールで待っていた良宏さんは,涙をながしながら抱き合い
ました。
話術でVTRの代わりをするのも可能である。
その際は,右記のイラストを使うとよい。
私が行った授業では,VTRを用いた。
正直言いまして,VTRを力を大きい。
[指示5] 〔 ? ? ? ? ? ? ? ? 〕
指示5には,子どもの心をかなり揺さぶる文言が入ります。
指示5の文言は,この授業の出来ばえを左右するといっても過言ではありません。
みなさんも考えてみましょう。
[指示6] 久美子さんからメッセージが届いています。
聞きたいですか。
読んでみます。
※ 久美子さんからメッセージは,TPシートにコピー機で転写し,それをOHPで投影しながら,読むと
効果的である。
メッセージの掲載は,省略します。
〔指示7〕 授業を受けて感じたことや考えたことをワークシート2に書きましょう。
・久美子さんは,私の持っていない何かがあると思いました。
それは,いろいろな悲しいことにも負けず,希望を持ち,何事もやり通す強い意思だと思いましたか。
久美子さんの両親も,久美子さんが一人暮らしがつらくて帰って来たとき,心を鬼にして涙を流しなが
ら追い返したので,とても立派だと思いました。
私も久美子さんのような強い意思が持てるように,いろいろなことを頑張ろうと思いました。