資料名  『思いやり(許す)』

[ねらい]
  ・許せない行為でも,理由次第では許すことの大切さを理解させる。
[セールスポイント]  
  ・自作の絵本『とべ ブーニャン』とセットになっている。
  ・心温まる内容になっている。
  ・絵本だけて活用することも可能である。
  ・2種類のワークシートとセットになっています。(教師が選択)
[対象学年]
  ・小学低学年〜中学生
[追試の際の留意点]
  ・人数が多い時は,ビデオカメラで絵本を写し,それを大きなテレビやモニター等に投影し
   たものを見せるとよい。


[発問1] あなたがされていやなことは,何ですか。
       次のような反応があった。
       ・むしをする   ・いじめられる   ・ぬすまれる   ・ころされる   ・なぐられる 
       ・ばかにされる  ・ぱしりにされる  ・けられる    ・あだなを言われる
      〔ポイント1〕
       ・ 「発問1」に対して意見が出にくい学級では,事前にアンケート調査をし,その結果
         を提示する方法もある。
 
[発問2] 今出された意見の中で,あなたが許せるものは,どれですか。許せないものは,どれですか。
       理由もつけて,発表してください。
       次のような反応があった。
        〔許せるもの〕−−−−・あだなをいわれる 
        〔許せないもの〕−−−・むしをする   ・いじめられる   ・ぬすまれる  ・ころされる 
                      ・ばかにされる  ・ぱしりにされる  ・けられる   ・なぐられる
      〔ポイント2〕
       ・ 黒板を使って分類しながら行うとよい。 
       ・ 出された意見(理由)など,尊重しながら進めることが大切である。                                                               
[発問3] 「許せないもの」がたくさんだされました
       どんなことがあっても許せませんか。
       次のような反応があった。
       ・ 特別な理由があれば,別かもしれませんが,でも,やっぱり許すことができないと思います。
       ・ 今出されたものについては,どんな理由があっても許すことができないと思います。
       ・ 許せるかもしれません。
       ※ 約30%の子供が「絶対許せない」と答えた。
       〔ポイント3〕
       ・ 本資料では,「めあて」を立てないで授業を構成した。その理由は「めあて」を立てることに
         より,授業の流れを子供に読まれてしまうことがある。
         「めあて」を立てることを全面否定する考えはない。本著に掲載している2つ目の資料
         (『思いやり(自己犠牲)』)では,「めあて」を立てて授業を構成している。
         もし私が本資料で「めあて」を立てるとするならば,次のようにする。
         
         『「許(ゆる)す」について,考えよう。』 
                                               

[指示1] 男ばかりの三人兄弟がいるとします。

3人兄弟の
イラスト省略
(本著に掲載)

       あなたは,三人兄弟の真ん中の次男だとします。
       ある日,長男があなたが大切にしているミニカーを黙ってとり,どっかに行ってしまいました。
       そのこと(行為)について,どう思いますか。
       ワークシート1に書きなさい。書けた人は,理由も詳しく書きましょう。
       〔ポイント4〕 
       ・ 次頁の絵を見せながら,ゆっくり指示を行なった。
       ・ 行為に視点をあて,考えさせることが大切である。一般的な道徳授業では,心情追究
         (〜さんは,どんなここを思ったでしょうか。)がよくされている。心情追究を行うならば,
         その主人公を取材し,その時の心情を正確に把握しておかなければならない。しかし,
         多くの場合は,教師が予想のもとで主人公の心情を答えている。私も時々心情追究の
         授業を行う。その際,必ず本人からその時の心情の聞き取り調査を行う。私が心情追
         究を行う道徳授業で使う資料は,ノンフィクション資料である。
         低学年は,まだアニミズム的思考が残っているため,心情追究という手法を用いることが,
         時には大切である。
       次のような反応があった。
       〔怒る〕−−−−−−−−−・何も言わないで取ったから。   (80%) 
       〔許す〕−−−−−−−−−・兄弟だから。          (15%) 
       〔どちらともいえない〕−−・理由を聞いてみないと分からない。(5%)

[指示2] 実はね,この話には続きがあるのです。

 イラスト省略
 (本著に掲載)

       この長男は,一番下の三男が泣いていたので,なだめるために次男のミニカーを黙って
       取り,三男に渡したのです。
       このことについて,どう思いますか。
       自分の考えをワークシート2に書きましょう。
       次のような反応があった。
       ・ちゃんと次男に一言言ってからすれば,もめごともおこらなかったと思います。
       ・長男としては,仕方がないと思います。 等 
       〔ポイント5〕
       ・ ポイント4と同じく,とった行為に視点をあてることが大切である。
                                                                                                      [助言1] 長男が泣いている三男をなだめることはいいことですよね。
       とても,優しいお兄さんですよね。
       しかし,いくらよいことでも一言言ってからしたほうがよかったのではないでしょうか。
       〔ポイント6〕
       ・ 「助言1」は,学級実態や学年(例,中学生)の実態を考慮して,削除することも可能である。

[発問4] このことを知った次男は,どうしたでしょうか。
      次のような反応があった。
      ・お兄ちゃんを許してあげた
      ・お兄ちゃんにあやまった。

[説明1] 答えは,この一冊の絵本です。
      詳しい絵本は,『絵本を使った道徳授業』(大江浩光著,押谷由夫監修・解説,明治図書)
      をご覧ください。
      絵本の一部(1/10)の絵だけを掲載してます。

(ホームページには,低画質・少数(1/10)で掲載しています。著書には,高画質・セリフ付きで掲載しています。
 詳しいストーリーなどは,本著をお読みくださいませ。)

〔ポイント7〕
・ 絵本(自作)『とべ ブーニャン』(P14参照)の読み聞かせをすることにより,次男がとった
 行為を知らせる。
・ 人数が少ないときは,子供たちを一カ所に集め実施する。人数が多い時は,ビデオカメラで
  絵本を写し,それを大きなテレビやモニター等に投影したものを見せるとよい。

[説明2] 次男は,この絵本のペン吉さんとドラゴンさんと同じように許してあげたそうです。

[助言2] 省略(詳しくは,本著をご覧ください。)
      助言2には,低学年用と高学年(中学生)用を準備しております。
      (各学年にあって助言になっています。)
       
[指示3] 今日の授業を受けて,感じたことや考えたことをワークシート3に書きましょう。
      次のような反応があった。
      ・ わたしもペン吉さんやドラゴンさんのようなやさしい人になって,おともだちにもやさしくしたいです。
      ・ 理由があっても,だまってとるのはよくないと思いました。とるほうもちゃんと理由をいってからすれば,
        いいと思いました。また,やさしい気持ちの大切さが分かりました。
      ・ わたしは,にたようなことがありました。そのとき,ずっとブーとおこっていました。つぎからは,
       「いいよ」といえるやさしい人になりたいです。 
       〔ポイント9〕 
        授業を受けて,感じたことや考えたことをワークシートに書かせることにより,子供の変容をチェックしたり
        ,授業分析(反省)をしたりすることができる。
        ・ ワークシートは,A案とB案を用意しているので,追試される先生が判断され使用されたし。                                              
 授業後,次の宿題を出した。
       省略(詳しくは,本著をご覧ください。)

〔ポイント10〕
  授業後に上記のような宿題をさせることにより,実践化へ導くことが期待できる。
 ・ 明治図書から出版した私の著書『今を生きる人々に学ぶ』や『「いじめ」の授業』にも,多くの実践例を掲載し
  ているので参照されたし。


『絵本を使った道徳授業』         
(大江浩光著・押谷由夫監修・解説・明治図書)

                     道徳自作 コーナーへ